本文へ
TUDOR · SERIES

Black Bay Chronograph

ブラックベイ クロノグラフ

ブラックベイの意匠と、ブライトリング協業による自製キャリバーが出会った、チューダー初のダイバーズ・クロノグラフ

01 — 概要 / SUMMARY

2017年のバーゼルワールドで発表されたチューダー ブラックベイ クロノグラフは、200m防水のダイバーズウォッチとして定着したブラックベイ・コレクションに、初の自製クロノグラフ機構を融合させたシリーズである。搭載されるキャリバーMT5813は、競合関係にあったブライトリングとの技術協業から生まれた一台で、業界に静かな衝撃を与えた。現行ラインナップは、パンダ/逆パンダの定番、ツートーンのS&G、そして近年加わったピンク、ブルー、フラミンゴ・ブルー、F1チームの配色をまとうカーボン25・26、2026年の39mm「バンブルビー」へと枝分かれし、ツールウォッチの骨格を保ちながら表現の幅を広げている。

02 — STORY · 物語

Black Bay Chronograph(ブラックベイ クロノグラフ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

「自製クロノグラフ」という長く未踏の領域

チューダーのクロノグラフ史は、1970年のRef. 7031/7032「オイスターデイト・クロノグラフ」、通称「ホームプレート」から始まる。続いて1971年に第二世代「モンテカルロ」、1976年にブランド初の自動巻クロノグラフとなる第三世代「ビッグブロック」が登場した。これらのシリーズに共通する事実は、すべて外注ムーブメント──ヴァルジュー7734、234、7750──に依存していたという点である。

姉妹ブランドであるロレックスがCal. 4130によってデイトナの自製化を完了させたのとは対照的に、チューダーは長く「自製クロノグラフ・キャリバー」を持たなかった。2010年に再始動した「ヘリテージ・クロノ」(Ref. 70330N) も、ETA 2892にデュボア・デプラのモジュールを載せた構成である。自製化は、長く先送りされてきた宿題であった。

02

2017年バーゼル、Ref. 79350の登場

2017年のバーゼルワールドで、チューダーは「ブラックベイ クロノ」(Ref. 79350) を発表する。41mmのスチールケース、200m防水、固定式タキメーターベゼル、ねじ込み式リュウズとプッシャー、そしてダイバーズの象徴であるスノーフレーク針。ブラックベイ・コレクションが2012年以来築いてきた意匠を、クロノグラフという新たな器に注ぎ込んだ一本である。

ただし発表会場では戸惑いの声も上がった。これはダイバーズなのか、クロノグラフなのか。タキメーターベゼルとダイバーズの組み合わせには歴史的な整合性がないという指摘も少なくなかった。チューダーの答えは明快だった──両方である、と。

03

キャリバーMT5813、競合との協業

最も大きな話題は、新型キャリバー「MT5813」だった。「MT」は「マニュファクチュール・チューダー」の略だが、その実体はブライトリングのB01をベースに同社が製造する構造であり、チューダーはこの事実を当初から開示した。コラムホイールと垂直クラッチ、70時間パワーリザーブ、毎時28,800振動 (4Hz)、シリコン製ヒゲゼンマイ、COSCクロノメーター認定。現代の上位クロノグラフが備える要素を一通り押さえている。

特徴的なのは45分積算計の採用である。通常の30分計と異なり、これはチューダーが意匠面でB01から逸脱した数少ない部分のひとつであり、シリーズのアイデンティティとなった。引き換えにブライトリングは、チューダーの三針キャリバーMT5612をベースとした「B20」を獲得した。Swatchグループへの依存を脱したい中堅ブランドどうしの、極めて実務的な技術交換であった。

04

2019年、シリーズの幅が広がる

2019年、シリーズは初めての派生を得る。ひとつはツートーン仕様の「ブラックベイ クロノグラフ S&G」(Ref. 79363N)、もうひとつはニュージーランド代表ラグビーチーム「オールブラックス」をテーマにした「ブラックベイ クロノグラフ ダーク」(Ref. 79360DK) である。後者は黒いコーティングを施したケースとブレスの黒一色の仕上げで、1903年の創設から2019年初めまでにオールブラックスに加わった選手数(1,181)を本数とし、新たな選手が加わるごとに本数が増える限定企画となった。特定の組織向けではなく一般に販売された、チューダー初の限定版でもある。

05

2021年、Ref. 79360Nへの世代交代

2021年、シリーズは大きな世代交代を迎える。リファレンスは79350から79360Nへと移行し、定番のダイヤルはパンダ (M79360N-0002) と逆パンダ (M79360N-0001) の対構成となった。ケースは2019年のダークとS&Gで先に採用された薄型のものとなり、スティールだったベゼルには黒いアルミのインサートが加わって、レーシング・クロノグラフの趣が強まった。

このタイミングはチューダー初代クロノグラフから50周年に当たり、シリーズが「ブラックベイの一バリエーション」から、独立した系譜として確立されたことを内外に示す節目となった。

06

「Daring Watches」へ — 色と素材の冒険

2024年以降、シリーズは新たな性格を加える。「Daring Watches」を掲げるチューダーは、まず2024年3月に「ブラックベイ クロノ ピンク」(M79360N-0019) を発表。デヴィッド・ベッカムが関わるインテル・マイアミCFのチームカラーを思わせる異色作で、限定ではないものの「ごく少数しか作られない」とされ、シリーズで初めて5連のジュビリー風ブレスレットを採用した。同年8月には、ブティック限定で「チューダー・ブルー」のパンダ文字盤と、T-fitクラスプ付きの5連ブレスを備えたブルーが続いた。

2025年1月には「フラミンゴ・ブルー」(M79360N-0024)、続く5月にはF1チーム「ヴィザ・キャッシュアプリRB」との協業から、カーボン複合素材のケースとレジスターを持つ「カーボン25」(2,025本限定) が登場した。翌2026年には「カーボン26」が続き、6月にはケースを39mm・約13mm厚へ縮めた「ブラックベイ クロノ 39 バンブルビー」も加わって、シリーズは“ツールウォッチ”の枠を越えてレーシング・クロノグラフの領域へと足を伸ばしている。

2017年に「両方である」と答えた一本は、いまや色彩・素材・物語の幅を備えた一族となった。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ブラックベイ クロノグラフの設計思想は、シリーズ名そのものが示すとおり、二つの異なる伝統を一本のケースに収めるという課題から始まる。チューダーの選択は折衷ではなく、両者の語彙をそのまま重ねるというものだった。

ケース構造はブラックベイの語彙に従う。41mmの低めのプロポーション、研磨と艶消しを併用したラグ、内側に向かって落ち込む一体感のあるラグ形状。これらは2012年以来のブラックベイの形式に忠実である。一方でリュウズとプッシャーはねじ込み式とされ、200m防水を保ったまま2時位置と4時位置に立てられた。固定式のタキメーターベゼルはダイバーズベゼルとは性格を異にするが、ねじ込みプッシャーと組み合わせることで「水中でも安全に止められるクロノグラフ」という独自の機能像を立ち上げている。

意匠言語の中心は、1969年に登場したチューダーのダイバーズに由来する角ばった「スノーフレーク」針である。文字盤には3時に45分積算計、9時にスモールセコンドを置き、6時に日付窓を収める。外周は分目盛りではなく、毎時28,800振動に合わせた1/4秒の目盛りとなった。45分計という選択は、ベース機構であるブライトリングB01の30分計から離れた数少ない判断のひとつで、シリーズの識別子として機能している。

文字盤上の6時側の赤い表記、雪の結晶を思わせる針、太いリュウズ。ダイバーズの記号は維持される一方、ねじ込みプッシャー、タキメーター、二つの積算計はクロノグラフの記号を担う。意図的に裏蓋は密閉式とされ、MT5813の意匠は外からは見えない。装飾を背負わせない選択は、競合のオメガ シーマスター クロノグラフやブライトリング スーパーオーシャン クロノグラフが取る方向性とは対照的で、内部の見せ方より外形のバランスを優先するブラックベイの姿勢を貫いている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2017-現在
Cal. MT5813
Breitling B01派生、Tudor仕様、70時間PR。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2017-2021

初代BB Chrono

79350
Baselworld 2017、41mm、Cal.MT5813、45分計と小秒を3-9に配置。
2019-2021

S&Gとdark追加

79363N (S&G) 79360DK (Dark)
S&Gと1,181本限定のDark、薄型ケースを先行採用。
2021-現在

Panda dial化

79360N
50周年でパンダ/逆パンダ化、黒アルミのベゼルインサート。
2024-現在

色と素材の展開

Pink Blue Flamingo Blue Carbon 25・26
5連ブレスとT-fit、カーボン複合ケースの限定。
2026-現在

39mm化

Black Bay Chrono 39
39mm・約13mm厚、MT5813を維持した「バンブルビー」。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Watches - Tudor 公式 · Tudor · 2026.08.15 閲覧 Tudor · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Introducing: The new Tudor Black Bay Chrono Flamingo Blue 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.12 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.12
  3. 03 専門メディア Review - Tudor Heritage Black Bay Chrono M79350 (Specs & Price) 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.12 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.12
  4. 04 専門メディア Hands-On: Tudor Black Bay Chrono Dark Limited Edition 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
  5. 05 専門メディア Tudor Introduces the Black Bay Chrono Blue 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
  6. 06 専門メディア Tudor Introduces the Black Bay Chrono “Carbon 25” 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
  7. 07 専門メディア Tudor Introduces the Black Bay Chrono “Panda” 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
  8. 08 専門メディア Tudor Introduces the Limited Production Black Bay Chrono “Pink” 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
  9. 09 専門メディア Tudor Scales Down Black Bay Chrono with the “Bumblebee” 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.12 閲覧 SJX Watches · 2026.10.12
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive