ロレックス デイデイト
曜日を綴り、日付を添える——その窓の配置は、以後のカレンダー腕時計が倣う表示の定型となった。
概要
Overview1956年、ロレックスはオイスター パーペチュアル デイデイトを発表した。日付に加え、曜日を略さずフルスペルで表示する最初の腕時計とされる。文字盤の12時に曜日、3時に日付を配する。ケースは1945年のデイトジャストから受け継いだ36mmのオイスターで、自動巻のキャリバー1055を収めた。素材は18金か白金に限られ、専用のプレジデント ブレスレットも用意された。こうした性格が、デイデイトをブランドを代表するドレスウォッチに位置づけた。後年、各国の要人が手にしたことで『プレジデント』の通称が定着していく。
背景
Background1956年に至るまで、ロレックスはカレンダー表示を段階的に育てていた。出発点は1945年のデイトジャストである。自動巻のクロノメーターに日付窓を組み込み、3時位置に当日の日付を映すこの機種は、日付という実用的な機構を日常のドレスウォッチに収める路線を確立した。
もっとも、日付の次に求められたのは曜日だった。当時のカレンダー時計の多くは、曜日を頭文字や小窓の略号で示すにとどまっていた。曜日を略さず、語として読める形で文字盤に表示するには、幅の広い曜日ディスクと、それを送る新しい機構が要る。デイトジャストの延長線上では収まりきらない設計上の課題だった。
複雑機構の華やかさでは、パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンが先を行っていた。ロレックスが選んだのは、機構の数を競う道ではなく、毎日使えるカレンダー機構を貴金属の器に載せる方向である。デイトジャストで築いた信頼を土台に、その上位へ置く一本をどう仕立てるか——デイデイトはこの問いへの答えとして構想された。
出来事
The Event1956年、ロレックスはオイスター パーペチュアル デイデイトを発表した。文字盤の12時に弧を描く窓を設け、そこに曜日をフルスペルで表示する。3時位置には日付窓を置き、デイトジャスト同様にサイクロプスレンズを重ねた。曜日と日付は、いずれも深夜に切り替わる。
ケースは1945年のデイトジャストから受け継いだ36mmのオイスターで、ねじ込み式のツインロック リューズにより100mの防水を備えた。中身は自動巻のキャリバー1055で、文字盤にはゴールドの植字インデックスとドフィーヌ針を備えた。幅広の曜日ディスクを収めるため、ケースはやや厚みを増している。素材は18金(イエロー、ピンク、ホワイト)か白金に限られ、ステンレスは用意されなかった。
発表当初の型番は、滑らかなベゼルの6510とフルーテッドベゼルの6511である。ただし初期キャリバーは日付送りに難があり、両者の生産はおよそ1年にとどまった。1957年には改良型の6611が登場し、フリースプラングのマイクロステラ機構を得て、文字盤に『スーペラティブ クロノメーター オフィシャリー サーティファイド』の表記が加わる。
もう一つの要素が、この機種のために設計されたプレジデント ブレスレットである。半円形の三連リンクからなり、18金か白金でのみ作られた。初期にはジュビリー ブレスレットを合わせた個体も伝わるが、やがてプレジデントが象徴的な組み合わせとして定着していった。
意義
Significanceデイデイトの影響が広く及んだのは、その表示意匠である。12時に綴られた曜日、3時の日付という配置は、メーカーを問わずカレンダー腕時計の定型として受け入れられた。今日『デイデイト』が曜日と日付を併記する表示の一般的な呼称となっているのも、この配置が標準を築いたためである。
意匠のもう一つの核は、貴金属だけという割り切りにある。鋼を持たず金と白金に限ったことで、デイデイトは実用機ではなくドレスの装いとして輪郭を得た。多彩な文字盤色、石の有無、ベゼルの仕上げといった変化を受け止める器となり、地の文字盤は持ち主の表現の場となった。曜日表示は現在26の言語に対応し、装いに地域や個の色を添える。
そして『プレジデント』の通称である。名はまず専用ブレスレットに由来する。加えて各国の要人が手にしたことが、この像を強めた。よく語られるアイゼンハワーへの贈り物は、実際にはデイデイト発表前のデイトジャストだったと伝わる。在任中にデイデイトを着けた最初の大統領はリンドン・ジョンソンとされ、1966年には彼を起用した『大統領たちの時計』と題する広告も打たれた。権威の像と結び付いたこの意匠は、半世紀を越えて大きく形を変えずに受け継がれている。