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FP JOURNE · SERIES

Octa

オクタ

多彩な複雑機構を一つの自動巻きキャリバーに統合する、F.P.ジュルヌの実用高級時計の原点

42 mm
01 — 概要 / SUMMARY

2001年にF.P.ジュルヌが発表した、ブランド初の自動巻きシリーズである。一つの自動巻きキャリバー1300を土台に、日付やムーンフェイズ、年次カレンダー、クロノグラフといった複雑機構を、ケース寸法を変えないまま組み込む。その統合設計がオクタの核にある。120時間の動力持続と22Kゴールドの偏心ローターを備えた機械式クロノメーターの系譜であり、現在はオートマティック・リュヌやカンティエーム・ペルペチュエル、軽量素材のlineSportオクタ・スポーツへと枝分かれしている。

02 — STORY · 物語

Octa(オクタ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

三本目の判断

1999年に独立した時計師フランソワ=ポール・ジュルヌが最初に世へ問うたのは、トゥールビヨン・スーヴェランとクロノメーター・ア・レゾナンスという二本の手巻きであった。いずれも時間計測の精度そのものを主題とする作品である。三本目に彼が選んだのは、性格の異なる時計だった。日常の実用に応える自動巻きである。

オクタと名付けられたこのキャリバーは、当初は8日間の動力持続を狙って設計されたと伝わる。実際の保証値は120時間、すなわち5日間に落ち着いたが、「8 (octa)」の語はそのまま名として残った。手巻きの高級複雑時計とは別に、より広い層が日々巻いて使える一本。それが2001年に示された答えである。

02

「サンドイッチは作らない」

ジュルヌはモジュール式の構造を好まない。基盤の上に複雑機構を積み重ねる手法を、彼は「サンドイッチ作り」になぞらえて退けた。代わりに選んだのは、一つの土台にあらゆる機構を組み込む統合設計である。

背景には、創業間もない小規模な工房の事情もあった。文字盤もケースも外注に頼っていた当時、複雑機構ごとに専用ケースを起こすのは現実的でない。そこでオクタのキャリバー1300は、文字盤側のわずか1mmの空間に各種の機構を収め、複雑機構が変わってもケース寸法を一定に保つよう設計された。直径およそ30mm、厚さおよそ5.7mm。この寸法はコレクションを通じて変わらない。

動力源には、長さ1m・厚さ1mmという特異な主ぜんまいを用いる。低く安定したトルクが速い巻き上げと長い持続を両立させ、その余力が大型のテンプを支える。地板を覆う偏心ローターも、裏面への機構展開を見据えた意図的な配置と伝わる。

03

一つの土台から複雑機構へ

土台が固まると、オクタは複雑機構の展開へ進む。レトログラード式の年次カレンダーを備えたオクタ・カレンドリエ、フライバック・クロノグラフのオクタ・クロノグラフ、ムーンフェイズのオクタ・リュヌ。いずれも同じキャリバーの1mmの空間に機構を収めている。

クロノグラフでは、通常は立体的なコラムホイールを平面のカム状に置き換え、薄さを保ったまま機能を成立させた。野心的な構造ゆえ、初期のビッグデイトには信頼性の課題があったとも伝わるが、これらの試みはオクタが単なる実用機にとどまらないことを示している。

04

金無垢と巻き上げの刷新

2004年前後、ジュルヌは地板と橋をロジウム鍍金の真鍮から18Kローズゴールドへ改めた。装飾も直線状のコート・ド・ジュネーブから円状の仕上げへと変わり、キャリバーはCal. 1300.2と呼ばれるようになる。

2007年には巻き上げ機構そのものに手が入る。座って働く愛用者のローターが十分に回らないという指摘を受け、両方向巻きから単方向巻きへ。自動ロック式のベアリングにより、手首のわずかな動きも巻き上げに変える。このCal. 1300.3とともに登場したオクタ・オートマティック・リザーブとオートマティック・リュヌは、文字盤を中央針配置のクロノメーター・スーヴェラン由来の意匠へ改め、視認性を高めた。

05

アルミから42mmへ

2012年、オクタは異質な領域へ踏み出す。アルミニウム合金の地板とケースをまとうlineSportのオクタ・スポーツである。軽量素材とラバーの緩衝材を備えたこの一本は、高級時計の中身をスポーツの文脈に置いた。

2019年には、オートマティック・リュヌがRef. AL2として刷新される。ケースは40mmと42mmへ拡大し、日付とムーンフェイズを大型化して視認性を整えた。土台となるCal. 1300.3は変わらない。発表から20年余りを経た現在も、オクタはF.P.ジュルヌが手がける自動巻きすべての基盤であり続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

オクタを貫く設計思想は、「複雑機構が変わっても、時計の骨格は変えない」という一点に要約できる。複雑化のたびに新たな基盤を起こすのではなく、一つの統合キャリバーを土台とし、各機構を文字盤側の1mmの空間に押し込める。これにより、年次カレンダーからムーンフェイズまで、すべてのモデルがほぼ同一の寸法を共有する。設計の出発点が意匠ではなく構造にある点が、オクタの性格を決めている。

機能面で守られてきたのは、自律性と精度の両立である。長く弱いトルクの主ぜんまいと、直径10.1mmの大型テンプ。毎時21,600振動 (3Hz) の可変慣性テンプが、5日間にわたり姿勢差の少ない歩度を保つ。長い動力持続を小さなテンプで稼ぐ手法を、ジュルヌは採らなかった。精度を犠牲にしないことが、このシリーズの前提に置かれている。22Kゴールドの偏心ローターも、巻き上げ効率と裏面の意匠の両立を狙った選択である。

意匠面では、金無垢の文字盤に銀のギヨシェ・サブダイヤルをスチールのリングで留める構成、ブルースチールの針、「Invenit et Fecit」の銘が世代を超えて受け継がれてきた。シルク・ロープ模様を刻んだ平らなリューズや、視認性を最優先する文字盤構成も、初期から現行まで大きく揺らいでいない。オフセンターの時刻表示か中央針かという違いはあっても、要素の語彙そのものは一貫している。

同時代の自動巻き高級時計の多くがモジュール式の利便を採り、あるいは誇示的な長動力を競うなかで、オクタは構造の純度と寸法の自制を選んだ。派手な色や装飾、過大なサイズに走らず、複雑機構の数だけ文字盤の情報量が静かに増えていく。20年を経てなお一目でオクタと分かるのは、この抑制された設計言語が変わらなかったからである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2001-2004
Cal. 1300
真鍮地板・両方向巻き。直線状の装飾。
2004-2007
Cal. 1300.2
18Kローズゴールド地板へ移行。円状装飾。
2007-現在
Cal. 1300.3
単方向巻きへ刷新。自動ロック式ベアリング。
2012-現在
Cal. 1300.3 (アルミ)
lineSport用。アルミ合金地板で軽量化。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2001-2003

初代リザーブ

A
ブラス地板。ビッグデイトと120時間動力を備えた起点。
2002-2003

複雑機構の展開

Q L
年次カレンダーやムーンフェイズを同一ケースに統合。
2003-2004

派生の拡大

C D
フライバック・クロノや中央針モデルへ。40mmを導入。
2007-2016

中央針世代

AR AL
Cal. 1300.3採用。スーヴェラン由来の文字盤へ刷新。
2012-現在

lineSport

ARS
アルミ素材のオクタ・スポーツ。軽量スポーツ路線へ。
2019-現在

42mm刷新

AL2
オートマティック・リュヌを大型化し視認性を再構成。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 3 モデル

3 references in archive