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HUBLOT · SERIES

King Power

キングパワー

ビッグバンを 48mm へ拡大し、ウブロ初の自社製ムーブメント『ウニコ』を世に送り出した、アート・オブ・フュージョンの最大表現。

01 — 概要 / SUMMARY

キングパワー(King Power)は、2009 年にウブロ(Hublot)が発表した、ビッグバンを 48mm へと拡大した大型スポーツウォッチの系譜である。異素材の融合を掲げる「アート・オブ・フュージョン」を最も先鋭に押し進めた一群であり、2010 年にはウブロ初の自社製クロノグラフ「ウニコ」を世に問う舞台となった。F1 やフットボールとの結びつきを背景に、アイルトン・セナ、マラドーナ、4000m 防水のオーシャノグラフィック 4000 など、数多くの限定・派生を生んでいる。ビッグバンの設計言語を極端まで拡張した、ウブロの 2010 年代を象徴するコレクションである。

02 — STORY · 物語

King Power(キングパワー)、これまでの軌跡

The story of this series
01

ビッグバンを増幅する

2005 年に登場したビッグバンは、異素材の組み合わせという発想でウブロを一躍人気ブランドへ押し上げた。その勢いのなか、2008 年にウブロは LVMH の傘下に入る。潤沢な資源を得たブランドが次に向かったのは、ビッグバンの設計言語をさらに極端へ振り切ることであった。

2009 年、キングパワーが発表される。ケース径は 48mm。当時のウブロでも最大級の寸法であり、厚みも増した重厚な造形である。ビッグバン由来のポートホール(舷窓)を思わせる円形ケースに、頭部を立体的に成形した H 型ビスを配し、ベゼルとケースを幾層にも積み重ねるサンドイッチ構造を強調した。「大きく、強く、目立つ」という方向性を、ためらいなく選び取った世代である。

初期のキングパワーは、外注ベースの自動巻クロノグラフ HUB4100 系を積んでいた。ビッグバンと同じ路線の機械であり、この時点では機械そのものがまだ主役ではなかった。

02

ウニコ — 自社製という賭け

転機は 2010 年に訪れる。ウブロは初の自社製ムーブメント、コラムホイール式フライバッククロノグラフ「ウニコ(Unico)」を発表する。このウニコを世に問う舞台となったのが、キングパワーであった。

ウニコ(HUB1240)は約 330 個の部品からなり、毎時 28,800 振動 (4Hz)、約 72 時間のパワーリザーブを備える。注目すべきは、コラムホイールとダブル水平クラッチを文字盤側に配置した点である。これにより、時計の表側から機構の動きを直接眺められる。「ムーブメントは時計の魂であり、デザインの一部である」という当時の思想が、ここで形を得た。

汎用機への依存から離れ、機械を内製する。垂直統合(verticalization)へ向かうウブロの意思を、キングパワーは体現していた。なお後年、ウニコは 45mm のビッグバン・ウニコへも展開されるが、その出発点はこの大型ケースにある。

03

カーボンとセナ — 素材実験の極点

2010 年、ウブロはアイルトン・セナへのオマージュとして、キングパワー アイルトン・セナを発表する。ブラジルのインテルラゴスで開かれたグランプリでの披露であった。生誕 50 年にあたるこの年、セナの遺志を継ぐ研究所(Instituto Ayrton Senna)を支援する 500 本限定として企画されている。

特筆すべきは、ケース全体をカーボンファイバーで構成した点である。それまでのウブロはカーボンを部分的に用いてきたが、ケース全体での採用はブランドとして初であったと伝わる。ベゼルは F1 のブレーキディスクを想起させるセラミック、ストラップはドライバーのスーツに使われるノーメックスと、モータースポーツの素材で固められている。機械はスプリットセコンド・クロノグラフ。さらに 10 本限定のトゥールビヨン版も用意された。

ウブロは 2010 年に F1 の公式タイムキーパーとなっており、キングパワーはその関係を腕の上で語る器となった。

04

4000 メートルの海へ

2011 年 6 月、ウブロはキングパワー オーシャノグラフィック 4000 を発表する。モナコ海洋博物館との協働で生まれた、4000m 防水をうたうダイバーズウォッチである。

4000m という数字は、当時の量産ダイバーズのなかでも極端な部類に入る。実現のため、サファイアクリスタルは 6.5mm という異例の厚みを持ち、ケースバックはチタン製のねじ込み式、ヘリウムエスケープバルブを備える。ケース全体の厚みは 22mm 近くに達した。開発には 18 か月を要し、5000m 相当の圧力試験を経たと伝わる。48mm のケースを、今度は深海という目的へ向けて造り替えた一本である。

05

フットボールと祝祭

ウブロのもう一つの軸はフットボールであった。2010 年と 2014 年の FIFA ワールドカップで公式タイムキーパーを務め、その縁から多くのアンバサダーモデルが生まれている。

2012 年、上海でキングパワー マラドーナが発表される。ディエゴ・マラドーナとの協働による 500 本限定で、文字盤には背番号 10 と本人のサインが刻まれた。特徴は、中央に配された 45 分計である。サッカーの前後半それぞれ 45 分を、中央の針一本で直感的に計れるよう設計されていた。競技の時間構造を、そのまま文字盤に落とし込んだ発想である。

キングパワーはこうして、F1、フットボール、深海、そしてバスケットボール(NBA)へと、ウブロのスポーツ戦略を映す画布になっていった。

06

役割を終えて

2010 年代半ば、ウブロはウニコを 45mm のビッグバン・ウニコへ移していく。より現代的で装着感に優れた 45mm ケースが、48mm のキングパワーが担っていた役割を引き継いだ。やがてキングパワーは現行カタログから姿を消す。

短命とも言える歩みであったが、その意義は小さくない。ウブロが初の自社製ムーブメントを世に送り出した舞台であり、カーボンや深海防水といった素材・機能実験の前線でもあった。キングパワーは、ウブロが「素材ブランド」から「機械を内製するマニュファクチュール」へ脱皮する過渡期を、最も雄弁に語る一群として記憶されている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

キングパワーの設計思想は、一言で言えば「増幅」である。ビッグバンが築いたデザイン言語を、寸法・素材・機構のあらゆる面で過剰なまでに押し広げた。

その核にあるのは、ポートホール(舷窓)に由来する円形ケースと、ベゼルを留める 6 本の H 型ビスである。ビッグバンと共通するこの意匠を、キングパワーは 48mm という大径と、層を重ねたサンドイッチ構造によって誇張する。ベゼル、ケースミドル、ラバーのアクセントが幾重にも積み上がり、横から見たときの厚みそのものが造形の主題になる。多くの高級スポーツウォッチが薄さや控えめさに価値を置くのとは対照的に、キングパワーは存在感の最大化を選んだ。

素材の扱いにも一貫した思想がある。チタン、セラミック、カーボンファイバー、そして自社開発の金合金キングゴールド(King Gold)。これらを単独で、あるいは組み合わせて用い、質感の対比を意図的に作り出す。「アート・オブ・フュージョン(異素材の融合)」という標語が、ここでは装飾ではなく構造の原理として働いている。

意匠言語の継承点は明快である。立体的な H 型ビス、ラバーを成形したリューズ、視認性を確保した太い針と大きなインデックス。文字盤がスケルトン化されても、夜光を備えた指標とコントラストの強い配色によって、時刻の読み取りやすさは保たれる。「機械を見せながら、なお読める」という両立が、キングパワーの文字盤設計を貫いている。

そして 2010 年以降、設計の中心に「ムーブメントを見せる」という考えが据えられた。ウニコのコラムホイールを文字盤側に配し、機構の動きを表から眺めさせる。ケースが容れ物であると同時に、機械そのものが意匠の主役となる。同時代のダイバーズやスポーツウォッチが文字盤の整然さを重んじたのに対し、キングパワーは機械の露出をむしろ価値とした。

変えなかったものは、ビッグバンから受け継いだ円形ケースと H 型ビスという「顔」である。変えたものは、その顔を支える寸法・素材・機構のすべてであった。抑制ではなく拡張を是とする——その一貫した態度こそ、キングパワーの設計思想だと言える。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2009-2010
HUB4100 系
外注ベースの自動巻クロノグラフ。シリーズ初期の主軸。
2010-
Unico HUB1240
自社製初のフライバッククロノ。King Power が初搭載。
2011-
HUB1220 / HUB8100 系
Unico 派生の GMT と、自社製の大複雑機構へ展開。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2009-

初代キングパワー

701 系(HUB4100)
48mm へ拡大、外注ベースのクロノで始動した起点。
2010-

キングパワー ウニコ

701.NX.0170.RX
自社製初のウニコを世に問い、垂直統合を象徴した。
2010-

アイルトン・セナ

719.QM.1729.NR.AES10
全カーボンケース初採用、スプリットセコンド搭載。
2011-

オーシャノグラフィック 4000

731.NX.1190.RX
4000m 防水、モナコ海洋博物館と協働した深海仕様。
2012-

マラドーナ

716.CI.1129.RX.DMA11
中央 45 分計を備えたフットボール仕様の特別版。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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