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MB&F · Horological Machines · 2015

Horological Machine HMX Black Badger Phantom Blue

2016年、蓄光ブロックを纏ったHMX。Black Badgerとの協業が生んだ、青く灯る18本限定機

57.STBL.Bは、2016年3月のBaselworldで発表されたHMX Black Badger3色展開のうち、Phantom Blueと名付けられた青の仕様である。ベースは2015年の創業10周年機HMX。エンジン上部の「ロッカーカバー」を、発光素材作家James Thompson(Black Badger)が手がけるAGT製蓄光コンポジットの無垢ブロックに置き換えた。グレード5チタンとステンレススチールのケース、サファイアプリズムによる側面時刻表示は踏襲しつつ、夜には機械の心臓部そのものが青く発光する。限定18本。

Ref. 57.STBL.B
発表年 2015
状態 現行品
限定 限定 18
コレクション Horological Machines
カテゴリ アヴァンギャルド
キャリバー HMX
ケース径 46.8 mm
防水 30 m
関連人物 マキシミリアン・ブッサー / エリック・ジルー
ジャンピングアワー
01 — Specification

仕様

As of WatchBase sync · 2026.06.12
このモデルを比較する
Case · ケース
素材 Titanium, Stainless Steel
形状 Round
径 46.8 mm
厚さ 20.7 mm
ガラス Sapphire
裏蓋 Open
防水 30 m
Movement · ムーブメント
キャリバー HMX
タイプ Automatic
振動数 28,800 bph
石数 29 石
パワーリザーブ 42 時間
Dial · 文字盤 / Hands · 針
文字盤色 Silver
インデックス Arabic Numerals
針 Proprietary
i — Editorial

設計思想

Design philosophy

最も手の届くHMという前提

本機を語るには、まず土台となったHMXから始める必要がある。2015年6月、MB&Fは創業10周年を記念してHMXを発表した。「X」はローマ数字の10を意味する。周年に超複雑・超高額の記念作を出す業界の慣習に背を向け、同社のホロロジカル・マシンとして最も手の届く価格を実現した、コレクターへの返礼としてのマシンである。MB&Fとして初めてセリタ製のベースムーブメントを用いた。1960年代のスポーツカーを思わせる流線形ケースを持つドライバーズウォッチで、Lotus Black、Ferrari Red、Bugatti Blue、British Racing Greenの自動車にちなむ4色が各20本用意された。

Black Badgerという増幅装置

翌2016年3月のBaselworldで、MB&FはPerformance Artコレクションの新作としてHMX Black Badgerを発表した。協業相手は、2002年にスウェーデンへ移りBlack Badger Advanced Compositesを興したカナダ出身の工業デザイナー、James Thompson。蓄光化合物を混ぜた硬質樹脂「AGT Ultra」で、カーボンファイバーやチタンと組み合わせた指輪などを作ることで知られ、サルパネヴァやスコフィールドの時計にもその素材が使われていた。塗布式のSuper-LumiNovaと異なり素材そのものが発光体であるため、体積の分だけ明るく長く光る。ThompsonはHMXのエンジン上部に載る2つのロッカーカバーをこのブロックから削り出し、機械の心臓部を光源へと作り替えた。

Phantom Blueの立ち位置

Black Badger版はRadar Green、Phantom Blue、Purple Reignの3色各18本で構成され、57.STBL.Bはその青にあたる。Baselworld会場では、発光を撮影するために記者たちがMB&Fのブースのテーブルの下に潜り込んで暗がりを探したという逸話も残る。

Performance Artの系譜と後続

MB&Fは、ステパン・サルパネヴァと組んだHM3 MoonMachine以降、外部の作り手に自社マシンを再解釈させるPerformance Artを断続的に展開してきた。HMX自体はこのBlack Badger版をもって追加展開を終え、側面プリズム表示の発想は同2016年に発表されたHM8 Can-Amへ引き継がれた。本機は、最も手の届くHMが最も実験的な素材協業の舞台になった一例である。


ii — Editorial

意匠分析

Visual analysis

ケース構成はベースのHMXと共通で、グレード5チタンとステンレススチールの2素材をサテン仕上げで組み合わせる。46.8×44.3mm、厚さ20.7mmという数字は大柄だが、HMとしては最も小さなケースで、数値から想像されるほどの威圧感はないと評される。前面には1960年代のスポーツカーのラジエーターグリルを思わせる造形が見られる。リューズはケース後方に置かれ、正面の造形を妨げない。

本機固有の差分はエンジン上部に集中する。通常版HMXが金属製カバーに自動車色のコートを施していたのに対し、本機ではロッカーカバーそのものがAGT Ultraと呼ばれる蓄光コンポジットの無垢ブロックからの削り出しに置換された。発光顔料を表面に塗る方式と異なり、蓄光化合物を混ぜた樹脂の塊を精密に削り出すため、通常のSuper-LumiNovaより明るく長く光るとされる。各カバーにクロームのオイルフィラーキャップが残り、エンジンルームの見立ては崩していない。

時刻表示は双方向ジャンピングアワーとトレーリングミニッツ。水平に回転する2枚のディスクの像を、拡大レンズを一体化した2枚の反射型サファイアプリズムで垂直面に立ち上げる。日中は透明なエンジンカバーから入る光がディスクを照らし、夜間は青く発光するロッカーカバー自体がバックライトとなって数字を浮かび上がらせる。蓄光を装飾ではなく視認性設計の一部に組み込んだ点が、本機の設計上の核心である。

機械はSellita製の輪列にMB&F自社開発のジャンピングアワー/トレーリングミニッツ・モジュールを重ねた自動巻で、毎時28,800振動 (4Hz)、パワーリザーブ42時間。22Kゴールドのローターを備える。ストラップは往年のレーシングストラップを思わせるパンチング加工のレザーである。30m防水は日常域にとどまり、本機が実用工具ではなく造形のための機械であることを示している。


iii — Editorial

系譜と歴史

Lineage

本機の前史は2015年6月に始まる。MB&Fは創業10周年を記念し、自動車にちなむ4色各20本の限定としてHMXを発表した。翌2016年3月、Baselworld 2016でその再解釈版にあたるHMX Black Badgerが公開される。James Thompsonとの協業によるRadar Green、Phantom Blue、Purple Reignの3色展開で、各色18本。57.STBL.Bはこのうち青の仕様にあたる。通常版の20本から18本へと、1色あたりの本数はわずかに絞られた。以後の仕様変更や追加派生は確認されていない。3色各18本の一回限りの生産で完結したワンタイムエディションである。HMXの系列自体も、2015年の通常版4色と2016年のBlack Badger版3色をもって展開を終えた。側面プリズム表示の発想は同2016年に発表されたHM8 Can-Amへ受け継がれ、本機は現在、MB&Fの過去作アーカイブに生産終了モデルとして収められている。


Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Horological Machines - MB&F 公式 · MB&F · 2026.08.15 閲覧 MB&F · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア MB&F HMX Black Badger - Hands-on Review (live pics & price) 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.12 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.12
  3. 03 専門メディア Hands-On with the MB&F HMX Black Badger 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
  4. 04 専門メディア MB&F Celebrates 10 Years With The HMX, The Most Affordable Machine Yet (With Originals Photos & Price) 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
02 — Derivatives

同型・派生 Ref

Color · material · bracelet variants