設計思想
自社製ムーブメント時代のクロノマット
ブライトリングのクロノマットは、2009年に同社初の完全自社製クロノグラフムーブメントCal. B01を得て、製品史の節目を迎えた。1984年にエルネスト・シュナイダー体制下で復活したシリーズは、長くヴァルジュー7750を改良した汎用ベースに依存してきたが、創業125周年に合わせて自社製キャリバーを獲得した。コラムホイール、垂直クラッチ、70時間パワーリザーブを備えるCal. B01は、ブライトリングが汎用ムーブメント供給に依存しないマニュファクチュールへと立場を移す象徴であった。
GMT機能の付加、44mm版の追加
その2年後、2011年に登場したのが、Cal. B01を基礎にGMT針を加えたCal. B04である。同年発表のクロノマットGMT(47mm)が初の搭載機となった。独立して時針を進められるトラベラー仕様の第2タイムゾーン機能と、24時間目盛入りベゼルの組み合わせにより、第3ゾーンまでの時刻読み取りも可能となった。Cal. B04は、Cal. B01の基本構造をそのまま維持したまま、シンプルな付加機能としてGMTを実装する設計である。
翌2012年、47mmケースが大柄に過ぎると感じる層への応答として、Cal. B04を移植した44mmケースのクロノマット44 GMTが追加された。本Ref. AB042011.C852.375Aは、その44mm GMT群の中の一つの文字盤色仕様にあたる。同じ44mmケース内には、クロノグラフのみのモデル(AB011012系列)、クロノグラフ+GMTのモデル(AB042011系列)、エアボーンやレイヴンといった派生まで並び、クロノマット44世代はピーク期を迎えた。
二段文字盤というクロノマット第2世代の意匠
本Refが採るブラックアイブルーは、フラットな外周部と沈み込んだ正方形中央部からなる二段構造の文字盤である。クロノマット第2世代(2009年以降のB01世代)に固有の意匠であり、視覚的階層によってインダイヤル領域と時刻表示領域を分離する設計思想を持つ。中央部に黒のインダイヤルを置く本Refの仕様は、青地と黒との明度差を強調するコントラスト志向の選択であり、同シリーズに併存していた他の文字盤色仕様の中でも比較的沈静的な性格を備える。
2020年世代刷新を前にした位置
2020年、新CEOジョルジュ・カーンの主導でクロノマットは再設計され、1984年のオリジナルに近いプロポーションとルローブレスレットが復活した。これに伴い、本Refを含むAB04世代の44mm GMTは正規ラインナップから外れた。本機は、自社製ムーブメント獲得後の最盛期と、レトロ回帰へと向かう転換点との間に位置するモデルとして記憶される。
意匠分析
ステンレススチール製ケースは、47mm版から3mm縮小された44mmの直径を持つ。厚さは公表値で16.9mmとされる。シリーズ伝統の意匠言語はそのまま受け継がれた。ベゼル外周の12時・3時・6時・9時に配される4つのライダータブ、玉ねぎ形のオニオンクラウン、両面に反射防止加工を施したカンバー型サファイアクリスタル風防、ねじ込み式のクラウンとプッシャーといった要素である。
文字盤はブライトリングが「ブラックアイブルー」と命名した二段構造を採る。中央部が正方形にくり抜かれて一段沈み、外周部はフラットな青で残される。沈み込んだ中央領域に並ぶ3つのインダイヤル(9時の小秒、3時の30分積算、6時の12時間積算)はマット仕上げの黒で抜かれ、青地との明確なコントラストを作る。日付窓は4時と5時の間に開口する。中央のGMT針はベゼルとは独立して時針単独で進められ、トラベラー仕様の操作系を採る。
ベゼルはサテン仕上げの両方向回転式で、24時間目盛が刻印される。これとGMT針を組み合わせれば、ホームタイム・現地時間・第3ゾーンの3地点読み取りが可能となる。チャプターリングにはタキメーター目盛が印字され、計時と航空、両用途の機能性が共存する。
ブレスレットはコード375Aのパイロットブレスを採る。5列リンク構造で、両端の細かいリンクと中央の3列が組み合わさるブライトリング独自の意匠である。バックルはダブルセーフティフォールディング式を採用する。
ケースバックは無垢のスチール製で、Cal. B04の機械的姿は外からは見えない。コラムホイール、垂直クラッチ、約70時間のパワーリザーブといったCal. B01世代の設計要件をそのまま継承しながら、独立調整可能な24時間針の機構を加えた構成である。
系譜と歴史
クロノマット44 GMTのRef. AB042011.C852.375Aは、2012年にコレクションへ加わった44mmケースのクロノマットGMT群の一員として流通網に並んだ。シリーズの起点は2011年、47mmケースのクロノマットGMTがCal. B04と共に発表されたことに遡る。翌2012年、47mm版が大柄に過ぎると感じる層への応答として、Cal. B04を維持したまま44mmケースへ移植した派生群が追加された。AB042011系列はその44mm GMT版の総称である。
文字盤の組み合わせは、生産期間中に複数の選択肢が用意された。本Refが採るブラックアイブルーは、フラットな外周部と一段沈み込んだ正方形の中央部からなる二段構造を持ち、3つのインダイヤルは黒で抜かれる。同世代の派生としては、オニキスブラック(BB56)、メタリカブルー(C851)、ブラックアイグレー(F561)、シエラシルバー(G745)などの文字盤色が併売され、ブレスレットも本Refの375Aパイロットブレスのほか、ラバー(211S)、クロコレザー(743P)、カーフ(437X)などが選択肢として用意された。
2020年、ブライトリングはクロノマット全体を再設計し、シリーズは1980年代初頭の意匠を参照する方向へ転じた。これに伴いAB04世代の44mm GMT群は正規ラインナップから外れ、本Refを含むパイロットブレス仕様のクロノマット44 GMTは生産を終えたとされる。