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ROLEX · SERIES

Air-King

エアキング

第二次大戦の英国空軍への敬意に始まり、最も飾らないオイスターとして歩み続けた航空の系譜

01 — 概要 / SUMMARY

エアキングは、1945年にロレックスが発表した時刻表示のみのオイスターである。第二次大戦を戦った英国空軍 (RAF) の搭乗員への敬意から生まれ、複雑機構を持たない簡潔な構成を長く守ってきた。32年生産された Ref. 5500 に代表される34mmの素朴な時計から、2016年には40mmの Ref. 116900 へ大きく刷新。現行の Ref. 126900 は、航空計器を思わせる文字盤とクラウンガードを備える。最も飾らないオイスターとして歩んできた、航空への敬意の系譜である。

02 — STORY · 物語

Air-King(エアキング)、これまでの軌跡

The story of this series
01

戦後のトリビュートとして

第二次大戦下、英国空軍 (RAF) の搭乗員は、支給品よりも自費で購入したロレックスのオイスターを好んで腕に巻いたと伝わる。創業者ハンス・ウイルスドルフはこの信頼に応える形で、戦後の1945年、空を主題とする一連のモデルを発表した。エアライオン、エアタイガー、エアジャイアント、そしてエアキング。四機種のうち現在まで生き残ったのはエアキングだけである。

初代の Ref. 4925 は、34mmのオイスターケースに手巻きムーブメントを収めた簡素な時計だった。防水機構と視認性の高い文字盤を備えるが、複雑機構は持たない。実戦用の航空時計ではなく、戦った将兵への敬意を込めた一本。その出自そのものが、後年まで続くエアキングの性格を決めた。飾らず、過度な主張をしない。この姿勢は半世紀以上にわたり受け継がれていく。

02

自動巻と「現代エアキング」の確立

1953年の Ref. 6552 で、エアキングは大きく前進する。ロレックス初の自社設計自動巻 Cal. 1030 を搭載し、オイスターパーペチュアルの一員となった。文字盤には筆記体の「Air-King」が初めて刻まれ、以後この署名がシリーズ唯一の不変要素となる。

続く Ref. 5500 は、1957年から1989年まで32年にわたり生産された最長のリファレンスである。34mm径、100m防水、Cal. 1520 または 1530。装飾も日付も持たないこの簡潔な構成が、多くの愛好家の記憶に残る「エアキングらしさ」を形づくった。クロノメーター認定を持たないぶん手の届きやすい価格に収まり、企業が記念品として配るロゴ入り文字盤も数多く生まれた。日付窓を加えた派生 Ref. 5700「エアキング デイト」も並行して展開された。

03

近代化と6桁世代

1989年の Ref. 14000 で、風防がアクリルからサファイアへ替わり、毎時28,800振動 (4Hz) の Cal. 3000 を搭載した。2000年の Ref. 14000M は Cal. 3130 を得て、シリーズで初めてクロノメーター認定を受ける。2007年には6桁リファレンスの Ref. 114200 / 114234 へ移行し、文字盤の表記も「SUPERLATIVE CHRONOMETER」へ改められた。だが2014年、エアキングは一度カタログから姿を消す。70年近い歴史で初めての中断だった。

04

2016年の断絶 — 40mmと計器の文字盤

2年の沈黙を経て、2016年に登場した Ref. 116900 は、それまでのエアキングとは別物だった。ケース径は34mmから40mmへ拡大し、ミルガウスと共通のケースと耐磁内装を採用する。黒い光沢文字盤には、3・6・9のアラビア数字と5から55までの分目盛りが同居した。この目盛りは、ロレックスが英国の超音速車計画「Bloodhound SSC」向けに手がけた計器に着想を得たものとされる。緑の秒針、黄色の王冠。簡素な道具だったエアキングは、航空を主題に語る表現的な時計へと姿を変えた。この転換を惜しむ声も少なくない。

05

現在地 — Ref. 126900

2022年の Ref. 126900 は、外観こそ先代を受け継ぐが中身は新しい。ミルガウスの生産終了に伴い、ケースは GMT マスター II に近い造形となり、エアキングとして初めてクラウンガードを備えた。ムーブメントは Chronergy 脱進機を持つ Cal. 3230 へ更新され、約70時間の駆動と日差 -2/+2秒の精度を得た。耐磁内装は維持されている。文字盤では「5」が「05」へ整えられ、3・6・9の数字に夜光が入った。価格を抑えた素朴な入門機だったエアキングは、いまやロレックスのスポーツオイスターの一角を占める。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

エアキングの設計を貫くのは、ひとつの逆説である。ロレックスの主要シリーズの多くが数十年にわたり「変えない」ことで個性を保ったのに対し、エアキングはむしろ繰り返し姿を変えてきた。サブマリーナーやエクスプローラーが初期の意匠言語を守り続けたのとは対照的だ。

それでも一本の糸は通っている。文字盤に記された筆記体の「Air-King」の署名である。ケースもムーブメントも世代ごとに入れ替わったが、この署名だけは1953年の Ref. 6552 以来途切れていない。エアキングの同一性は、形ではなく名に宿る。

機能面の核心は、徹底した簡潔さにあった。時刻のみを表示し、複雑機構を持たない。長く34mmという控えめな径を保ち、エクスプローラーやデイトジャストより小ぶりだった。文字盤は装飾を排し、コントラストの高いインデックスと太い針で視認性を最優先する。専用ケースを持たず、バブルバック、ミルガウス、GMT マスター II と、時代ごとに他モデルのケースを借りてきた点も特徴的だ。これは飾らない実用オイスターという、エアキング本来の役回りを映している。価格を抑え、必要なものだけを備える。その自制こそが、長らくこのシリーズの設計思想だった。

2016年の Ref. 116900 は、この設計思想を大きく書き換えた。40mmの大型ケース、メルセデス針、計器を思わせる文字盤。静かな道具から、航空という主題を声高に語る時計への転換である。緑と黄の差し色は、それまでのロレックスの抑制とは距離を置く選択だった。同時代の航空時計が伝統的な三針意匠に留まるなか、エアキングはあえて現代的な計器表現へ踏み出した。

変わらないものと変わったもの。エアキングの設計史は、保存ではなく再解釈の物語として読める。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1945-1953
Cal. 10.5 系(手巻)
Aegler系の手巻。2.5Hz・非クロノメーター。
1953-1957
Cal. 1030
初の自社設計自動巻。両方向巻上げ機構。
1957-1989
Cal. 1520 / 1530
長期供給された自動巻。非クロノメーター。
1989-1999
Cal. 3000
毎時28,800振動 (4Hz) へ移行。
2000-2014
Cal. 3130
初のCOSC認定。Parachromひげぜんまい。
2016-現在
Cal. 3131 / 3230
耐磁の現代世代。3230はChronergy脱進機。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1945-1953

初代エアキングの誕生

4925 ほか
手巻34mmオイスター。RAF将兵へのトリビュートとして誕生。
1953-1957

自動巻化と署名の確立

6552
Cal. 1030でオイスターパーペチュアル化。基本様式が定まる。
1957-1989

現代エアキングの原型

5500
34mm・100m防水で32年生産。長く語られる基準形となる。
1989-2006

近代化とクロノメーター化

14000 14000M
サファイア風防採用。14000Mで初のクロノメーター認定。
2007-2014

6桁化と一時生産休止

114200 114234
COSC認定を標準化。2014年に一旦カタログから姿を消す。
2016-2022

40mmへの全面刷新

116900
ケース径を40mm化。Bloodhound由来の計器風文字盤を採用。
2022-現在

クラウンガードの追加

126900
クラウンガードを初採用。Cal. 3230で約70時間駆動。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Watches - Rolex 公式 · Rolex · 2026.08.15 閲覧 Rolex · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Rolex Movements Explained 専門メディア · Bob's Watches · 2026.08.15 閲覧 Bob's Watches · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive