「クロノマット」という名が背負うもの
クロノマットの名は、1941年に広告へ登場した計算尺付きクロノグラフにさかのぼる。chronograph と mathematics を掛けた造語であり、回転ベゼルの目盛で乗除算を行う発想は、のちのナビタイマーへと受け継がれた。ただし現在のクロノマットの意匠は、この初代とは直接つながらない。
設計言語の起点は1984年にある。1979年に経営権を得たアーネスト・シュナイダーは、自身も飛行家であり、1983年にイタリア空軍のアクロバット飛行隊フレッチェ・トリコローリ向けの時計を開発した。ブライトリング公式の説明によれば、隊員の風防がコックピットの天蓋枠に当たって傷つくのを見たシュナイダーは、ベゼル上に四つの突起を立てて風防を守る構造を考案したと伝わる。これが「ライダータブ」である。翌1984年、創業100周年に合わせて市販化されたクロノマットは、このタブと円筒リンクの「ルロー」ブレスレットを備え、石英全盛の時代に機械式クロノグラフを押し出した。