設計思想
GPSハイブリッドがMT-Gに届くまで
MT-G(Metal Twisted G-Shock)は、金属と樹脂を組み合わせたG-Shockの上位ラインである。2010年代に入り、カシオは電波時計に衛星電波の受信を組み合わせる「GPSハイブリッド」を主力技術として育てた。地上の標準電波が届かない地域でもGPS衛星から時刻と位置を取得し、世界中で自動補正を可能にする仕組みである。この機構はまずGPW-1000(グラビティマスター)に、続いて最上位のMRG-G1000に搭載された。そしてMT-Gに展開したのが、2015年のMTG-G1000系である。MTG-G1000GB-1Aは、その系列に属する黒金の一本だ。
前任MTG-S1000からの飛躍
G1000系の直接の前任は、タフソーラーとマルチバンド6を備えたMTG-S1000である。G1000系は、このS1000のコアガード構造とトリプルGレジスト(耐衝撃・耐遠心重力・耐振動)を引き継ぎつつ、GPS受信機を新たに加えた。外観は近いが中身は刷新されており、信号がない状態でも月差±15秒の精度を保つ。6時位置には新設計の「デュアルコイルモーター」を備える小径ダイヤルが置かれ、針が高速で動いてホームタイムとワールドタイムを瞬時に切り替える。サファイアガラスへの無反射コーティングもS1000から継承された。
黒金仕様としての位置
G1000系には鋼の地色を生かしたD系(MTG-G1000D-1A等)があり、GB-1Aはそれらと対をなす黒金の仕様である。ケース全体をブラックIPで覆い、ボタンと竜頭、文字盤外周のインデックスリングに金を配する。クラスプを含めてDLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理が施され、傷への耐性を高めている。派手な色ではなく黒を基調に金を効かせる構成は、シリーズ内でも装飾性の高い性格を与えている。なおMT-Gは2018年のMTG-B1000で小型化とBluetooth接続へ舵を切り、GPSハイブリッドからは離れた。GB-1Aは、MT-GがGPS受信を積んでいた時期を代表する一本といえる。
意匠分析
GB-1Aの設計上の眼目は、黒一色のケースに金を点で効かせる配色にある。ステンレススチールのケースは全面をブラックIPで覆われ、さらにクラスプを含めてDLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理が重ねられ、傷への耐性を高めている。金は文字盤外周のインデックスリング、左右のボタン、竜頭に限って配され、マットな黒文字盤との明暗差で視線を引き締める。
ケースは樹脂の内装を金属フレームで挟む構造で、内部はアルファゲルの緩衝材で衝撃から守られる。ベゼル前面には固定用のビスが覗き、外周の金属とブレスを一体の壁とするコアガード構造でモジュールへの衝撃を逃がす。ビスを露出させる意匠は、堅牢性を視覚に翻訳したMT-Gらしい表現でもある。ブレスは樹脂を金属で覆う積層構成で、軽さと装着感を両立させる。径54.7mm、厚さ16.9mm、重量198gの数字は手首の上で確かな存在感を示すが、内装の樹脂が見た目以上の軽快さを与える。
文字盤は3針に3つの小径ダイヤルを組み合わせる。6時のダイヤルはデュアルコイルモーターで駆動し、針が通常より速く動いて二つの時間帯を切り替える点が視覚的な見どころだ。針はソードハンド、インデックスはスティックとドットで、いずれも夜光が塗られて暗所での視認を確保する。風防はサファイアで、無反射コーティングが反射を抑える。金属部はエッジに鏡面、面にヘアラインと仕上げを使い分け、上位ラインらしい質感を担保している。
系譜と歴史
MTG-G1000系は2015年10月に発表され、まず鋼の地色を生かしたMTG-G1000D-1A(黒文字盤)とMTG-G1000D-1A2(青の差し色)が市場に出た。本機MTG-G1000GB-1Aは、これに続く黒金仕様として2015年12月に日本で発売され、国内向けにはMTG-G1000GB-1AJFの型番が与えられた。北米では2016年初頭の流通が告知され、WatchBaseは生産年を2016年として記録している。搭載モジュールはCal.5455で、GPSと標準電波の双方を受けるソーラー駆動の機構である。発売はGPSハイブリッドを積むMT-Gの拡充期にあたり、同系にはエイジドゴールド調のMTG-G1000BS-1Aなどの派生も後に加わった。GB-1Aはその中で、黒を基調に金を効かせた装飾性の高い一本として流通した。その後MT-Gは2018年にMTG-B1000へ世代交代し、ラインの主軸はGPS受信からBluetoothによるスマートフォン連携と小型化へ移った。これに伴いGPSハイブリッドを積むG1000系は役目を終え、本機も現行カタログからは外れている。生産期間中の文字盤や機構の大きな仕様変更は確認できておらず、GB-1Aは黒金の構成を保ったまま流通したと見られる。