空・陸・海を一本に — 「Super-Chronograph」の発想
1960年代初頭、移動と探検の速度が一段と上がった。ジェット旅客機が大陸を半日で結び、スキューバダイビングが趣味として広がっていた。各社は用途ごとに専用時計を投じたが、Nivada Grenchen は逆の発想を採った。一本で空・陸・海のすべてに応える、汎用の道具という構想である。
その答えが Chronomaster Aviator Sea Diver であった。文字盤には三つの語が並ぶ。Chronomaster(あるいは Chronograph)、Aviator、Sea Diver。クロノグラフであり、飛行の計時に使え、潜水にも耐える。当時の広告はこれを「Super-Chronograph」と呼び、「世界で最も忙しい時計」と称した。一本で何役もこなす道具という売り込みである。
発表年については資料に幅がある。1961年とする記録と、1963年とする記録が併存する。少なくとも1961年12月のダイバーズ向け広告に登場が確認できるため、本稿では1960年代初頭の登場として扱う。