設計思想
2026年、35mm の Ingenieur に色彩を持ち込む
IW324907 は、2026年4月14日の Watches and Wonders Geneva で発表された現行モデルである。同時に IW324911(18Kレッドゴールド製ダイヤモンドベゼル仕様)が公開され、2025年に始動した Ingenieur Automatic 35 コレクションへの第2世代追加として位置づけられた。
Ingenieur Automatic 35 シリーズの初期3本は、ステンレススチール製の銀色文字盤 IW324901、ステンレススチール製の黒文字盤 IW324906、そして18Kレッドゴールド製のゴールド文字盤 IW324903 という、抑制された配色で構成されていた。Time and Tide や Monochrome Watches の現地レポートは、2026年の追加2本を「シリーズに色彩と装飾性を導入する役回り」と評している。IW324907 はそのうち、ステンレススチールという素材を維持したまま、ダイヤルにのみ手を入れたほうの一本である。
1976年からの設計言語、1960年代からのブルー
現行 Ingenieur シリーズ全体の出発点は、1976年に Gérald Genta が手がけた Ref. 1832 にある。IWC は2023年に Ingenieur Automatic 40(IW3289系)としてこの設計言語を本格的に復活させ、2025年に同じ意匠を35mmサイズへ展開した。
IW324907 が選んだブルーには、もう一つの系譜が重なる。IWC が腕時計にブルーダイヤルを採用した歴史は1960年代後半に遡り、その初期作の一つに Ingenieur Automatic Ref. 866AD があると伝わる。IWC 公式のプレスリリースもこの Ref. 866AD を引き合いに出してこのRefを紹介しており、メーカー側がブルーダイヤルの系譜を意識した追加であることが読み取れる。
シリーズ内での位置
2026年5月時点で、Ingenieur Automatic 35 のラインアップはステンレススチール3色(IW324901銀、IW324906黒、IW324907青)と、18Kレッドゴールド2型(IW324903ゴールド文字盤、IW324911ダイヤモンドベゼル)で構成される。IW324907 はこのなかで、シリーズで初めて有彩色文字盤を採用したRefであり、初期ラインの単色構成に対する明確な転換点となる。
意匠分析
ケースとブレスレット
ケース径は35mm、厚さは9.4mm。40mm版の Ingenieur Automatic 40(IW3289系)に対し、ケースを縦横に小型化したうえで、厚みを約1mm以上抑えている。この薄さを実現するため、40mm版が備える軟鉄製の耐磁内装は省かれ、サファイアクリスタル製のシースルー・バックが採用された。Genta が1976年の Ref. 1832 で確立したインテグレーテッドの文法は、5本の機能ねじを配したベゼル、サテン仕上げの H リンクと、その中央を貫くポリッシュ仕上げの幅広いセンターリンクというブレスレットの構成に継承されている。バックルは観音開きのバタフライ・フォールディング・クラスプ。
ダイヤル
このRefの最大の特徴は、Ingenieur Automatic 35 コレクションで初めて採用されたブルーダイヤルである。表面には小さなラインと正方形の塊が交互に並ぶ「グリッド」パターンが刻まれる。同シリーズの IW324901(銀)、IW324906(黒)、IW324903(ゴールド)と意匠は共通だが、ブルーは光の入射角によって表情の変化幅が大きい。針とアプライドインデックスはロジウムめっき仕上げで、Super-LumiNova が充填される。3時位置の日付窓は地色を文字盤と同じブルーで統一し、6時位置には Ingenieur シリーズの象徴である稲妻(ライトニング・ボルト)型のロゴが配される。
ムーブメント
搭載されるのは Cal.47110。Monochrome Watches の取材によれば、リシュモン傘下の姉妹ブランド Cartier が手がける Cal.1847 MC をベースとし、IWC が仕上げを施した自動巻ムーブメントとされる。毎時28,800振動 (4Hz)、パワーリザーブは42時間、23石。サークル装飾とコート・ド・ジュネーブが施され、ローターはゴールドメッキで装飾される。40mm版が搭載する自社製 Cal.32111(120時間パワーリザーブ)とは別系統の機械であり、薄型化と裏蓋スケルトン化のための選択が背景にある。
系譜と歴史
2026年4月14日、スイス・ジュネーブで開催された Watches and Wonders Geneva において、IWC は IW324911(18Kレッドゴールド製ダイヤモンドベゼル仕様)とともに本Refを発表した。前年2025年4月1日に同じ Watches and Wonders で初公開された Ingenieur Automatic 35 コレクション(IW324901銀文字盤、IW324903ゴールド文字盤、IW324906黒文字盤の3本)に続く第2世代追加であり、シリーズで初めて有彩色文字盤を採用したRefとして登場した。
発表時の発売価格は、スイス本国で CHF 10,500(税抜)、米国市場で USD 11,200 と公表された。これは初期ラインのステンレススチール2本(IW324901、IW324906)と同水準の価格設定で、同時発表の IW324911(CHF 17,500)とは明確な価格差を持つ。
販売チャネルは、IWC 公式オンラインブティックおよび正規販売店経由で、本Refはユニセックスモデルとして位置づけられている。本稿執筆時点(2026年5月)では現行生産モデルであり、生産期間中の仕様変更や派生Refの追加は確認されていない。