240 LU CL C
薄型自動巻Cal.240を母体に、回転する天空図と月相、そして中央針による日付を宿したパテック フィリップの天文系キャリバー
Cal.240 LU CL Cは、パテック フィリップが薄型自動巻Cal.240を母体に天文表示を組み込んだ自動巻キャリバーである。1977年登場の基幹機を土台とし、22K金製の偏心マイクロローターで巻き上げる。振動数は21,600vph (3Hz)、パワーリザーブは38〜48時間、45石を備える。文字盤側では3枚のサファイアディスクが重なって回り、北半球の天空図、月相と月の運行、そして中央針による日付を示す。Celestial Ref.6102やRef.6104、Only Watch 2009のRef.5106に搭載される。
| Maker | Patek Philippe |
|---|---|
| Reference | 240 LU CL C |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 21,600 bph (3 Hz) |
| Jewels | 45 石 |
| Power reserve | 48 h |
| Movement ⌀ | 38 mm |
| Hands | Hours, Minutes |
| Date | Date |
| Astronomical | Moonphase, Sky chart |
系譜と歴史
1. 薄型自動巻という母体
Cal.240 LU CL Cの出発点は、1977年に発表された基幹キャリバーCal.240である。クォーツ危機のただ中、パテック フィリップはゴールデン エリプス向けに、極限まで薄い自動巻を投入した。鍵は偏心配置のマイクロローター(小径の回転錘)にある。錘を地板の厚みの中へ沈め込むことで、全体の厚さを2.53mmに抑えた。錘は慣性を補うため22K金で作られ、片方向のみで巻き上げる。この設計は、1960年以来の全回転式Cal.27-460を1985年に退役させ、以後の薄型自動巻の基盤となった。
2. 天空表示への発展
Cal.240が長く支持された理由は、複雑機構の土台として拡張しやすい点にある。地板を架け替えることで、年次カレンダーやワールドタイム、そして天文表示へと姿を変えてきた。回転する星図を載せる系譜は、Celestialに先立つSky Moon Tourbillonに遡る。その複雑機構(Cal. R TO 27 QR SID LU CL)で培われた天文表示の発想を、薄型自動巻へ移したものである。着想を引き継ぎ、2002年に登場したのがCelestial Ref.5102と、これを駆動するCal.240 LU CLである。このRef.5102はジュネーブ時計グランプリで最高賞「金の針」に選ばれたと伝わる。続いてパテック フィリップは、外周の日付目盛りを指す中央針を加えた。型番のLUは月相(Lune)、CLは天空図(Céléstial)、Cは日付(Calendrier)を表す。これら三つを一枚の地板上に束ねたのが、本機Cal.240 LU CL Cである。Only Watch 2009のRef.5106を経て、量産モデルRef.6102、近年のRef.6104へと展開された。
3. 天文時計の系譜のなかで
回転する天空図を備える腕時計は、製造の難度が高く、量産例は限られる。同時代には各社が天体表示や月相に取り組んだが、星図を薄型の自動巻機に載せた点に、本機の個性がある。仕上げの認定も時代とともに移った。初期のCelestialはジュネーブシールを帯びたが、2009年以降の個体はパテック フィリップ・シールを刻む。基幹のCal.240が半世紀近く現役を保つ事実は、薄さと拡張性を両立させた母体の完成度を物語る。
技術解説
Cal.240 LU CL Cは、基幹Cal.240の薄型自動巻機構に、天文表示モジュールを重ねた構成を取る。直径は38mm、厚さは6.81mmで、直径27.5mm・厚さ2.53mmの基幹機より大ぶりな専用地板を用いる。これは複層の天空図ディスクを収めるための拡張である。
巻き上げは22K金製の偏心マイクロローターが担う。回転錘を地板の内側へ沈めることで全高を抑え、薄型を保つ。金は比重が大きく、小径でも巻き上げ効率を確保しやすい。
調速にはジャイロマックステンプを採用する。テンプのリムに配した可変ウェイトで慣性モーメントを微調整する自由テンプ(緩急針を持たない方式)で、調整位置を絞り込める。ヒゲゼンマイ(テンプの往復を司る渦巻ばね)にはシリコン系のスピロマックスを組み合わせる。シリコン系のヒゲは磁気の影響を受けにくく、温度変化にも比較的安定する。振動数は21,600vph (3Hz)で、これはテンプが毎秒3回往復する速さに当たる。近年広く用いられる4Hz(28,800vph)より低い設定である。低速の調速は香箱(ぜんまいを収める容器)の負荷を抑える。これが45石の輪列とともに、38〜48時間のパワーリザーブを支える。
天文表示は、文字盤側に重ねた3枚のサファイアディスクで構成される。各ディスクの厚みは0.2mm以下に抑えられる。最下層は青いサファイアの背景ディスクで、月用の開口を持ち、279枚の歯を刻む輪で駆動され、月の運行を再現する。その内側の小ディスクは遊星歯車を介して連動し、月の満ち欠けを開口内に映す。最上層は透明なサファイアで、表側に星図、裏側に天の川を描き、356枚歯の輪で回る。これらを覆う風防の裏には楕円の縁取りが刻まれ、ジュネーブから見える空の範囲を切り取る。
星図は恒星日(約23時間56分)に近い周期で回り、星々の見かけの運行を映す。最も明るい恒星シリウスと、月の子午線通過の時刻も読み取れる。中央には先端を太陽形とした針が伸び、外周の目盛りで日付を指す。これが型番末尾のC(Calendrier)が示す要素である。
仕上げと品質の認定はパテック フィリップ・シールに準拠する。これはかつてのジュネーブシールに代わり、2009年以降のパテック フィリップ製ムーブメントに用いられる基準である。天文モジュールは基幹機の上に独立して組まれ、薄型の母体を保ったまま機能を拡張できる。部品点数は315点に及び、薄型の母体に天文機構を収めた密度の高い設計となる。