系譜と歴史
ETA 2894-2という土台
Calibre 17は、TAG Heuerが汎用ムーブメントETA 2894-2に与えた呼称である。ETA 2894-2は1996年に登場し、TAG Heuerのクロノグラフにも採用されてきたとされる。構造は、薄型自動巻のETA 2892-A2を基盤に、クロノグラフ機構をモジュールとして上載せした「モジュール式」である。基盤側と計時側を分けて設計するこの方式は、同一のベースから多様な複雑機構を派生させやすい利点を持つ。TAG HeuerはETA系のベースにCalibre 7、Calibre 8など複数の呼称を与え、用途ごとに展開してきた。Calibre 17は、そのうちクロノグラフを担う系統にあたる。
グランカレラと「Rotating System」
2007年、TAG Heuerは1964年のカレラに連なる上位ラインとしてグランカレラを発表した。このコレクションの核となったのが、回転ディスク表示機構「Rotating System」である。従来のスモールセコンドやクロノグラフ計のように針で示すのではなく、目盛りを刻んだ円盤そのものを回転させ、固定された指標で読み取らせる。発想の源泉はGTレーシングカーのエンジンとダッシュボードにあるとされ、計器盤を思わせる視認性が狙いとされる。Calibre 17 RSは、この機構をクロノグラフに応用した系統である。3時位置にスモールセコンド、9時位置にクロノグラフ30分計を回転ディスクで配し、中央のクロノ秒針と組み合わせる。
RS・RS2・RS150の展開
グランカレラのクロノグラフは、複数の呼称で段階的に展開された。2007年には43mm径のCalibre 17 RS 43(CAV511系)が登場し、続いて2つの回転システムを前面に打ち出したCalibre 17 RS2(CAV518系)が2008年に加わったとされる。RS2はチタンのケースを採用したと伝わる。2010年のTAG Heuer創業150周年には、RS2を基とするRS150が登場し、各150本規模の特別仕様として欧州・英国向けに振り分けられたと伝わる。いずれも機構の核は、ETA 2894-2とRotating Systemの組み合わせを共有する。
グランカレラRSファミリーの中で
Rotating Systemはクロノグラフ専用の機構ではなく、グランカレラ全体を貫く設計言語であった。2針のCalibre 6 RS、GMTのCalibre 8 RS、そしてクロノグラフのCalibre 17 RSは、いずれもETA 2892系を土台とするとされる。例外は、Zenith El Primeroを基盤とする最上位のCalibre 36で、回転ディスクに加えて直線表示機構「Linear System」を備えたと伝わる。Calibre 17 RSは、この一群のなかで最も普及したクロノグラフ機構として位置づけられる。