系譜と歴史
1. 自社製クロノグラフへの道
パテック フィリップは長らく、クロノグラフの基幹部にレマニア社のエボーシュ(半製品)を用いてきた。自動巻クロノグラフを完全自社開発するという課題に同社が回答したのが、2006年のRef.5960である。ここに初搭載されたCH 28-520 IRM QA 24Hは、同社初の自社製自動巻クロノグラフであった。年次カレンダー(Quantième Annuel、月の大小を自動判別し年1回の修正で済む暦)とクロノグラフを初めて束ねた点でも画期をなす。年次カレンダー自体は、同社が1996年にRef.5035で発明・特許化した機構であり、その蓄積がこのキャリバーに流れ込んでいる。
2. シールと素材の世代交代
初代のCH 28-520 IRM QA 24Hは、ジュネーブ・シール(ジュネーブの伝統的な品質認定)を帯びていた。金属製ヒゲゼンマイと5姿勢調整を備える、当時の高級機の標準的な構成である。2009年、同社は独自の品質基準であるパテック フィリップ・シールを制定し、ジュネーブ・シールから移行する。さらに2010年以降、CH 28-520系を含む主要キャリバーには、シリコン系素材Silinvarから成るSpiromaxヒゲゼンマイが導入された。耐磁性と温度安定性に優れるこの素材は、調速機構の精度基盤を刷新するものであった。
3. 5905への再編
2015年、CH 28-520 IRM QA 24Hからパワーリザーブ表示と12時間積算計を省いた派生が登場する。これがRef.5905に積まれたCH 28-520 QA 24Hであり、5960の後継機として位置づけられた。ダイヤル上部の弧に曜日・日付・月を配し、6時位置に昼夜表示付きの60分積算計を置く。複雑な情報を整理しようとする、同社の設計思想を映す構成である。2021年にはスチールケースのRef.5905/1Aが加わり、年次カレンダー・クロノを日常使いの領域へと広げた。CH 28-520系は、多様な派生を生む基幹系列でもある。このQA 24Hのほか、ワールドタイム版CH 28-520 HU、基本クロノのCH 28-520 Cなどが連なる。