マキシミリアン・ブッサー
機械式時計を彫刻として構想し、協業者の名を製品とともに掲げる独立ブランドの創始者
マキシミリアン・ブッサーは1967年にミラノで生まれ、スイスで育った。1991年にローザンヌ連邦工科大学を卒業しジャガー・ルクルトへ入社、1998年から2005年までハリー・ウィンストン・レア・タイムピーシズを率いた。同社では外部の独立時計師と組むオーパス・シリーズを立ち上げ、協業を軸とする手法を確立する。2005年7月、ジュネーヴでMB&Fを創業した。社名はMaximilian Büsser & Friendsの略であり、各作品を共同で生み出したフレンズの名を製品とともに公表する姿勢を貫く。
生涯
1. 学びと修業
1967年ミラノ生まれ。スイスで育ち、1991年にローザンヌ連邦工科大学を卒業した。同年ジャガー・ルクルトへ入社し、営業とマーケティングに携わる。
2. ハリー・ウィンストンでの7年
1998年、31歳でハリー・ウィンストン・レア・タイムピーシズのCEOに就任した。2001年に始動したオーパス・シリーズでは、フランソワ=ポール・ジュルヌをはじめとする独立時計師と毎年組み、その名を製品に掲げる方式を採った。この経験が後のMB&Fの原型となる。
3. MB&Fの創業
2005年7月、ジュネーヴでMB&Fを設立した。父の死を契機に「自分が本当に作りたいものを作る」という決断へ至ったと語っている。2024年8月、シャネルが25%の少数株主として参画し、ブッサーは60%を保持して支配権を維持している。
業績・代表作
1. 協業という方法論
MB&Fの名はMaximilian Büsser & Friendsに由来する。各作品は外部の独立時計師、設計者、職人との共同で生み出され、その名が製品とともに公表される。ブランドの内側に才能を囲い込むのではなく、外部の作り手を対等な共同制作者として遇する構造である。
2. 二つの系譜
Horological Machinesは2007年のHM1に始まる立体造形の系譜で、宇宙船や深海生物、建築を主題に造形を先に構想し、その形へ収まる専用エンジンを組み上げる。Legacy Machinesは2011年に始まり、19世紀の時計づくりを現代の技術で再構想する。テンプを文字盤上へ吊り下げる構成が共通の語彙となっている。
3. M.A.D. Editions
2021年、より手の届く価格帯の姉妹レーベルとしてM.A.D. Editionsを立ち上げた。第1作M.A.D.1は一般販売を行わず、サプライヤーとコレクターにのみ案内された。
評価・後世への影響
1. 独立時計製作の位置づけ
MB&Fは年産数百本の規模にとどまりながら、GPHGで複数の受賞を重ねてきた。2012年のLM1が最優秀メンズウォッチ賞と一般審査賞、2016年のLM Perpetualが最優秀カレンダーウォッチ賞、2022年のLM Sequential EVOが金の針賞を受けている。
2. M.A.D.ギャラリー
2011年にジュネーヴで開設したM.A.D.ギャラリーは、時計に限らず機械仕掛けの造形物を展示する場である。ブランドの世界観を製品の外側へ広げる装置として機能してきた。