設計思想
マスター クロノメーター展開の二段目として
グローブマスターは2015年、METAS(スイス連邦計量・認定局)の基準による世界初のマスター クロノメーターとして登場した。オメガはこの認証を主要な機械式モデルへ順次広げる方針を掲げ、翌2016年にはその続編として年次カレンダーを搭載した41mm版を加えた。
年次カレンダーとは、30日と31日の月を自動で判別し、修正を年1回に抑える機構である。オメガはこの機能を、1952年の初代コンステレーションに由来する12面のパイパン文字盤と結びつけた。12の面にそれぞれ月名を置けば、文字盤の意匠そのものが暦になる。本機の出発点は、この発想にある。
基幹仕様から変わったもの
先行したスチールモデルには、グレーのRef. 130.33.41.22.06.001と、オパーリンシルバーのRef. 130.33.41.22.02.001がある。両者とも青焼きの針とインデックスに青い印字を合わせ、ヴィンテージの気配を前面に出していた。
2019年に加わった本機は、ケースとムーブメントを共有したまま、色の設計を根本から組み替えている。文字盤は黒、印字は銀色、針とインデックスは18Kホワイトゴールドとなり、青の要素は消えた。変わったのは色と素材だけだが、時計の印象はクラシックな遊び心から端正なフォーマルへと移っている。
筆記体の月名表示は、シルバー文字盤で登場した当初から好みの分かれる要素とされた。海外の専門メディアには、黒地に銀の単色構成でこそこの書体が落ち着いて見える、と評したものもある。
黒文字盤三部作の基点
本機は単独の追加ではない。同時にセドナゴールドベゼルのRef. 130.23.41.22.01.001が発表された。フルセドナゴールドのRef. 130.53.41.22.01.001も並び、黒文字盤は素材違いの3本として展開された。本機はその中で最も素材の構成が簡潔な、いわば基点の1本にあたる。
ホワイトゴールドの針とインデックスという組み合わせは、のちのグリーン文字盤Ref. 130.33.41.22.10.001にも引き継がれた。青焼き針のヴィンテージ路線と並ぶ、もう一つの系統を開いたRefと位置づけられる。
意匠分析
ケースは41mm径のステンレススチールで、3針のグローブマスター(39mm)から2mm拡大されている。厚さは14.71mmに達し、年次カレンダー機構を積んだ分だけ3針モデルより明確に厚い。ケースサイドはサテン仕上げを基調とし、エッジの面取りにポリッシュを入れて輪郭を引き締める。
フルーテッドベゼルはタングステンカーバイド製で、山の頂部を平らに削いだ形状をとる。硬質素材のため、細かな刻みの谷や稜線に擦り傷が付きにくい。溝の刻みは細かく、王冠状というより硬貨の縁に近い表情を見せる。
文字盤は12面にカットされたパイパン形状で、各面に月名が筆記体で配される。本機の文字盤は光沢のある黒で、印字は銀色に統一された。月を指すのは中央に軸を持つ短い針で、艶を抑えた18Kホワイトゴールド製とされる。日付窓は6時位置に置かれ、文字盤の左右対称を崩さない。
時・分針はバトン型で、アプライドインデックスとともに18Kホワイトゴールドで作られ、スーパールミノヴァが充填される。グレーやシルバーの先行モデルが青焼き針で色の対比を作ったのに対し、本機は黒地に白い金属の反射だけで視認性を確保する構成である。
ムーブメントは自社製の自動巻きCal.8922で、3針用Cal.8900に年次カレンダーを加えた派生にあたる。振動数は毎時25,200振動(3.5Hz)。コーアクシャル脱進機(摩擦を抑える独自の脱進機)とシリコン製ヒゲゼンマイを備え、15,000ガウスの磁場に耐える。直列に連結した2つの香箱で約55時間駆動する。月表示は瞬時に切り替わり、手動修正が必要なのは年1回、3月1日のみである。
裏蓋はサファイアクリスタルで、中央に天文台を浮き彫りにしたコンステレーションのメダリオンを嵌め込む。ロジウムメッキの受けとローターにはアラベスク状のジュネーブウェーブが施される。ストラップは20mm幅の黒アリゲーターで、スチール製のフォールディングクラスプを組み合わせる。
系譜と歴史
グローブマスター・アニュアルカレンダーの系譜は、2016年のバーゼルワールドで始まる。このとき発表されたスチールモデルはグレー文字盤のRef. 130.33.41.22.06.001で、店頭に並んだのは同年10月とされる。本機130.33.41.22.01.001は、その3年後に加わったブラック文字盤仕様である。
2019年の初夏、オメガはアニュアルカレンダーに黒文字盤を追加した。海外の専門メディアが報じたのは同年5月から6月にかけてで、米国での発売は2019年8月と案内された。展開は本機を含む3本である。残る2本は、セドナゴールドベゼルのRef. 130.23.41.22.01.001と、フルセドナゴールドのRef. 130.53.41.22.01.001である。
生産期間を通じて、搭載キャリバーはCal.8922のままであった。文字盤や針の仕様変更を伝える公式発表は、確認できた範囲では見当たらない。
2021年には、スチールケースにグリーン文字盤を合わせたRef. 130.33.41.22.10.001が加わった。本機と同じく18Kホワイトゴールドの針とインデックスを採る。その後、本機は欧米の販売店で生産終了と表示されるようになったが、終了の年月は公式に確認できていない。
2026年3月、オメガはパイパン文字盤を持つ新コレクション、コンステレーション オブザーバトリーを発表した。これと前後して、グローブマスターは3針モデル、アニュアルカレンダーともにカタログから外れたと報じられている。本機は現在、生産終了モデルとして扱われる。