系譜と歴史
オクタの誕生
1999年に独立時計師としてブランドを構えたフランソワ=ポール・ジュルヌは、2001年、自身初の自動巻ムーブメントとしてオクタを発表した。設計には3つの目標が据えられた。クロノメーターと呼べる高精度、長大な動力貯蔵、そして装着者のわずかな動きでも巻き上がる効率である。なかでも特徴的なのは、複雑機構を変えても同一のケース径を保つという設計思想であった。オクタは大きな日付表示を備えた最初の自動巻として登場し、以後のブランドの中核を担うこととなる。
三世代の歩み
オクタの基幹キャリバーは、20年あまりの間に大きく3つの世代を経た。2001年の初代1300はロジウム被覆の真鍮製で、両方向巻き上げを採用していた。2004年頃、地板とブリッジが18Kローズゴールドへと改められ、これが第2世代の1300.2となる。そして2007年、巻き上げ方式が片方向へと変更され、現行の1300.3が生まれた。この変更には逸話が伝わる。机に向かう仕事で右手をあまり動かさない友人の時計が、十分に巻き上がっていなかった。ジュルヌはこの観察から、座り仕事の装着者でもゼンマイを素早く張れる片方向巻きへと舵を切ったとされる。
派生プラットフォームとしての広がり
オクタの真価は、単一の土台から多様な複雑機構を生み出す柔軟性にある。同じ寸法の機械を母体に、パワーリザーブ表示、ムーンフェイズ、年次カレンダー、永久カレンダー、クロノグラフ、第二時間帯表示といった派生が展開された。本稿が扱う1300.3 NODは、そのうち中央時分と日付を備えた端正なオクタ・ディヴァイン(Nouvelle Octa Divine)に対応する仕様である。長時間駆動の自動巻を、複雑機構ごとにケースを変えずに成立させる発想は、同時代の他社が微動ローターや全回転ローターで挑んだ課題に対する、ジュルヌ独自の回答であった。ジュルヌが地板までも金で作る道を選んだのは、精度と耐久を長期にわたり保つためである。