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ZENITH · SERIES

Chronomaster Sport

クロノマスター スポーツ

1/10秒を計測する高振動キャリバー、エル・プリメロを、セラミックベゼルの現代的スポーツクロノグラフへ再構成した系譜。

41 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Chronomaster Sportは、2021年にZenithが発表したスポーツクロノグラフのシリーズである。1969年以来の高振動キャリバー、エル・プリメロを基盤とし、現行のCal. 3600は毎時36,000振動 (5Hz) で1/10秒の計測を可能にする。スチールとブラックセラミックの初代に続き、グリーンセラミック、チタン、ローズゴールド、ホワイトゴールドのRainbow、そして2026年のSkeletonへと派生が広がった。三色のサブダイヤルに往年のエル・プリメロの意匠を受け継ぎつつ、ベゼル上に1/10秒目盛を備える点が、このシリーズの機能的な核となる。

02 — STORY · 物語

Chronomaster Sport(クロノマスター スポーツ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

エル・プリメロという前提

Chronomaster Sportを語るには、まず1969年に立ち返る必要がある。この年、複数のメーカーが自動巻クロノグラフの実用化を競った。Zenithが「El Primero(スペイン語で『最初の』)」と名付けたCal. 3019 PHCは、そのひとつである。Seikoの6139、複数社の共同開発によるCal. 11も同年に登場しており、どれが真に最初かは今も議論が残る。

ただしエル・プリメロには固有の特徴があった。一体型の自動巻でありながら、毎時36,000振動 (5Hz) という高振動を実現し、1/10秒単位の計測を可能にした点である。三色のサブダイヤルを備えたRef. A386は、後年のChronomaster Sportの意匠の源流とされる。

1970年代、クォーツの台頭を受けて親会社はムーブメント製造の停止を決め、エル・プリメロの工具や設計図は処分の対象となった。これに抗ったのが時計師シャルル・ヴェルモである。彼は工具やカム、設計図を密かに屋根裏へ保管したと伝わる。1980年代に機械式時計が復権するとこの遺産が生き、Zenithはエル・プリメロの生産を再開した。1988年から2000年まで、Rolexがデイトナの自動巻に改良版のエル・プリメロを採用していた時期があったことも、後年の系譜を語るうえで欠かせない。

02

2021年、スポーツへの再定義

Chronomaster Sportが登場したのは2021年である。Chronomasterの名は1994年から続くが、「Sport」はその現代的なスポーツ版として独立した。中核には、量産化されたCal. 3600が据えられた。この機械は2019年、エル・プリメロ50周年の記念モデルで原型が公開され、二年を経て常用キャリバーとなった。

初代はスチールケースに二種の文字盤で発表された。ブラックダイヤルのRef. 03.3100.3600/21.M3100と、シルバーの文字盤を持つRef. 03.3100.3600/69.M3100である。41mm径、100m防水 (10気圧)、毎時36,000振動 (5Hz)、約60時間のパワーリザーブ。最大の特徴は、従来は文字盤にあった1/10秒目盛を、ブラックセラミックのベゼルへ移したことにある。

ケースのプロポーションやポンプ式プッシャー、三連ブレスレットは、Rolexデイトナとの類似がしばしば指摘された。かつてエル・プリメロがデイトナを動かした歴史を思えば、その近さは皮肉でもあり、必然でもある。

03

素材とカラーの拡張

発表から数年で、Chronomaster Sportは派生の幅を急速に広げた。2024年には、グリーンセラミックベゼルのスチールモデル、メテオライト文字盤と宝石をあしらったローズゴールドモデルが加わった。同年にはチタン製も登場し、約105gという軽さと、マットなグレーの単色的な表情で、シリーズに新たな性格を与えた。

2025年のRainbowは、ホワイトゴールドのケースにサファイアのグラデーションを配した宝飾的な一本で、シリーズ初のホワイトゴールドケースとなった。スチールの実用品から貴金属の宝飾時計まで、同じ設計言語が一貫して通っている点に、このシリーズの懐の深さがうかがえる。

04

2026年、スケルトンとゼンクラスプ

2026年、Zenithはシリーズ5周年に合わせ、Watches and WondersでChronomaster Sport Skeletonを発表した。スモークサファイアの文字盤からCal. 3600の機構が透けて見え、10秒で文字盤を一周するクロノグラフ秒針の動きを直接眺められる構成である。スチールはブラックとグリーンのセラミックベゼル、ローズゴールドはラバーストラップ仕様と宝石付きベゼルの限定など、複数の構成が用意された。

同時に導入されたのが、Zenclaspと名付けられた微調整クラスプである。工具なしで10mmの範囲を2.5mm刻みで調整でき、2021年以降の既存モデルにも後付けできるとされる。意匠ではなく装着感という、地味だが実用的な部分での進化であった。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Chronomaster Sportの設計を貫く中心思想は、ベゼルを装飾ではなく機能の表示面として使うことにある。エル・プリメロCal. 3600は毎時36,000振動 (5Hz) で駆動し、中央のクロノグラフ秒針は10秒で文字盤を一周しながら1/10秒を計測する。その針が指し示す先として、ブラックセラミックのベゼルには10分割の1/10秒目盛が刻まれた。多くのスポーツクロノグラフがベゼルにタキメーターを置くのに対し、このシリーズはベゼルをムーブメントの高振動と直結させている。

文字盤に目を移すと、三色のサブダイヤルが据えられている。これは1969年のRef. A386以来のエル・プリメロの視覚的な記号であり、シリーズの出自を一目で伝える。ただしSportでは重なりを避け、間隔をとって配置することで視認性を優先した。ロジウムカラーの針とインデックス、適度なコントラストも、計測機としての読み取りやすさという一貫した方針に沿う。

41mm径のケース、ポンプ式プッシャー、三連ブレスレットという構成は、スポーツクロノグラフの共通語彙であり、Rolexデイトナとの近さがしばしば話題となる。両者の差は、ベゼルの役割に表れる。デイトナのタキメーターが速度算出のための目盛であるのに対し、Sportのベゼルは自社キャリバーの1/10秒計測を読むための目盛である。同じ外形の語彙を用いながら、機能の起点が異なる。

このシリーズの強さは、設計言語の一貫性と、それを載せる土台としての汎用性の両立にある。ケースのプロポーション、ベゼルの機能、三色のサブダイヤル、そしてCal. 3600という核を保ったまま、セラミックの色、チタンや貴金属の素材、スケルトン化といった変奏を重ねてきた。2026年のZenclaspは、その方針を装着感の領域へ広げた一歩といえる。変えない核と、変えてよい表層を区別する判断が、5年という短い歴史の中でシリーズの輪郭を保っている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2019
El Primero 3600(試作)
50周年記念モデルで初公開された原型世代。
2021-現在
El Primero 3600
コラムホイール式、毎時36,000振動 (5Hz)。
2026-現在
El Primero 3600(オープンワーク)
地板を開放した透視仕様。機構を可視化。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2021-現在

初代スチール

03.3100.3600 21.M3100 69.M3100
ブラックセラミックベゼルに1/10秒目盛、Cal. 3600を量産化した起点。
2024

素材展開期

グリーンセラミック チタン RGメテオライト
色セラミック・チタン・貴金属へ拡張し、宝飾仕様も加わる。
2025

ホワイトゴールド初採用

Chronomaster Sport Rainbow (WG)
サファイアのグラデーションを纏う、シリーズ初のホワイトゴールド。
2026-現在

スケルトン世代

03.3130.3600 系 ほか
Cal. 3600を開放したスケルトン、Zenclasp採用で装着感も刷新。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive