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LONGINES · SERIES

Conquest V.H.P.

コンクエスト V.H.P.

年差±5秒の精度を、接続機能に頼らず実現する。スマートウォッチへのスイス・クォーツの回答

41 mm
01 — 概要 / SUMMARY

コンクエスト V.H.P. は、ロンジンが高精度クォーツの系譜を体現するシリーズである。原点は1984年、年差±10秒を実現した初代にさかのぼる。2017年に同名で復活した現行世代は、ETAがロンジン専用に開発した熱補償クォーツを搭載し、年差±5秒という精度に達した。三針、クロノグラフ、そしてスマートフォンの光で時刻を合わせるGMT Flash Settingを擁する。接続機能を持たないまま利便性を追ったクォーツとして、クォーツ危機を経たスイス時計の一つの回答を示す。

02 — STORY · 物語

Conquest V.H.P.(コンクエスト V.H.P.)、これまでの軌跡

The story of this series
01

クォーツに賭けた老舗

ロンジンとクォーツの関係は深い。1954年、同社はクォーツ時計と高速度カメラを組み合わせたクロノシネジーヌをニューシャテル天文台で公開した。1/100秒単位で着順を記録するこの装置は、スポーツ計時の精度を一段押し上げた。1969年にはUltra-Quartz(ベータ21)を発表する。これは量産を見据えたクォーツ腕時計の一つで、同年のセイコー アストロンと前後して登場した時代の産物である。

1970年代から80年代にかけて、クォーツは時計産業の主役へと躍り出る。ロンジンの生産に占めるクォーツの比率は、1977年の約1割から1980年には半数を超え、1984年には9割に達したとされる。高精度クォーツは、この転換期に同社が掲げた技術的到達点であった。

02

1984年、初代コンクエスト V.H.P.

1984年に登場した初代コンクエスト V.H.P. は、Cal. 276.2を搭載した。温度変化による誤差を補正する熱補償方式を採り、年差±10秒という精度を実現する。これは当時の市販腕時計として際立った数値であり、ロンジンは精度記録を更新したと位置づけている。

V.H.P. は「Very High Precision(超高精度)」の略である。その後、第二発振器をサーミスタ・モジュールに置き換えるなど改良が重ねられ、1996年には永久カレンダーを備えた世代も現れた。しかしクォーツが安価に量産できるようになると、精度競争そのものへの関心は薄れていく。永久カレンダー世代のキャリバーは2006年に生産を終え、V.H.P. の名はいったん表舞台から退いた。

03

2017年、天文台での復活

2017年のバーゼルワールドで、ロンジンはコンクエスト V.H.P. の名を復活させた。発表の舞台に選ばれたのは、1954年にクォーツ時計が認定されたニューシャテル天文台である。現行世代はETAがロンジン専用に開発した熱補償クォーツを搭載し、年差±5秒、1日あたり約0.01秒という精度に達した。

注目すべきは、衝撃や磁気で針がずれても自動で正しい位置に戻すGPD(ギア・ポジション・ディテクション)機構である。この時計は3日に一度、自らの針位置を点検する。当時のCEOヴァルター・フォン・ケネルは、本格的なスマートウォッチを作る意思はないと繰り返し述べていた。接続機能の煩わしさを避けつつ、精度と実用を両立させる——それがこの復活の狙いであった。

04

光で時刻を伝えるGMT

2018年、シリーズにGMT Flash Settingが加わる。第二時間帯を備えたこのモデルの特徴は、時刻合わせの方法にある。スマートフォンのアプリが発する光の点滅を文字盤のセンサーが読み取り、針を目的地の時刻へ動かす。BluetoothもWi-Fiも介さない、「つながらない」スマート機能である。

キャリバーL287.2は、年差±5秒と2399年まで対応する永久カレンダーを引き継いだ。クラウンを押すだけで自国時間と渡航先時間を入れ替えるスワップ機能も備える。電子的な接続を持たないまま旅の道具として機能させる発想は、V.H.P. の設計思想を素直に延長したものといえる。

05

高精度クォーツの現在地

年差数秒のクォーツは、いまや一部の愛好家が支持する領域である。同じ土俵には、グランドセイコーの9Fクォーツ、シチズンのザ・シチズン、ブライトリングのスーパークォーツなどが並ぶ。それぞれ精度への姿勢は異なり、V.H.P. は自動補正と永久カレンダーによる手のかからなさに重心を置く。

現行カタログにも複数のリファレンスが残る一方で、生産の縮小や終了を伝える販売店の声もあり、現状は流動的である。確かなのは、コンクエスト V.H.P. が、機械式とは別の軸でスイス時計の精度を追い続けてきたシリーズだということである。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

コンクエスト V.H.P. の設計思想は、文字盤の外側ではなく内側にある。外観はコンクエストの系譜に連なるスポーティな三針時計であり、同心円状のパターンを刻んだ文字盤、アプライドインデックス、スーパールミノバ、3時位置の日付窓という構成は、ひと目では高精度クォーツと分からない。技術的な野心を意匠で誇示しないこと——これがこのシリーズの最初の決定である。

外観上の語彙は、あくまで日常使いのスポーツウォッチに留められている。41mmから44mmのステンレスケース、回転しない研磨ベゼル、ケースと一体感のあるブレスレット。文字盤色は黒・銀・青を基調とし、よりスポーティな派生にはカーボン文字盤やPVD仕上げも用意された。サイズも装飾も抑制的で、機械式の同価格帯と並べても浮かない佇まいを保つ。

機能設計の中心は、精度をどう維持するかにある。熱補償クォーツは温度による誤差を抑え、年差±5秒を保つ。GPD機構は衝撃や磁気で乱れた針を自動で元に戻し、針表示そのものの正確さを担保する。2399年まで対応する永久カレンダー、電池消耗を知らせるEOL表示、5年近い電池寿命。これらはいずれも、合わせ直す手間を極力なくすという一つの思想に収斂する。着けたまま放っておいても狂わない時計、という到達点である。

外部に現れる手がかりは、操作モードを切り替えるスマートクラウンほぼ一点に絞られる。この性格は競合との対比で輪郭がはっきりする。グランドセイコーの9Fが機械式に通じる運針感を磨き、シチズンのザ・シチズンが規格上の精度を突き詰めるのに対し、V.H.P. は精度と利便性を日常の道具として束ねる方向を選んだ。スマートウォッチが画面で自己主張するのとも対照的に、V.H.P. は技術を表に出さない。変えなかったのは見慣れたアナログの佇まいであり、変えたのはその内部で時を刻む仕組みである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1984
Cal. 276.2
熱補償方式の初代、年差±10秒。
1980s-1990s
Cal. 23系(サーミスタ式)
発振器をサーミスタに置換し改良。
1996-2006
L546.2 (ETA 252.611)
永久カレンダーを搭載した世代。
2017-現在
L288.2 / L289.2 (ETA E56.111系)
400Hz駆動・GPD、年差±5秒。
2018-現在
L287.2 (ETA E56.411)
GMT・フラッシュ設定に対応。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1984

初代コンクエスト V.H.P.

Cal. 276.2搭載
熱補償クォーツで年差±10秒、高精度の先駆け。
1980s-2006

ヴィンテージV.H.P.期

L546.2世代ほか
サーミスタ式や永久カレンダーへ改良、2006年に終息。
2017

三針・クロノグラフで復活

L3.716 726系・L3.717 727系
三針とクロノグラフ、年差±5秒・GPDを搭載。
2018-現在

GMT Flash Setting

L3.718 728系
光で時刻を合わせる第二時間帯モデルを追加。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive