設計思想
1. GPSハイブリッドがMT-Gへ届いた年
カシオは2010年代半ば、GPS衛星電波と標準電波の双方を受信して時刻を合わせる「GPSハイブリッド電波ソーラー」を上位機へ広げていった。世界のどこにいても現在地の時刻へ合わせられることを、アナログ時計の新しい前提に据える試みであった。
2015年、この技術はグラビティマスターのGPW-1000、最上位のMRG-G1000に続いてMT-Gへ降りてくる。MTG-G1000D-1A2は、黒リング仕様のMTG-G1000D-1Aと同時に発表された一本で、MT-Gとして初めてGPSハイブリッド電波ソーラーを備えた世代を開いた。
2. 前任MTG-S1000が残した宿題
直接の前任は2013年のMTG-S1000である。コアガード構造とアナログの顔をMT-Gに定着させたモデルだが、時刻補正は標準電波受信にとどまっていた。電波の届かない地域では手動での調整が要る。G1000系は、ここへGPS衛星からの時刻・位置情報の受信を足した世代にあたる。
代償もあった。受信機を収めたケースは大柄になり、手首の上での存在感は一段と強くなった。受信機を収める容積と、それを動かす電力。G1000系は、この負担を引き受けたうえで成立した世代である。
3. 青いリングという差分
発表時のラインアップは、都市コードリングの色が異なる2機種であった。本機は青、MTG-G1000D-1Aは黒である。
都市名を並べたリングにだけ色を与える選択は、GPSとワールドタイムを主題とするこの世代の性格と重なる。装飾として置かれた青ではなく、機能の所在を指す青と読める。
4. G1000系というひとつの区切り
本機と-1Aが開いたG1000系は、同年末の黒金のMTG-G1000GB-1Aを皮切りに、表面処理を変えた派生へと枝を伸ばしていく。表面処理を変えることで性格を描き分ける手法が、この系統の定石となった。
一方で2018年、MT-GはMTG-B1000でBluetooth連携と小型化へ舵を切り、GPS受信からは離れる。世界のどこでも時刻を自動で合わせるという課題に、MT-Gが衛星電波で答えたのはG1000系だけであった。本機は、その始まりに立った2本のうちの一方にあたる。
意匠分析
本機とMTG-G1000D-1Aを分けるのは、文字盤外周に置かれた都市コードリングの色である。都市の略号を刻んだこのリングに青を与え、インダイアル周辺の目盛やアクセントにも同じ色を差す。黒で統一された-1Aに比べ、ワールドタイムを担う部分だけが視覚的に浮き上がる構成となる。
外装はIP処理を施さないステンレスの地色で構成される。斜面には熟練を要するザラツ研磨、面にはヘアラインと仕上げを使い分け、金属の陰影で立体感を出す。同系の派生が表面処理そのもので性格を変えているのに対し、本機は素材の色をそのまま見せる側に立つ。青は、その無彩色の地に対して置かれた唯一の色でもある。
ケースはGPS受信機を収めるため、前任のMTG-S1000より大柄になった。バンドはステンレスとファインレジンを重ねたコンポジットバンドで、金属の見え方を保ちながら重量を抑える。
コアガード構造も更新された。板バネの役割を果たすファインレジン製の緩衝材を新たに加え、フレームを構成するパイプを軸に配置することで、時計前面から加わる衝撃への耐性を高めている。骨格に組み合わされる裏蓋とベゼルは鍛造成型で、ソリッドな見えとタフネスを両立させる狙いがある。
文字盤は3針に6時位置のインダイアルを組み合わせ、2都市の時刻を同時に示す。この小径ダイヤルはデュアルコイルモーターで駆動され、針が緩急をつけて動く。風防は無反射コーティングを施したサファイアガラス、暗所での視認には高輝度LEDのスーパーイルミネーターが対応する。
系譜と歴史
MTG-G1000系は2015年9月に発表された。同時に案内されたのは、都市コードリングにブルーを配した本機MTG-G1000D-1A2と、ブラックのMTG-G1000D-1Aの2機種である。日本での発売は同年9月18日とされる。国内向けの型番はMTG-G1000D-1A2JFである。搭載モジュールは5455とされる。北米へは同年10月に投入されたと伝わる。
続く同年12月には黒金のMTG-G1000GB-1Aが加わり、その後もエイジド仕上げやブラスト加工、限定モデルなどの派生が順次投入された。派生が増える一方で、本機自体は発表時の構成を保ったまま流通し、生産期間中の文字盤や機構の大きな仕様変更は確認できていない。
2018年、MT-GはMTG-B1000へ世代交代する。ラインの主軸はBluetoothによるスマートフォン連携と小型化へ移り、GPS受信は外された。これに伴いG1000系は役目を終え、本機も現行カタログには残っていない。
出典
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