Ref. 6073という1956年の原点
ヴァシュロン・コンスタンタンの1950年代を象徴する一本に、1956年のRef. 6073がある。目立つ存在ではなかったが、ケースと一体化した多面体のラグ、ねじ込み式の裏蓋、夜光入りの針を備え、ジャガー・ルクルト製のCal. P1019を積んだ、同社で最初期の自動巻モデルの一つであった。そのラグの形は、社章マルタ十字に着想を得たものとして語られる。
Ref. 6073は派手な機械ではなく、ドレスウォッチとしての佇まいに自動巻きと水密ケースを忍ばせた、抑制の効いた設計の系譜にある。後年、コレクター市場で6073が再評価される一因となったのも、この「派手でないことを意匠の核に据える」姿勢である。フィフティーシックスのコレクション名は、この1956年という年号からそのまま採られている。