系譜と歴史
1. 年次カレンダーという発明
年に一度だけ調整すればよい暦の機構は、1990年代まで時計師たちに見過ごされてきた。そう指摘するMonochromeによれば、パテック フィリップが1996年のバーゼルワールドで発表したRef.5035が、世界初の年次カレンダーの腕時計である。30日と31日の月を自動で読み分け、修正は2月末の年に一度で済む。うるう年と2月の日数までは追わない代わりに、永久カレンダーの複雑さと費用を避け、扱いやすさを得た機構である。この時計は新しい種類の複雑機構を生み、いまではA.ランゲ&ゾーネ、F.P.ジュルヌ、IWC、オメガなど多くのブランドが年次カレンダーを作っている。
5035が積んだのは、自動巻の基幹Cal.315に年次カレンダーのモジュールを重ねたCal.315 S QAで、その機構はセドリック・ファーグとフィリップ・バラを発明者とする特許に記されていた。Monochromeによれば、機構の原型は1991年、パテック フィリップがジュネーブの工科学校の最終学年の学生たちに与えた課題にさかのぼる。巻き上げやばねで動くレバーやラックを使わず、すべての機能を回転する部品で担わせるという課題であった。
2. 歯車で月の長さを読む
年次カレンダーの設計思想は、永久カレンダーとは異なる。永久カレンダーがジャンパーばね、カム、ラック、レバーの組み合わせで月の長さを扱うのに対し、パテック フィリップの年次カレンダーは、基幹と文字盤のあいだに置いた暦の地板に、ピニオン(小歯車)を持つ歯車を積み重ねて機能させる。1998年のRef.5036では月相が加わり、その精度は122年に1日の修正で足りるものとされた。以後、月相はパテック フィリップの年次カレンダーのほとんどに備わる特徴となった。
3. 324から26-330へ
年次カレンダーの基幹は、Cal.315から324へ、そして現行の26-330へと世代を重ねてきた。公式によれば、26-330は2019年に発表された324の発展形で、直径27mm、厚さ3.3mmの自動巻である。SJXは、2019年の週カレンダーRef.5212Aで26-330が初めて使われたと伝え、主な改良として、LIGAで作った秒針の駆動車と遊びを抑えるばね、精度を高めた秒針停止機構、そして一方向に巻き上げてもう一方では切り離す特許のクラッチ車を持つ新しい自動巻機構を挙げている。
4. 表示違いの二系統
公式の諸元では、26-330 S QA LUは曜日と月を針で、日付を窓で示し、4946、4947/1A、4948R、5261Rなどに載る。これとは別に、曜日・日付・月を窓に並べ24時間表示を加えた26-330 S QA LU 24Hがあり、5396やノーチラス 5726、5205などに使われている。24Hの版は部品が339点に増える。