設計思想
Defy 21の装甲化として
2017年にDefy El Primero 21 (95.9000.9004) で復活したDefyは、1/100秒計測のクロノグラフを旗印に、Zenithの現代を体現する系列へと育っていた。高振動のEl Primeroを核に据えた設計は、同社の技術的アイデンティティそのものである。2021年のWatches and Wonders、Zenithはこの系列をもう一段押し上げた。発表されたDefy Extremeは、Defy 21の設計言語を保ちつつ、ケース・プッシャー・リューズを大型化し、防護を加えた派生である。多くの評者はこの変化を、Audemars PiguetのRoyal OakからRoyal Oak Offshoreへの展開になぞらえた。既存のシルエットを土台に、より頑強で挑発的な姿へ作り替えるという発想である。
変わったものと、変わらなかったもの
変わったのはケースの構造である。径は44mmから45mmへ広がり、厚みは0.9mm増した。リューズは新たにねじ込み式となり、プッシャー周りにも防護が加わって、防水は100mから200mへ倍増した。これらは外殻の強化であり、用途というより姿勢の表明に近い。一方で変わらなかったのは中身である。本機はDefy 21と同じEl Primero 9004を搭載する。ひとつのムーブメントに2つの脱進機を持ち、時刻表示と1/100秒クロノグラフをそれぞれ独立した振動数で駆動する構成は、そのまま受け継がれた。
3本のなかでの位置
発表時、Defy Extremeはチタン2種とチタン+ローズゴールドの計3本で構成された。微粒子ブラストで黒を基調とする97.9100.9004/02.I001、チタンとローズゴールドを組む87.9100.9004/03.I001、そしてブラッシュとポリッシュを基調に青をまとう本機である。3本のうち本機は、最も伝統的な金属仕上げを持つ。鏡面と筋目の対比で面構成を見せる手法は、Defyが元来得意としてきた表現であり、Extremeの攻撃的な造形を過度に未来的にしすぎない方向でまとめている。
拡張の起点として
発表後、Defy ExtremeはDesert、Carbon、Tourbillonなど多数の派生へと広がった。素材や複雑機構を変えた限定・特別仕様が次々と加わるなか、本機はチタンの定番として、その拡張の起点に位置し続けている。
意匠分析
本機を特徴づけるのは、チタンの面構成と仕上げの使い分けである。45mmのケースは多面体的に削り出され、ラグやベゼル周りに鋭い稜線が走る。本機はブラッシュとポリッシュ、一部に微粒子ブラストを混在させ、艶消しに振り切った同時発表の黒モデルとは異なる、光の対比を見せる仕上げを選ぶ。ベゼル下には12角形のリングが挟まれ、これは1970年代のZenithのクロノグラフに通じる意匠を、現代的な多面構成へ翻案したものである。本機ではこのリングが黒のチタンで構成され、青い文字盤との対比をつくる。
リューズはねじ込み式で、Defy 21より深いローレットが刻まれる。プッシャーは左右のガードに囲われ、ケースの稜線と一体化して防護と造形を兼ねる。これらの肉付けが、向上した防水性能を物理的に裏づけている。
文字盤は青く着色されたスケルトンで、サファイアを通してEl Primero 9004の構造が透けて見える。インダイヤルは別体で文字盤上に立体的に重ねられ、9時に秒、3時に30分積算計、6時に60秒積算計、12時にクロノグラフのパワーリザーブが配される。時分針は中央が透かし彫り、外側が太い充実部という構成で、情報量の多い文字盤のなかでも時刻の視認を確保する。
ブレスレットはケースと仕上げを揃えたチタン製で、バタフライバックルを備える。背面の1ボタン式機構により、付属のラバーストラップとベルクロストラップへ工具なしで交換できる。ベルクロの同梱はZenithとしては本コレクションが初であり、Extremeの工具的な性格を象徴する。
系譜と歴史
Defy Extreme 95.9100.9004/01.I001は、2021年4月のWatches and Wondersで発表された。Zenithは会期3日目にDefy Extremeを公開し、チタン2種とチタン+ローズゴールドの計3本を同時に投入した。本機はそのうち、ブラッシュとポリッシュを基調に青をまとうチタンモデルにあたる。発表当初から限定ではなく定番コレクションとして位置づけられ、市場への供給は同年5月から始まった。発表時のスイスでの定価は、チタンモデルでCHF 17,900とされる。
発表後、Defy Extremeを土台とした派生が相次いだ。2021年10月にはDesert Editionが、その後もCarbonやLapis Lazuli、さらに2023年にはDefy Extreme Tourbillonが加わり、素材と機構の両面で系列は拡張を続けた。これらは別Refの特別・限定仕様であり、本機はそのあいだも標準のチタンモデルとして生産が続けられている。本稿執筆時点で、本機はDefy Extremeの現行ラインに残る基幹Refであり、黒文字盤の97.9100.9004/02.I001とともにチタンの定番を構成する。生産期間中、文字盤やムーブメントの世代を変える大きな仕様変更は確認されていない。