設計思想
アナログ Master of G が生まれた年に
GWG-1000系は、2015年にカシオが投入したマッドマスターの基幹機である。泥や塵の侵入を防ぐマッドレジスト構造をアナログ G-Shock として初めて備え、デジタルのMudman系が培った防泥思想を多針アナログ機へ拡張した。「Mudmaster」の名は、このGWG-1000系で初めて用いられている。防泥の系譜自体はさらに遡る。マッドレジスト構造を備えた最初のG-Shockは1985年のDW-5500Cであり、1995年のDW-8400で「Mudman」を冠した専用ラインが立ち上がった。GWG-1000系は、その20年の蓄積をアナログ機へ引き継いだ位置にある。GWG-1000GB-1Aは、この基幹機が世に出た同じ年の後半に、特別仕様として加えられた一本である。
「Black and Gold」という位置づけ
本機が属する「Black and Gold」は、Gulfmaster (GWN-1000GB-1A)、Mudmaster (本機)、Gravitymaster (GPW-1000GB-1A) の3機で構成された特別シリーズである。それまでの Master of G の特別版は Mudman や Rangeman などデジタル機が中心であり、アナログ機のみで Master of G の特別シリーズが組まれたのは、これが初とされる。基幹機の投入直後に高級感を打ち出した特別版を重ねた点には、カシオがアナログ Master of G を主力として育てる意図が読み取れる。
このRefが担った役割
本機は、その三部作のうち防泥を司るマッドマスターを担った。基幹機 GWG-1000-1A の黒一色に対し、金の差し色で性格を分けた点が、このRef固有の選択である。サファイアガラスや振動対策を備え、もともと工具的な道具のなかでは上位に位置づけられた基幹機に、金は誇張なく馴染んだ。機能面で基幹機との差はなく、色と仕上げによって同じ道具の別の表情を提示する役回りであった。
意匠分析
GWG-1000GB-1Aの設計上の固有性は、外装の配色に集約される。基幹機 GWG-1000-1A が黒の樹脂ボディを黒い意匠でまとめたのに対し、本機は文字盤外周のインナーリング、4つのボタン、バンドのバックルとループ(キーパー)に金色を配する。黒い樹脂ボディとの対比で、視線が時刻表示の外周へ自然に導かれる構成である。
機構と素材は基幹機を踏襲する。縦59.5mm・横56.1mm・厚さ18.0mmという大柄な樹脂ケースに、ねじロック式のリューズと、ボタンを囲う円筒状のガード構造がマッドレジストの中核を成し、モジュールは底面と側面に内装したアルファゲルが振動から守る。風防にはサファイアガラスを採用し、文字盤には12・3・6・9の大型アラビア数字を置く。時分針は矢羽型の矢印をモチーフにした極太の針で、暗所での視認性を優先する。ボタン表面は格子状に刻まれ、金の仕上げのもとでも操作の確実性は損なわれない。バンド表面には重機のグリップやすべり止めを想わせるテクスチャーが施される。泥の侵入はボタンやシャフトに多数内装したガスケットが阻み、電動カッターや破砕機のような大型機材の使用を想定した耐振動構造も併せ持つ。暗所では文字盤と液晶の双方を白く照らすダブルLEDライトが働く。
金の差し色は機能を変えるものではなく、道具としての性格に華やかさを加える選択である。黒地に金という配色は、後年のレスキューレッドやデザートカモフラージュといった Master of G の色替え展開に先行する、最初の意匠的な振り分けでもあった。
系譜と歴史
GWG-1000系の基幹機は2015年に登場した。カシオ初のマッドレジスト搭載アナログ機であり、同年8月にはカシオ・アメリカが GWG-1000-1A3 と GWG-1000-1A9 の投入を告知している。GWG-1000GB-1Aは、その数か月後に加わった特別仕様である。「Black and Gold」として、Gulfmaster と Gravitymaster の金黒仕様とともに2015年秋に発表され、日本では同年10月に希望小売価格85,000円で市場へ向かった。米国では同年冬、12月の投入として案内され、現地の希望小売価格は800ドルとされた。
季節性の特別版という位置づけのため、定番色のように長く併売される性格ではなかった。続く Master of G の色替え展開としては、2016年3月にレスキューレッドの GWG-1000RD-4A、同年9月にデザートカモフラージュの GWG-1000DC-1A5 が登場している。基幹機 GWG-1000 系そのものは後に Bluetooth を備える GWG-B1000、カーボンを用いる GWG-2000 へと発展し、初代 GWG-1000 の定番各色は現行カタログから外れている。本機もすでに現行品ではない。