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A. LANGE & SöHNE · SERIES

Arkade

アルカーデ

ドレスデン王宮のアーケードに着想を得た、復活ランゲ唯一の女性向け角形シリーズ。1994年発表。

38 mm
01 — 概要 / SUMMARY

アルカーデは、1994年にA・ランゲ&ゾーネが復活第一弾として発表した四作のうち、唯一の非ラウンドケース・唯一の女性向けモデルである。ドレスデン王宮のアーケードに想を得たトノー形に近い22×29mmのケースに、ブランド初の角形ムーブメントCal. L911.4を収め、ビッグデイトを早期から備えた。1995年以降はダイヤモンドベゼル仕様、1997年にはホワイトゴールド、1999年にはプラチナへと派生し、2002年には大型化したグランド・アルカーデ(Grand Arkade)も加わった。2009年頃を境に主要リファレンスは生産を終え、現在は現行ラインから外れている。

02 — STORY · 物語

Arkade(アルカーデ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

復活の幕開けと、女性向けという問い

1990年12月7日、ヴァルター・ランゲは戦後に途絶えた家業の名を、東西ドイツ再統合後のグラスヒュッテで再登記した。ブランドの実質的な復興を指揮したのは、IWCやイエガー・ルクルトを率いた経験を持つギュンター・ブリュームライン。両者は約四年の準備期間を経て、1994年10月24日、ドレスデン王宮の屋根の下で四本の腕時計を世に問うことになる。

その中で、ある問いが残っていた。復活ランゲは、女性のためにどのような時計を提示するべきか。当時の高級女性向け時計は、宝石装飾と石英ムーブメントに頼る傾向が強かった。ブランドはここで、別の道を選ぶ。機械式・自社製キャリバー・大型日付という、男性向けと同じ語彙で女性向けを設計するという道である。その回答がアルカーデであった。

02

1994年10月24日、四つの時計

ドレスデン城内で行われた発表会で並べられたのは、ランゲ1、サクソニア、ツアーボン「プール・ル・メリット」、そしてアルカーデである。前三者がいずれもラウンドケースを採るなか、アルカーデだけが角形のケースを持っていた。四作はいずれも自社製キャリバー、ジャーマン・シルバーの四分の三プレート、金製のシャトン留めといったランゲ流の語彙を共有しつつ、それぞれが異なる読者に語りかけるよう設計されていた。

アルカーデが受け持ったのは、相対的に小さな手首のための、しかし機械として手を抜かない時計、という役割である。複雑機構の披露でも、男性的存在感の誇示でもない。控えめでありながら自社製の機構を備えた、というポジションだった。

03

ドレスデンの石を写したケース

アルカーデのケースは、寸法こそ22×29mm、厚さ8.7mmと控えめだが、輪郭は強い意思を持っている。垂直の長辺と、緩やかに弧を描く短辺。樽形に近いが、完全なトノーではない。この曲線の出自は、ドレスデン王宮中庭(シュタールホーフ)の石造アーケードに求められると伝わる。バロック都市ドレスデンの建築語彙を、腕の上に置き直したという解釈である。

ケースは三段構造で、外周のケースバンド、その内側のケースバックリング、そして上から覆うベゼル。これは同時期のサクソニアの構造とも通底しており、初期ランゲの「シリーズを越えた設計の統一」を見ることができる。ラグは細く面取りされ、鏡面に磨かれている。

04

形状ムーブメント Cal. L911

ダイヤルの内側には、ランゲにとって初の角形(フォルム)キャリバー、Cal. L911が収められた。25.6×17.6mmのプレートに、毎時21,600振動(3Hz)、約42時間のパワーリザーブ、30石。手巻き、ストップセコンド機構を備え、12時位置にビッグデイトを抱える。

ブランドを象徴することになるビッグデイトを、復活第一弾の女性向けモデルに早くも採用した点は注目に値する。発表時の主流仕様はCal. L911.4で、6時位置にスモールセコンドを持つ。同年に短期間だけ存在したCal. L911.2はスモールセコンドを省いた簡略版で、Ref. 104.001のみに搭載された。L911は同時期の初代サクソニアにも(ソリッドケースバック仕様で)転用されており、初期ランゲの基幹機構の一つを担った。

05

派生と宝飾化、そしてグランド・アルカーデ

1995年にダイヤモンドベゼルを纏ったRef. 801.001が加わり、1997年にはホワイトゴールド・青文字盤のRef. 103.007が登場、同年からはサファイア裏蓋の採用も始まる。1999年には黒文字盤×プラチナのRef. 103.035という重厚な仕様が、2005年には銀文字盤×プラチナのRef. 103.025が加わった。マザー・オブ・パールやブレスレット仕様の展開もこの時期に進む。

2002年には、ケースを29.5×38mmへ拡大したグランド・アルカーデ(Grand Arkade、Ref. 106系)が登場した。同じL911.4を、より大きなダイヤルに据え替えた格好で、5-7時および11-1時位置にローマ数字を補ったレイアウトを採る。標準アルカーデの抑制された比例とは別軸の解釈であった。

06

静かな退場と、その先

主要リファレンスの多くは2009年頃までに生産を終えた。販売の中心が円形ケースの複雑機構へ移ったこと、女性向け市場におけるランゲの立ち位置が限定的だったことが背景にあると伝わる。

ただしブランドはアルカーデの名を手放してはいない。Lange Uhren GmbHは2018年と2021年に「ARKADE」の商標を再登録しており、いずれかの形での復活の余地を残している。控えめな出自と、ランゲ唯一の角形ケースという独自性は、長い目で見たときにこのシリーズの評価を支える軸となっている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

アルカーデの設計を貫いているのは、「女性向けでも機械的妥協をしない」という方針である。1994年当時、高級女性向け時計は宝石装飾と石英機構に依存することが多く、機械式・自社製キャリバー・大型日付という男性向けの語彙で女性向けを構築すること自体が稀であった。アルカーデはそこに別解を出した一作である。

ケース形状は、トノーに近い角形だが、対称軸を中心とした緩やかな曲線を持つ。垂直の長辺と、弧を描く上下辺の対比が、ドレスデン王宮中庭の石造アーケードを連想させる輪郭をつくる。ケースバンド、ケースバックリング、ベゼルからなる三段構造は、同期の初代サクソニアと共通する造形語彙で、シリーズを越えた整合を示している。22×29mmという寸法は、手首に対して主張しすぎない比例を狙ったものだ。

ダイヤルでは、12時のビッグデイトが視覚的なアンカーとなる。ランゲのアイデンティティであるこの大型日付窓を、復活第一作の女性向けモデルに早くも組み込んだことは、設計上の自信の表明でもあった。ローマ数字インデックスと菱形(ロザンジュ)マーカー、6時のスモールセコンドが下半分の重心をつくり、上のビッグデイトと釣り合う。装飾を足すのではなく、要素を絞り、余白で構成を成り立たせている。

意匠決定として注目されるのは、宝石装飾が「標準」ではなく「派生」として位置づけられた点である。基幹となるRef. 103系は、装石なし・ローマ数字・三色のケース素材展開という、機械的な核を表に出した構成を採る。ダイヤモンドベゼル(Ref. 801系)やマザー・オブ・パール文字盤、ブレスレット仕様は、いずれもこの核の上に重ねられた選択肢として用意された。同時期に女性向け角形ケースの代表格であったジャガー・ルクルトReverso Damesや、宝飾と組み合わされたカルティエの角形コレクションと比較したとき、アルカーデは「角形+自社製機械」を中心軸に据えた点で輪郭を異にする。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1994-1995
Cal. L911.2
Ref. 104.001専用、スモセコ省略の簡略仕様。
1994-2009
Cal. L911.4
形状機・スモセコ・ビッグデイト搭載の主流仕様。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1994-1995

1994年・初代アルカーデ

103.001 104.001
イエローゴールド・ビッグデイト搭載の出発点。
1995-1997

ダイヤモンドベゼル派生

801.001
ダイヤモンドベゼルを纏った装飾的派生の起点。
1997-2002

ホワイトゴールド世代

103.007 103.021
ホワイトゴールド投入と展示裏蓋採用、仕上げを開示。
1999-2009

プラチナ・黒文字盤世代

103.035
黒文字盤×プラチナで重厚感を増した到達点。
2002-2005

グランド・アルカーデ

106系
29.5×38mmへ拡大した、シリーズ唯一の大型化派生。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive