03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. レマニアが遺した設計
Cal. 567/2の出自は、ブレゲ単独の開発史にとどまらない。その基礎を成すのは、レマニアのCal. 389/399である。レマニアは、かつて高級ブランドへ複雑機構のムーブメントを供給する事実上の担い手で、パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンにも機械を納めてきた。ヌーヴェル・レマニアとして知られた同社は、後にブレゲへ統合されている。
SJXは、Cal. 389/399が1980年代に開発され、同時代の多くの打鈴機と同じく古い懐中時計の機械に着想を得たと説明する。一方、別の記事では1990年代に構想されたとしており、開発年代の記載には幅がある。いずれにせよ567/2は、1990年代以降ブレゲのリピーター腕時計を支えてきた機械である。輪列を押さえる指状の受けと、打鈴の輪列のための細長い受け、中央のギター形の受けという懐中時計を思わせる構成が、その出自を物語る。
2. 金製ゴングという更新
古典的な土台を保ちながら、ブレゲは要となる部位に手を入れた。ゴング、すなわち音を生む金属線である。一般的なミニッツリピーターでは、鋼製のゴングをムーブメント側に固定する。567/2はこれを18金製とし、同じく18金のゴング・ホルダーを介してケースの内側へねじ留めする。ゴングはムーブメントではなく、ケースに物理的につながっている。
ブレゲによれば、金はより調和のとれた、倍音の豊かな音を生む。さらに、ゴングとケースが同じ素材で密度と分子構造が等しく、音響インピーダンスがそろうため、音の伝わりが良くなるという。この構造でブレゲは特許を得ている。SJXは2015年のスケルトン版7637/1について、ケースの色に合わせたローズゴールドのゴングと新しいハンマーが大きな音を生み、調速機の音も抑えられたと評した。
3. 1896への世代交代
長く現役を務めた567/2にも、転機が訪れた。2025年、ブレゲは25本限定のクラシック・レペティション・ミニッツ7365を発表し、新しいCal. 1896を搭載した。Monochromeは、1896が長く使われてきた567.2に代わる機械だと書いている。ケースは7637の42mm×12.25mmから39mm×10.8mmへ小さくなり、受けと地板をブレゲ・ゴールドで作り、ホワイトゴールドのゴングにブレゲ・ゴールドのめっきを施した。振動数は3Hz (21,600振動)に高められ、パワーリザーブは75時間に達する。もっともSJXは、7365もかつて広く使われたレマニアの機械を骨格にしていると指摘しており、567/2の系譜は形を変えて続いている。
04 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
構造の骨格
Cal. 567/2は、手巻のミニッツリピーター・ムーブメントである。香箱(ぜんまいを収める部品)は単一で、毎時18,000振動 (2.5Hz)のテンプ(周期を刻む調速輪)を駆動し、40時間のパワーリザーブを確保する。地板上には、中央のギター形の受けと、時を運ぶ輪列を押さえる3本の指状の受けが配され、Monochromeはこれを典型的なレマニアの基本構成と説明する。時を運ぶ輪列(ゴーイングトレイン)と、音を打つための輪列(ストライクトレイン)が別系統で組まれる点が、ミニッツリピーターの構造的な特徴である。総部品数は358点に及ぶ。
脱進機とテンプ
調速を担うのは、スイス式の直進レバー脱進機(エネルギーを一定間隔で逃がす機構)である。石数は31石。ヒゲゼンマイ(テンプの周期を司る渦巻ばね)には、ブレゲ自身が考案した「ブレゲひげ」、すなわち外端を巻き上げたオーバーコイル形状が用いられる。姿勢差による精度のばらつきを抑える、古典的な手法である。
毎時18,000振動という数値は、テンプが1秒間に5回振れることを意味する。現代の実用機に多い4Hz (28,800振動)より低い。低い振動数は、懐中時計に由来する設計や打鈴機構を備えた時計に多く見られ、ゆったりとした運針の律動を生む。後継のCal. 1896では、これが3Hzへ引き上げられた。
打鈴機構
ミニッツリピーターは、ケース脇のスライドを操作することで、現在時刻を音で知らせる。黒く鏡面に磨いた鋼のハンマーが、時・15分単位・分の順にゴングを打ち分ける仕組みである。567/2の要点は、ゴングの素材と固定法にある。一般的な機構がムーブメント側にゴングを留めるのに対し、本機は金製ゴングを金のホルダーを介してケース側へ連結し、ゴングが直接振動して音を効率よく伝える。
打鈴の速度は調速機によって制御される。本機は古くからのリピーターと同じくアンカー式の調速機を備え、作動中にはわずかな羽音のような音を伴う。SJXはこれを音響面で唯一の弱点としつつ、打鈴の音が十分に大きく心地よいため、調速機の音は目立たないと評している。SJXは、近年の打鈴時計で一般的になった静かな遠心式の調速機が、後継の7365でも採られていないと書いている。
仕上げ
567/2の意匠を決定づけるのは、受けと地板の全面に施された手彫りの装飾である。花模様の彫りが受け全体を覆い、各個体には固有の番号が刻まれる。SJXは、装飾の出来は優れているものの、彫りの密度が高く賑やかな印象を与えるため、簡素な筋目仕上げを好む向きもあるだろうと述べている。