計器の血を引くドレスウォッチ
ミューレ・グラスヒュッテは、1869年にロベルト・ミューレが計測器メーカーとして創業した家業に始まる。東西ドイツ統一後の1994年、4代目ハンス=ユルゲン・ミューレが船舶用クロノメーターと航海計器の製造会社として再興した。腕時計の生産が始まるのは1996年。造船所からの「頑丈で防水性の高い実用時計が欲しい」という求めが出発点であった。ミューレの時計は、装飾品ではなく計器として生まれている。
その出自を背負いながら、初めて美しさを正面に据えた一本がトイトニアである。2002年初頭、当時製品開発を担っていた5代目ティロ・ミューレの手で発表された。銀色のギヨシェ文字盤に、視認性の高い大型日付。実用一辺倒だったミューレの製品群に、初めて明確なドレスの顔が加わった。
この初代は発表年のうちに約2,500本を販売し、同年秋には早々に市場から退いた。短命だったが、銀ギヨシェ文字盤という後の系譜を貫く意匠は、ここで定まっている。