4130
2000年、コラムホイールと垂直クラッチで進化した、ロレックス初の自社製クロノグラフ
Cal.4130は、2000年にロレックスが発表した初の自社製自動巻クロノグラフである。約5年の開発を経て、スチール製のコスモグラフ・デイトナRef.116520に初搭載された。毎時28,800振動 (4Hz)、44石、パワーリザーブ72時間。コラムホイールと垂直クラッチを組み合わせ、クロノグラフ秒針の飛びを抑える構造を特徴とする。一般的なクロノグラフより部品点数を抑えた設計で、信頼性と保守性を両立させた。Parachromヒゲゼンマイを初めて搭載したムーブメントでもある。2016年のRef.116500LNを経て、2023年の後継Cal.4131へ引き継がれるまで、デイトナの中核を担った。
| Maker | Rolex |
|---|---|
| Reference | 4130 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 44 石 |
| Power reserve | 72 h |
| Movement ⌀ | 30.5 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Small Seconds |
| Chronograph | Chronograph, Column wheel |
| Additional | Chronometer |
系譜と歴史
自社製クロノグラフへの道
デイトナは1963年の登場以来、長らく他社製のムーブメントに頼ってきた。初期の手巻モデルにはValjoux(バルジュー)72系が搭載された。1988年からは、ゼニスのEl Primero(エル・プリメロ)を基にした自動巻Cal.4030へ移行する。Cal.4030は、El Primeroに200を超える改変を加えたロレックス流の解釈であった。日付機能を省き、振動数を毎時36,000振動から28,800振動へ落とすなど、堅牢性と保守性を優先した設計である。ただし基幹部分は他社の設計に由来し、完全な自社製ではなかった。
5年の開発と機構の刷新
2000年、ロレックスはバーゼルワールドで初の自社製クロノグラフCal.4130を発表した。約5年の開発期間を経たこのムーブメントは、Ref.116520に初搭載された。最大の刷新は、クロノグラフの起動方式を水平クラッチから垂直クラッチへ改めた点にある。秒針が飛びなく始動・停止し、長時間の計測でも時刻精度への影響を抑える構造である。あわせて部品点数を削減し、信頼性と保守性を高めた。Ref.116520は、ロレックス独自のParachromヒゲゼンマイを初めて搭載したモデルでもある。
派生と後継
Parachromヒゲゼンマイは2005年、表面に酸化被膜を施した青色のParachrom Bleuへと進化する。この改良版は、2007年までに全デイトナへ広がった。2016年にはセラミック製ベゼルを備えたRef.116500LNが登場し、Cal.4130は現行ラインの中核を担い続けた。そして2023年、後継のCal.4131がRef.126500LNとともに発表される。4131は4130の構造を踏襲しつつ、エネルギー効率に優れたクロナジー・エスケープメントを採用した。ローターのボールベアリングも増やされている。基本設計の確かさゆえに、4131は革新ではなく洗練として位置づけられている。
技術解説
Cal.4130は自社製の自動巻クロノグラフで、直径30.5mm、厚さ6.5mm、44石、総部品数は201を数える。機構の核心は、クロノグラフ作動を司る2つの装置にある。
1つはコラムホイール(柱歯車)で、スタート・ストップ・リセットの動作を順序立てて制御する。もう1つは垂直クラッチで、クロノグラフ秒針への動力伝達を担う。一般的なクロノグラフが用いる水平クラッチ(横レバー式)では、起動時に歯車を横から噛み合わせる。このとき秒針が微小に飛ぶ「バックラッシュ」が生じやすい。垂直クラッチは2枚の円盤を上下に重ね、常時噛合した状態でクラッチにより断続させる。これにより秒針は飛びなく始動・停止し、長時間作動させても時刻精度に影響が及びにくい。
構成上の特徴は、部品点数の抑制にある。先代Cal.4030が分計と時計を別機構として左右に配置したのに対し、Cal.4130はこれを1つのモジュールに統合した。クロノグラフの調整も、従来5本のネジを要したところを1本で済む構成となった。機構を集約して生まれた空間に大型の香箱(ぜんまいを収める部品)を配し、パワーリザーブを72時間へ拡大している。香箱は約7時間で1回転する設計である。
調速機構には、ロレックス独自のParachrom(パラクロム)ヒゲゼンマイを採用する。ニオブとジルコニウムの合金から成る常磁性の素材で、磁気や温度変化の影響を受けにくい。従来の合金に比べ、衝撃への耐性が高いとされる。Parachromは金属系の合金であり、シリコン部品とは異なる経路で耐磁性を確保している点も特徴である。脱進機(ぜんまいの力を一定間隔で逃がす機構)は伝統的なスイスレバー式である。テンプ(調速を担う振動体)は毎時28,800振動 (4Hz)で時を刻む。4Hzは1秒あたり8回の振動を意味し、外乱への安定と精度の両立を図る周波数である。
クロノグラフ秒針を担う車には、LIGA(電鋳)で製造された部品が用いられる。バネ性を持たせた構造が始動・停止時の衝撃を吸収し、秒針の振れを抑える。自動巻にはボールベアリング式のローターを採用し、耐衝撃機構にはKIF(キフ)を備える。ローターは両方向の回転でぜんまいを巻き上げ、静粛性の高い巻き上げを実現する。仕上げは、受けに放射状のブラッシュ仕上げを施した堅実な構成である。全数がスイス公認クロノメーター検査機関(COSC)の認定を受ける。2015年以降は「Superlative Chronometer(高精度クロノメーター)」の規格が適用された。これはケーシング後の日差-2/+2秒を保証する基準である。