設計思想
160周年が呼んだ青
2025年、Zenithは創業160周年を迎えた。この年の同社はコレクション全体で青を主題に掲げ、Watches and Wondersでは青セラミックのクロノグラフ群やG.F.Jを披露している。クロノマスター オリジナルにブルー文字盤が加わったのは、その流れを受けた2025年6月のことである。1969年のA386を出発点とするこのラインにとって、青は初めて採用される文字盤色となった。
白・黒に続く三番目の文字盤
クロノマスター オリジナルは、2021年に銀(白)文字盤で登場した。A386の後継として38mmケースとトリコロールカウンターで往年の意匠を再現しつつ、機械には最新世代のEl Primeroを積む構成である。2023年には黒のトリコロール文字盤が加わり、ラインは白と黒の二択となった。本機の03.3200.3600/52.M3200は、そこへ三番目の色として青を持ち込んだ位置づけにある。ケースとムーブメントは白・黒と共通で、変わったのは文字盤の色とその周辺の配色だけである。
トリコロールと青の距離
Zenithにとって青いEl Primero文字盤は初めてではない。1971年のA3818、通称「カバーガール」をはじめ、青文字盤は同社の歴史に断続的に現れてきたとされる。本機の紺青は160周年の主題であると同時に、その系譜に連なる選択でもある。白や黒の地ではトリコロールの三色が際立つのに対し、地そのものが青になることで三色の見え方が変わる。色を替えるだけで信号の出方が動く点に、この派生Ref固有の面白さがある。
意匠分析
クロノマスター オリジナルのケースとムーブメントは文字盤色を問わず共通であり、本機の固有性は文字盤と配色に集約される。
地となるのはサンレイ仕上げの紺青文字盤である。光の角度で濃淡が動く放射状のヘアラインに対し、3つのカウンターはスネイル(渦巻き状)仕上げで質感を分ける。9時のスモールセコンドは銀、6時のクロノグラフ60分計は灰、3時のクロノグラフ60秒計は青。白文字盤や黒文字盤ではこの三色が地から明確に浮くが、地が青になった本機では3時の青いカウンターが文字盤に溶け込み、トリコロールの主張がわずかに穏やかになる。
配色は文字盤色に合わせて統一されている。外周の1/10秒スケールは青、4時半の日付窓も地を青で揃えて白い数字を置く。針はラインを通じて共通で、夜光を仕込んだ黒インサート入りの白いバトン針と、赤い中央クロノグラフ秒針が紺青の地にコントラストをつくる。植字のファセット付き夜光インデックスやヴィンテージ調のロゴ・書体は、A386の意匠をそのまま受け継ぐ。
ケースは1969年のA386をデジタルスキャンして寸法を起こした38mm径で、傾斜したプロファイル、鋭いファセットのラグ、ポンプ式プッシャー、薄いベゼルを備える。面ごとに放射ヘアラインとポリッシュを切り替える仕上げも往年通りである。12.9mmのケース厚のうち約1.5mmはドーム型サファイアクリスタルが占め、数値ほどの厚みは感じさせない。裏蓋のサファイアからは、青いコラムホイール(柱状の制御部品)とオープンワークのブリッジ、五芒星をかたどった肉抜きローターが覗く。
系譜と歴史
03.3200.3600/52.M3200が発表されたのは2025年6月、Zenith創業160周年の年である。同年のZenithは青を主題に掲げており、Watches and Wondersで披露した青セラミックのクロノグラフ群やG.F.Jに続く形で、クロノマスター オリジナルにも初のブルー文字盤が用意された。Watches and Wonders会場での発表ではなく、年央の単独発表であった。このRefはレギュラーコレクションに加わり、限定生産ではない。スティールブレスレットを組み合わせる本機 (/52.M3200) と、ブルーのカーフストラップ仕様 (/52.C910) が用意され、いずれも納品時にブレスレットとストラップの双方が付属するとされる。ラインとしては2021年の銀文字盤、2023年の黒トリコロール文字盤に続く三番目の文字盤色にあたる。本稿執筆時点で生産終了の告知はなく、現行モデルである。