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TUDOR · SERIES

Black Bay 68

ブラックベイ 68

Black Bay のサイズ展開を43mmまで広げた最大径のダイバー。名はスノーフレーク針が生まれた1968年に由来する。

43 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Black Bay 68 は、Tudor が2025年に発表したダイバーズウォッチである。37mm の Black Bay 54、39mm の Black Bay 58、41mm の標準 Black Bay に続き、ケース径43mm でシリーズのサイズ展開を最上段まで広げた。文字盤はサンブラッシュ仕上げの Tudor Blue とシルバーの2種、針はブランドの象徴であるスノーフレーク、防水は200m。搭載するキャリバー MT5601-U は METAS のマスター・クロノメーター認定を受け、見た目の存在感だけでなく精度と耐磁性でも上位規格に踏み込んだ一本である。

02 — STORY · 物語

Black Bay 68(ブラックベイ 68)、これまでの軌跡

The story of this series
01

「大きいBlack Bay」という選択

2010年代後半以降、機械式時計では小径化が一つの潮流となっていた。Tudor も、2018年の Black Bay 58 で39mm、2023年の Black Bay 54 で37mm と、ダイバーのケース径を段階的に下げてきた。その流れに対し、2025年の Watches and Wonders で発表された Black Bay 68 は、逆に43mm という大柄なケースを選んでいる。

Tudor がこの判断に掲げた理由は明快である。あらゆる手首に合うサイズを揃える、というものだ。37mm の Black Bay 54、39mm の Black Bay 58、41mm の標準 Black Bay、そして43mm の Black Bay 68。これによりシリーズのダイバーは、小径から大径までの段階を一通り備えることになった。

Black Bay 自体は2012年に登場し、2015年には自社製ムーブメントを得て、Tudor を再定義する柱へと育った系譜である。Black Bay 68 は、その上に新しい意匠を足した時計ではない。確立された設計言語を、最も大きな寸法へ素直に展開した一本である。

02

1968年という名

Black Bay の近年のモデルは、Tudor の歴史上の年号を名に冠してきた。54 は最初のダイバー Ref. 7922 が登場した1954年、58 は200m防水を実現した Ref. 7924 の1958年を指す。では68は何を指すのか。

Tudor の説明によれば、1968年は同社がスノーフレーク針を構想した年である。この針が市販モデルに現れたのは翌1969年、第2世代の Tudor サブマリーナ Ref. 7016(時分秒)と Ref. 7021(日付つき)からだった。四角い夜光インデックスと、先端に菱形の夜光面を持つ独特の針。その形が雪の結晶を思わせることから、収集家は「スノーフレーク」と呼ぶ。

スノーフレークは、フランス海軍(Marine Nationale)の潜水士が求めた視認性を背景に開発されたと伝わる。暗く濁った水中でも時刻を読み違えないよう、夜光面積を広げた設計である。当時の Ref. 7016/7021 は39mm・200m防水のロレックス署名ケースを持ち、Tudor として早くから青文字盤を選べたモデルでもあった。

この針はやがて、親会社ロレックスとは異なる Tudor 独自の顔として定着し、現行の Black Bay にも受け継がれている。Black Bay 68 が名に68を選んだのは、その視認性の思想が芽生えた起点を指し示すためである。文字盤に冠した Tudor Blue という青も、こうした記憶に連なる色といえる。

03

マスター・クロノメーターという中身

Black Bay 68 のもう一つの要点は、搭載キャリバー MT5601-U が METAS(スイス連邦計量・認定局)のマスター・クロノメーター認定を受けている点にある。この規格は、まず COSC のクロノメーター認定を前提とし、その上でケースに収めた完成状態での精度、15,000ガウスまでの耐磁性、防水、パワーリザーブまでを検査する。日差は0〜+5秒の範囲に収めることが求められる。

MT5601-U は毎時28,800振動 (4Hz) で駆動し、約70時間のパワーリザーブを持つ。シリコン製のひげぜんまいを採用し、可変慣性テンプは2点で固定する横断ブリッジが支える。タングステン製の一体ローターは肉抜きされ、双方向に巻き上げる。基となる MT5601 は Black Bay Bronze や41mm の Black Bay に積まれてきた口径33.8mm の自社製キャリバーで、末尾の「U」はその METAS 適合版を意味する。

Tudor は近年、コレクション全体をマスター・クロノメーター化する方針を進めている。Black Bay 68 は、その歩みの中に置かれた一本でもある。大柄にするなら中身も相応に——存在感と規格の双方を引き上げた点に、このモデルの狙いがある。

04

現在地

発表時点の Black Bay 68 は、Tudor Blue とシルバーの2種類の文字盤で構成される。いずれもサンブラッシュ仕上げで、青には銀色の、シルバーには黒の差し色が合わせられている。

43mm・厚さ13.6mm というケースは、小径が語られる現在の市場で、あえて存在感の側に立つ寸法である。Black Bay 68 は、シリーズが積み上げてきたダイバーの文法を保ったまま、最も大柄な手首に向けた選択肢として加わった。新しい物語の幕開けというより、Black Bay という長い物語の裾野を一段広げる一本である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Black Bay 68 の設計は、シリーズが十年あまり保ってきた要素を、より大きな寸法へ素直に拡大したものである。新しい意匠を足すのではなく、何を変えないかを示す時計といえる。

中心にあるのはスノーフレーク針である。先端に菱形の夜光面を持つ時針は、Tudor のダイバーを一目で識別させる視覚的な錨であり、暗所での視認性という実用から生まれた形でもある。四角い夜光インデックス、太く明快な針、コントラストの高い文字盤。これらはいずれも「水中で時刻を読み違えない」という一点に向けられた選択であり、Black Bay 68 もその思想を踏襲する。

ケースは43mm、厚さ13.6mm、ラグ間51.8mm。小径化が語られる時期にあって、この寸法は明確に存在感の側に立つ。ただし装飾で押し出すのではなく、サテン仕上げを基調に側面のベベルへ研磨を効かせ、光の当たり方で陰影を作る抑えた仕上げである。リューズには Tudor のローズを浮き彫りにし、ベゼルはマットなブラックのアルミインサートとする。色や装飾を足しすぎないという判断が、シリーズ全体の落ち着いた表情を保っている。

ベゼルは60分の逆回転防止式で、潜水時間の計測という本来の機能に紐づく。ドーム状のサファイアクリスタル、ねじ込み式リューズ、ソリッドなケースバックは、200m防水を支える道具としての構造である。ブレスレットは工具なしで長さを微調整できる T-fit クラスプを備え、季節やコンディションで変わる手首の太さに対応する。

意匠の核を共有しながら、Black Bay 68 は同じシリーズの37mm や39mm とは異なる目的を担う。小径モデルが往年の寸法への忠実さを追うのに対し、68 は現代的な存在感を求める手首に向く。変えなかった顔と、変えた大きさ。この二つの距離の取り方に、Black Bay というシリーズの設計思想が表れている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2025-現在
Cal. MT5601-U
MT5601のMETAS適合版。70時間・耐磁性を強化。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2025-現在

初代 Black Bay 68

M7943A1A0NU
43mmでサイズ展開を最上段へ拡張。Tudor Blue/シルバーの2文字盤。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive