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A. LANGE & SöHNE · SERIES

Saxonia

サクソニア

1994年Lange再興の四本のうち、ただひとつ古典に踏みとどまったザクセン流ドレスウォッチの基幹。

01 — 概要 / SUMMARY

1994年にA. Lange & Söhneの再興とともに発表された四本のうち、唯一伝統的なドレスウォッチの形を取ったのがSaxoniaである。ザクセン地方の名を冠し、地域の手工芸的精神を慎ましい意匠に落とし込んだ。現在は手巻のSaxonia、自動巻のSaxonia Automatic、極薄手巻のSaxonia Thin、オリジナルのビッグデート意匠を継いだSaxonia Outsize Date、そして2026年に36mmで復活したSaxonia Annual Calendarへと枝分かれし、Langeにおける「ザクセン古典派」の基幹を担う。

02 — STORY · 物語

Saxonia(サクソニア)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1994年、再興の四本のうち、ただひとつ古典に踏みとどまった一本

1994年10月24日、ドレスデン王宮で四本の腕時計が発表された。Lange 1、Arkade、Tourbillon "Pour le Mérite"、そしてSaxoniaである。前三者が非対称ダイヤル、矩形ケース、トゥールビヨンという主張を持ったのに対し、Saxoniaだけが「主張をしない」という選択を取った。

初代の二本、Ref. 102.001(イエローゴールド)とRef. 102.002はケース径34mm、厚さ9.1mmとされる。文字盤は12時にビッグデート、6時にスモールセコンドという最小構成である。コレクション名はマニュファクチュール所在地のザクセン州にちなみ、19世紀以来のグラスヒュッテ精密時計製造の系譜を継ぐ姿勢を明示した。

ただし、再興期Langeが掲げた「一本ごとに専用ムーブメント」の原則は、Saxoniaでは初めから守られなかった。Ref. 102の中身は、同時発表のArkadeと同系の矩形ムーブメント(Cal. L911.3)だったとされ、ソリッドバックに隠されていた。この矩形機をシースルーバックで見せられる形に作り直したのが、翌1995年の1815の機械である。

02

1997年、円形ムーブメントへの世代交代

1997年、SaxoniaはCal. L941.3(直径25.6mm、厚さ3.2mm、毎時21,600振動 (3Hz)、45時間パワーリザーブ)を得て、専用ムーブメントの原則におよそ復帰した。L941.3は1815用のCal. L941.1に連なる円形機械とされ、ケース径33.9mmは維持された。

Refもここで素材と文字盤の派生を増やした。サファイアシースルーバックも採用され、3/4プレート、手彫りテンプ受け、ゴールドシャトンといったグラスヒュッテ伝統の意匠が露わになった。

03

2007年、ビッグデートを外す決断 — 37mm世代へ

2007年、Saxoniaはケース径37mmへ大型化し、厚さは7.3mmへと薄くなった。同時に初代から続いたビッグデートが廃止され、文字盤は二針+スモールセコンドへ整理される。インデックスは多面カットのアプライドバトンへ。Ref. 215.021(YG)、215.026(WG)、215.032(PG/アルジャンテ)、215.033(PG/グレー)がこの世代を形作る。

ビッグデートはこの時期、Lange 1で完成形を得てブランドの自己署名のような意匠になっていた。それを敢えてSaxoniaから外したのは、「複雑機構ではなく空白で語る」という方向性を確立する判断であったと言える。自動巻の系統は、SAX-0-MATと呼ばれるL921系を積むSaxonia Automaticが担ったとされる。

04

派生の時代 — Annual Calendar、Saxonia Thin、Dual Time

2010年、シリーズに複雑機構が加わる。Ref. 330.026 Saxonia Annual Calendarは、ケース径38.5mm、第一世代の自動巻SAX-0-MATの系譜に連なるCal. L085.1を搭載し、アウトサイズデート、デイ、マンス、ムーンフェイズを文字盤に並べる。

2011年には、2009年に開発を始めた手巻Cal. L093.1が登場する。厚さわずか2.9mm、径28.8mmで72時間のパワーリザーブを確保した、Lange最薄の機械であり、これを積むSaxonia Thinはシリーズに「極薄手巻」の軸を加えた。2016年のSIHHでは、37mm・厚さ5.9mmのSaxonia Thinが入門モデルとして加わる。Saxonia Dual TimeはCal. L086.2を採用し、ローカルアワーと第二時間帯を共存させた。自動巻の基幹は、のちにプラチナの縁を持つ全回転ローターのL086系へ移っている。

05

2015年、35mmと38.5mmへの再整理

2015年のSIHHで、Lange はSaxonia系の寸法を再整理した。手巻Saxoniaはケース径を37mmから35mm(Ref. 219.026他)へ縮小し、Saxonia Dual Timeは40mmから38.5mmへ改めた。自動巻Saxonia Automatic(Ref. 380.027他)も38.5mmとされる。手巻を小さく、自動巻を大きく置くことで、コレクション内のサイズヒエラルキーが明示された。文字盤側ではバトンインデックスが延長され、針はロジウムコーティングを施したゴールドへと変わった。

2018年、シリーズの起点であったビッグデートがSaxonia Outsize Date(Ref. 381.029 WG/ブラック、Ref. 381.031 PG/ブラック)として復活した。38.5mmのケースに72時間駆動の自動巻Cal. L086.8を載せ、2020年には銀文字盤版も加わった。1994年のRef. 102.001が掲げた意匠言語を現代の薄型機構で書き直している。

06

現在 — 36mm Annual Calendarへの到達点

2025年、Saxonia Thinは各200本限定のオニキス版(Ref. 211.052 Honeygold、Ref. 211.062 プラチナ)を40mm・厚さ6.2mmのケースで加えた。

2026年のWatches and Wondersで、Saxonia Annual Calendarが新しい姿で復活した。新作Ref. 331.026 E(WG)とRef. 331.033 E(PG)はケース径を36mmまで切り詰め、厚さは9.8mm。搭載するCal. L207.1は491部品の自動巻で、L086.1と同じ径30.4mmとプラチナの縁を持つローターを共有しつつ、年次カレンダーとムーンフェイズを加え、60時間パワーリザーブを得た。

複雑機構を備えつつ36mmで成立するドレスカレンダーへ、Saxoniaは新たな到達点を示している。1994年の「主張をしない」選択から、30余年を経て「機能を持っても主張しない」形に至った。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Saxoniaの設計言語は、引き算によって輪郭を得るタイプのものである。装飾を加えるのではなく、不要なものを徹底して外していくことで、文字盤と機械の両方が静かな密度を持つに至る。

文字盤の規範は、わずかな項目で記述できる。シルバー、シャンパン、グレーといった低彩度の地色。数字を持たないアプライドバトンインデックス。針はロジウムコーティングを施したゴールドの単純な棒状。外周のミニッツトラックは1990年代後半の連続トラックから、2007年の省略を経て、2015年に再び外周から消えた。「外す」という方向の判断が、世代を超えて繰り返されている。

ケース側でも自制が貫かれている。手巻の径は1994年の34mmから37mm、2015年に35mmへと振れたが、いずれもドレスウォッチの伝統的領域から踏み出さない。ラグは緩く下方へ流れ、ベゼルは細く、サイドはサテン仕上げの中で角だけが磨かれる。誇示する要素を意図的に減らした結果として、装着時には薄さと軽さが残る。

ムーブメント側は、文字盤の沈黙と対照を成すように密度を持つ。グラスヒュッテ伝統の3/4プレートは未処理ジャーマンシルバー、表面はGlashütteリブで装飾され、手彫りの彫刻入りテンプ受け、自社製テンプ用ヒゲゼンマイ、四ないし五箇所のゴールドシャトンが配される。サファイアバックを通してこれを見せることで、文字盤の静けさを裏面で語る構成が成立する。

ザクセンの慎ましさという表現を、Langeは自社のアイデンティティとして言語化してきた。同時代のPatek CalatravaやVacheronのPatrimony系が「クラシカルなエレガンス」を競うなか、Saxoniaは派手さよりも工房性、装飾よりも仕上げの密度で位置を取る。第二次大戦後の東独期に断絶した時計製造の系譜を、現代の量産環境でどこまで保てるかという問いに対する、Langeの一つの解答である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1994-1996
Cal. L911.3
Arkade用の矩形ムーブを流用、ビッグデート搭載。
1997-
Cal. L941.3 / L941.1
円形手巻、シリーズの基幹となる二針機械。
2007-2011
Cal. L921.4 SAX-0-MAT
Saxonia Automatic初代のSAX-0-MAT。
2010-2021
Cal. L085.1 SAX-0-MAT
Annual Calendar用のSAX-0-MAT系。
2011-現在
Cal. L086 系 / L093.1
薄型自動巻と極薄手巻の現行世代。
2026-現在
Cal. L207.1
新Annual Calendar用、中央ローター自動巻。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1994-1996

初代Saxonia

102.001 102.002
34mm・ビッグデート搭載、Arkade用Cal. L911.3を流用した出発点。
1997-2007

円形ムーブ世代

105.021 系
新Cal. L941.3採用、サファイアバック化、派生Ref展開期。
2007-2014

37mm刷新世代

215.021 系
37mm大型化・ビッグデート廃止・薄型化で意匠を再構築。
2010-2021

Annual Calendar初代

330.026
Cal. L085.1 SAX-0-MAT搭載、シリーズ初の複雑機構複合。
2011-現在

Saxonia Thin派生

201.xxx 211.xxx
厚2.9mmのCal. L093.1で極薄手巻ラインへ分岐。
2015-現在

35mm手巻/38.5mm自動巻

219.xxx 380.xxx
サイズ二段構成でコレクション内のヒエラルキーを整理。
2018-現在

Outsize Date復活

381.029 381.031
初代のビッグデート意匠を自動巻Cal. L086.8で再導入。
2026-現在

36mm Annual Calendar

331.026 E 331.033 E
新Cal. L207.1で36mm・9.8mmに収めた年次カレンダー。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア A. Lange & Söhne Saxonia Annual Calendar U.S. Boutique Edition (Specs & Price) 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.12 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.12
  2. 02 専門メディア A. Lange & Söhne Introduces the Saxonia Outsize Date 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
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06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

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