03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. 「OP」と「P.」の二つの呼称
パネライのキャリバー名は二系統に分かれる。ローマ数字を伴う「OP」は外部から調達した機械を基にした群、「P.」で始まるアラビア数字は自社製の系列として使われてきた。パネライは2005年のP.2002以降、手巻のP.3000、P.6000、自動巻のP.9000系などを順に投入し、ETAユニタス系を基にした「OP」の機械を置き換えていった。OP XXXIVは、その「OP」の名を持つキャリバーとしては新しい世代にあたる。
2. 開発と初搭載
2018年1月のSIHHで、パネライはルミノール・ドゥエに38mmのモデルを加えた。アッチャイオのPAM00755とPAM00903がその例で、この新しいサイズのために用意されたのがOP XXXIVである。Monochromeは、パネライ専用の機械ではあるものの自社製ではないと書き、リシュモン・グループに属するパネライがヴァルフルリエの設備を使って開発した、いわゆる「グループ・マニュファクチュール」のムーブメントだと説明している。同じSIHH 2018で発表された42mmのPAM00904にも、この機械が載った。
2019年1月のSIHHでは、サブマーシブルがルミノールの名を外して独立したラインとなり、42mmのPAM00683とPAM00959がOP XXXIVを積んで登場した。Gear Patrolは、これをリシュモン・グループが製造し、パネライの仕様に合わせた機械と紹介している。
3. ボーマティックとの関係
MonochromeとFratelloは、OP XXXIVがボーム&メルシエのクリフトン・ボーマティックと技術的な基盤を共有するとみている。パネライ版は、ベースに対して9時位置の小秒と3時位置の日付、そして3日間のパワーリザーブという同社の定番の構成に合わせて仕立てられたとされる。
4. P.900への移行
2019年8月、パネライはルミノール・ドゥエの新作とともに、厚さ4.2mmの自動巻P.900を発表した。Fratelloは、それまで38mmと42mmの自動巻の日付付きモデルが使っていたOP XXXIVを、P.900へ順に切り替えていく方針だと伝えている。P.900はパネライの自社製ムーブメントとして紹介されたが、DeployantやWatchBaseは、OP XXXIVの名を改めたものと推定しつつ、詳細は明らかでないとしている。両者を同じ機械とみなせるかどうかは、公表資料からは確かめられない。
05 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
1. 基本構成
OP XXXIVは、時・分の中央針、9時位置の小秒、3時位置の日付を備える自動巻キャリバーである。振動数は28,800vph(4Hz)、1つの香箱で72時間のパワーリザーブを確保し、耐震装置にはインカブロックを使う。石数は、Fratelloが23石と書く一方、別の資料は25石としており、記載が分かれる。搭載モデルの多くは裏蓋が閉じており、ムーブメントを外から見ることはできない。2019年のサブマーシブル42mmでは、ねじ込み式の12角形の裏蓋の内側に収められている。
2. シリコン脱進機
OP XXXIVの技術的な特徴は、シリコン製のガンギ車とアンクルを使った脱進機にある。Monochromeは、その狙いを耐磁性の向上と説明している。シリコンは磁気の影響を受けにくく、軽く、潤滑への依存も小さい素材で、脱進機のように往復運動する部品に使うと、磁気による歩度の乱れを抑えられる。脱進機は、ゼンマイの力を一定の間隔でテンプへ送る調速の要であり、ここに磁気に強い素材を使うことは、日常の使用で精度を保つうえで意味がある。
3. 単一香箱と72時間パワーリザーブ
OP XXXIVは香箱を1つしか持たない。パネライの自社製自動巻であるP.9000系やP.9010が2つの香箱で3日を得ているのに対し、本機は1つの香箱で同じ72時間に届かせている。脱進機の効率の改善と組み合わせて、小型のムーブメントでも3日間の駆動を成立させた構成といえる。72時間はパネライが自社製ムーブメントの基本としてきた日数で、グループ・ムーブメントであっても同社の基準に合わせて仕立てられた点がうかがえる。
4. 寸法と後継機
OP XXXIVは、38mmのルミノール・ドゥエのような小さく薄いケースに収めることを想定した機械である。2019年以降のルミノール・ドゥエで使われるP.900は、公式の諸元で12½リーニュ、厚さ4.2mm、171部品、23石、28,800振動、1つの香箱で3日間とされ、OP XXXIVと多くの点で重なる。ただし両者が同一の機械かどうかは、前述のとおり公表資料からは確認できない。
5. グループ・ムーブメントという位置づけ
Fratelloは、OP XXXIVの基になったのがヴァルフルリエのエボーシュであり、ヴァルフルリエはモンブラン、IWC、ピアジェ、パネライなどリシュモン・グループの各社へ基本機を供給していると説明する。各ブランドはその基本機を自社で手直しして独自のキャリバーに仕立てており、Fratelloはこれを業界では一般的な手順と評している。