設計思想
1. 新体制最初の一手として
2018年初頭、Breitlingは新CEO Georges Kernのもとで全コレクションの再編に着手した。その口火を切ったのが、同年2月に発表されたNavitimer 8コレクションである。A17314101C1X2は、その中でも最も簡素な3針日付モデル、Navitimer 8 Automatic 41の青文字盤・黒カーフストラップ仕様として登場した。
新体制の意図は明快だった。Kernは就任時のインタビューで「航空を掲げるブランドが、シンプルなパイロットウォッチを持たないというのはおかしい」と述べている。Navitimer 8は、複雑なスライドルールに頼らずに視認性と実用性を語り直す試みであり、A17314101はその思想を最も素直に体現した位置にある。
2. Navitimerを名乗ったことの波紋
このRefをめぐる議論は、性能ではなく名称に集中した。スライドルール・ベゼルを伴わない時計が「Navitimer」を名乗ったことに対し、長年のファンからの反発が大きく、2019年2月、Breitlingはコレクション名をAviator 8へ改称することを決めた。
A17314101はちょうどこの改称の境目に位置するRefで、生産期間はおおむね2018年から2019年に重なる。後継のA17315101が「Aviator 8 Automatic 41」として登場し、ベゼルに時刻マーカーが加わるなど細部が見直された。本Refはその直前世代として、最初に世に出たNavitimer 8の姿をほぼそのまま残している。
3. 兄弟Refのなかでの位置
A17314101には、文字盤色とストラップの組み合わせ違いで複数の仕様が存在した。青文字盤のC1X1(ブラウンカーフ)、本機C1X2(ブラックカーフ)、C1A1(ブレスレット)、黒文字盤のB1X1とB1A1、さらにDLC加工を施したM17314101B1X1の各派生である。C1X2は、青文字盤を黒のカーフレザーで引き締めた組み合わせで、青の鮮やかさを最も静かに見せる仕立てといえる。
意匠分析
ケースと寸法
ステンレススチール製のケースは直径41mm、厚さ10.74mm。ラグ間21mmで、上面と側面はサテン仕上げを基調に、ラグ側面のフランクとベゼルのエッジにポリッシュが切り分けられている。同時期のBreitlingが進めた「派手すぎない実用時計」への方針転換が、面の構成にも素直に表れている。
ベゼル
特徴的なのは双方向回転ベゼルで、外周に刻まれた細かい歯車状のノッチが触覚的なグリップを与える。本Refの世代では、ベゼル上にはトライアングルのリファレンスマーカーだけが置かれ、時刻目盛は省略されている。後継のA17315101世代では、ここに5分刻みの数字とインデックスが追加された。視認性の面では後継が有利だが、本Refの方がベゼル面の余白が大きく、軍用時計的な簡潔さに寄っている。
ダイヤルとハンド
青文字盤はマット寄りの仕上げで、強い光沢を持たない。大ぶりのアラビア数字とレイルウェイ・ミニッツトラック、6時位置の日付窓という構成は、Huit Aviation Departmentが手がけた1940年代の懐中航空時計やRef. 768からの引用とされる。針はスケルトン状の時針・分針に夜光を充填する造形で、青文字盤に対してコントラストが立ちすぎないよう、シルバートーンに留められている。
ストラップ
C1X2は黒のカーフレザーにピンバックルを組み合わせる。同じ青文字盤でも、ブラウンカーフを合わせたC1X1がヴィンテージ寄りに振れているのに対し、本機は黒革で青の彩度を抑え、よりフォーマル寄りの落ち着きを得ている。
ムーブメント
Cal.17を搭載する。ETA 2824-2をベースにBreitlingが調整した自動巻ムーブメントで、毎時28,800振動 (4Hz)、25石、パワーリザーブ約38時間。Breitlingは1999年から全機械式ムーブメントのCOSCクロノメーター認定を方針として継続しており、本Refもその対象に含まれる。ケースバックはスクリュー式の無垢蓋で、ムーブメントは見えない。
系譜と歴史
A17314101C1X2は、2018年2月にGeorges Kern体制下のBreitlingが発表したNavitimer 8コレクションの一員として世に出た。同コレクションは同年3月のBaselworld 2018で正式にお披露目され、A17314101はその中の3針日付モデルNavitimer 8 Automatic 41の、青文字盤・黒カーフストラップ・ピンバックル仕様として割り当てられた番号である。
2019年2月、Breitlingはコレクション名をNavitimer 8からAviator 8へ改称した。これに合わせて、Automatic 41ラインのRef番号もA17315101へ更新されたとWatchBaseは記録している。後継のA17315101世代ではベゼルに時刻マーカーが追加されるなど細部が見直されており、A17314101の生産はこのタイミング前後で終息したとされる。
その後、Breitlingは2020年にAVI Ref. 765 1953 Re-Editionを発表し、2021年11月にはSuper AVIを含むClassic AVIコレクションを正式に立ち上げた。WatchBase上で本Refが「AVI」カテゴリに属するのは、Navitimer 8 → Aviator 8 → AVIへと連なる後継関係を反映した遡及的分類による。本Ref自体は2018年から2019年にかけての量産仕様で、限定生産ではない。