設計思想
中央針のオクタという出自
オクタ・ディヴィーンの原型は2003年に遡る。2001年に完成した自動巻きCal.1300系を土台に、ムーンフェイズ、ラージデイト、パワーリザーブ、スモールセコンドを束ねたモデルとして登場した。注目すべきは時分針が文字盤の中央に置かれた点である。オフセンター表示を常としてきたF.P.ジュルヌにおいて、中央針の採用はこのモデルが最初だったと伝わる。当初のケースは36mmで、のちに38mmが加わり、小径のエレガンス路線を担う存在として育った。
40mm/42mm体系への再編
2010年代半ば、F.P.ジュルヌはケースサイズの体系を40mmと42mmへ集約する方針を進めた。クロノメーター・オプティマム、カンティエーム・パーペチュエル、オクタ・リュヌが順に42mm化され、2016年1月、最後発としてディヴィーンの番が来た。1300.3 NOD 42 RGはこの再編で生まれた42mm世代のレッドゴールド仕様である。同時に40mm版とプラチナ版が用意され、36mm/38mmの旧体系は事実上の役目を終えた。単なる拡径ではなく、文字盤の設計が全面的に見直された世代交代だった。
変わったものと残されたもの
2016年世代では、スモールセコンドが従来のサブダイヤルから窓内の部分円盤表示へ改められ、ラージデイトの窓は拡大された。パワーリザーブ表示は小さく控えめに整理され、中央の視覚的な密度が下げられている。一方で、文字盤にビスで留められた磨き仕上げのスティールリング、位置によって大きさの異なるアラビア数字、ブルースティール針、サファイア製ムーンディスクといったジュルヌ固有の語彙は引き継がれた。刷新と継承の線引きが明快な改設計である。
兄弟仕様と世代の終わり
本Refの兄弟にあたるのは、プラチナケースの1300.3 NOD 42 PTと、両素材の40mm版である。レッドゴールド仕様はゴールドトーンの文字盤をまとい、ローズゴールド製ムーブメントと同系色で統一される点が性格を分ける。この世代は約7年間カタログに留まり、2023年春に発表された新世代――アプライド数字とギヨシェ装飾を備え、スティールリングを廃した意匠――へ役割を譲った。1300.3 NOD 42 RGは、ディヴィーン現代化の起点となった世代の記録である。
意匠分析
ケースは直径42mm、全高10.6mmに収まる。4つの表示を持つ自動巻きとしては薄く、複雑機構を同一の体積に組み込むというオクタ系ムーブメントの設計思想が、そのまま外装の数字に表れている。素材は18Kレッドゴールドで、ラグは短く下方へ絞り込まれ、径のわりに袖口へ収まりやすい。
文字盤は層構造で組み立てられる。中央はグレイン仕上げのゴールドトーンの面、その外周を卵形に磨かれたスティールリングがビス留めで囲い、最外周の白い時字リングへ続く。アラビア数字はリングの形状に合わせて位置ごとに大きさが変わり、赤いドットが差し色として打たれる。針は雫形のブルースティールで、地色とのコントラストが視認性を支える。
表示の配置にも秩序がある。ラージデイトは11時半位置の2枚円盤式で、日送りは瞬時切り替え。パワーリザーブは10時位置に細く描かれ、7時半位置にはサファイアディスクのムーンフェイズが沈む。スモールセコンドは4時半位置の窓に部分円盤として現れ、針を1本減らすことで中央の混雑を避けている。
ムーブメントは18Kローズゴールド製のCal.1300.3。22Kレッドゴールドの偏心ローターはギヨシェ装飾を持ち、セルフロック式ボールベアリングによる一方向巻き上げで全長約1mの主ゼンマイを巻く。フリースプラング天輪は4つの慣性錘で調整され、振動数は毎時21,600振動 (3Hz)。公称約160時間の駆動のうち、精度を保証する範囲を120時間と明示する考え方も、このキャリバーの設計に固有である。リューズは3段式で、1段目の逆回転で日付、正回転で月齢を修正できる。
系譜と歴史
1300.3 NOD 42 RGの起点は2016年1月である。クロノメーター・オプティマム、カンティエーム・パーペチュエル、オクタ・リュヌに続く42mm化の最終章として、全面的に再設計されたオクタ・ディヴィーンが発表された。このとき42mmと40mmの2サイズ、レッドゴールドとプラチナの2素材が同時に整えられ、本Refはその42mmレッドゴールドにあたる。限定生産ではなく、ブティックと正規販売網で扱われるカタログモデルとして供給された。
生産期間中、このRefについて公式に告知された仕様変更は確認できない。文字盤の構成、ムーブメント、ケース寸法は2016年の発表時の内容が維持されたとみられる。なお、それ以前のディヴィーンに存在したブティック限定の黒文字盤仕様のような派生は、この42mm世代では恒常的な展開として確認できない。
転機は2023年春に訪れた。アプライド数字、段差のある窓枠、クル・ド・パリのギヨシェ装飾を備え、文字盤上のビスを廃した新世代のディヴィーンが発表されたのである。新世代は40mmと42mm、レッドゴールドとプラチナの体系を引き継ぎつつ、5連ブレスレットの選択肢と拡大されたリューズを加えた。これにより2016年世代の文字盤を持つ本Refは現行カタログから退き、約7年間の生産期間を終えたとみられる。正確な生産終了時期は公表されていない。