設計思想
オクタが目指した「自動巻のクロノメーター」
オクタは2001年、F.P.ジュルヌ初の自動巻ラインとして始動した。複雑機構の種類を問わず同一のケースとベース機構を共有し、5日(120時間)の精度保証付きパワーリザーブを掲げる構想である。ムーンフェイズと大型デイトを組み合わせたオクタ・リュンヌは2003年に登場し、同年のGPHGで男性用時計賞を受けた初期からの中核である。38mm/40mmの旧世代は2015年まで作られた。地板と受けを18Kローズゴールドで作る方針も2000年代半ばに定着し、リュンヌはオクタの思想を最も端的に体現するモデルとなっていった。
2015年の刷新——最初に変わったのがリュンヌだった
2015年1月のSIHH会期中、オクタ・リュンヌは全面刷新を受けた新版として披露された。オクタ系で最初にこの改修を受けたのが本機で、ケースは38mm/40mmから40mm/42mmへ移行し、38mmは廃止された。背景には大径化への対応と、2014年の金無垢文字盤モデル群で導入された型押し数字の意匠展開があったとみられる。印刷によるブレゲ様式の数字から、ダイヤモンド工具で鏡面に磨いた立体数字への転換は、ブランドの顔つきを変える大きな決断だった。一方でムーブメントはCal.1300.3を継続し、機構面の連続性は保たれた(径を変えずスペーサーリングで収めたとする資料と、34.6mmへ拡大したとする資料がある)。
42mmプラチナ/グレーという選択
本Refはその刷新世代のうち、最大径42mmをプラチナケースとグレー文字盤で構成した仕様である。姉妹仕様として18Kレッドゴールド/グレーの1300.3 NOL 42 RG GRがあり、発表時からケースと同じ貴金属のブレスレットも用意され、後年にはサーモン文字盤の1300.3 NOL 42 PT PIなども加わったとされる。その後ブランドはオクタの呼称を整理し、本系統は「リュンヌ(Ref. LN)」としてクラシックコレクションに位置づけ直されたと伝わる。中心針表示の姉妹機オートマティック・リュンヌが2019年に刷新されるなか、オフセンター表示のリュンヌもジュルヌの月齢表示の一方の柱であり続けている。
意匠分析
本Refの設計を特徴づけるのは、拡大と引き換えに何を守ったかである。ケースは直径42mm、厚さ10.7mmのプラチナ950。前世代から最大2mmの大径化にもかかわらず、厚みは10mm台前半に踏みとどまり、丸みを帯びたケースサイドと短いラグが装着時の重心を低く保つ。リューズはロープを模したローレットを刻む大型のもので、刷新世代を見分ける目印のひとつになっている。
文字盤は2枚構成で、いずれも金無垢である。地板側のメインダイヤルはグレーに仕上げられ、3時側にオフセットした時分サブダイヤルには銀色処理を施す。サブダイヤル上の時数字は型押しで立ち上げた後にダイヤモンド工具で頂面を鏡面に磨いており、光の角度で数字が明滅する。従来の印刷数字に対する最大の意匠的転換点である。針はブルースチールで、グレー地とのコントラストが視認性を支える。11時側に2枚の円盤が真夜中に瞬時に切り替わる大型デイト、左側に120時間スケールのパワーリザーブ、8時側にやや傾けたムーンフェイズが配され、表示は刷新時にケース拡大へ比例して拡大された。大型デイトは旧版の約2倍の大きさとされる。
裏蓋はサファイアで、18Kローズゴールド製のCal.1300.3が見える。SJXは、径を変えずに大型ケースへ収めるためムーブメント外周にスペーサーリングを介したと記す。一方、Monochromeは仕様書を根拠にムーブメント径が30.8mmから34.6mmへ拡大したとしており、資料で割れる。22Kゴールドの偏心ローターはボールベアリングを用いた単方向巻上げで、毎時21,600振動 (3Hz) のフリースプラング・可変慣性テンプを駆動する。精度保証は120時間、実用上のゼンマイ持続は約160時間に達する。
系譜と歴史
系譜の起点は2001年のオクタ・ライン始動にある。ムーンフェイズ搭載のオクタ・リュンヌは2003年に加わって同年のGPHG男性用時計賞を受け、38mm/40mmの旧世代が2015年まで作られた。搭載ムーブメントは初期のCal.1300系から、2000年代後半に巻上げ機構を最適化したCal.1300.3へ移行したとされる。本Refが属する刷新世代は2014年末から2015年初頭にかけて発表され、専門メディアSJXは2015年2月に実機詳報を掲載した。サイズは40mm/42mmの2展開となり、38mmは廃止。素材はプラチナと18Kレッドゴールドの2種で、本Refはプラチナ/グレー文字盤の組み合わせにあたる。その後、サーモン文字盤仕様(1300.3 NOL 42 PT PI等)や貴金属ブレスレット仕様が段階的に加わったと伝わる。ブティック限定では6Nゴールドケースに黒文字盤を組み合わせたブティック・エディションや、既存顧客向けのブラックレーベル仕様も作られたとされる。名称面では、オクタの呼称整理に伴い本系統は「リュンヌ(Ref. LN)」へ改められ、クラシックコレクションに編入された。現行モデルとして扱われているとみられる。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 専門メディア F.P.Journe Octa Calibre
- 02 専門メディア FP Journe Octa Lune - Hands-on with the 2015 edition with live photos (specs & price)
- 03 専門メディア Review - The Superbly Elegant F.P. Journe Automatique Lune
- 04 専門メディア Up Close With The New F.P. Journe Octa Lune, Now In 40 or 42 mm (With Original Photos And Price)