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TAG HEUER · SERIES

Carrera Glass Box

カレラ グラスボックス

高く盛り上がったサファイア風防が生む立体感。1960年代Carreraの意匠を再構築した現代の系譜。

39 mm – 41 mm
01 — 概要 / SUMMARY

カレラ グラスボックスは、TAG Heuerが2015年に投入したCarreraの現代的な一系統である。高く盛り上がったサファイア風防が、フランジの目盛りの上を歪みなく覆い、1960年代から1970年代のCarreraが用いたドーム型プラスチック風防の立体感を翻訳する。当初は限定モデルを中心とした試みだったが、2023年の60周年を機に39mmの定番クロノグラフへと拡張された。現在はDato、42mmのトゥールビヨン、そして2026年に加わった41mmまで、サイズと意匠の幅を着実に広げている。

02 — STORY · 物語

Carrera Glass Box(カレラ グラスボックス)、これまでの軌跡

The story of this series
01

ドーム風防という発想

カレラ グラスボックスの核心は、その風防にある。高くドーム状に立ち上がったサファイアクリスタルが「ガラス(glass)」、その箱のような高さが「ボックス(box)」を表し、二つが合わさって「グラスボックス」と呼ばれる。風防は文字盤外周のフランジに刻まれた目盛りの上を滑らかに覆い、目盛りを文字盤面から一段持ち上げて見せる。

そもそもCarreraは1963年、ジャック・ホイヤーが手がけた一本として生まれた。名はメキシコの公道レース「カレラ・パナメリカーナ」に由来する。走行中のドライバーのための視認性を最優先した、簡潔なクロノグラフであった。1960年代から1970年代の個体は、ドーム型のプラスチック(ヘサライト)風防を備えていた。グラスボックスは、その古い造形をサファイアで翻訳する試みである。

02

2015年、最初の一本

最初のグラスボックスは、2015年のCAR221Aである。39mmのステンレスケースに新設計のドーム風防を組み合わせた、限定生産のモデルだった。意外にも、文字盤に刻まれたのはタキメーターではなくテレメーター目盛りであった。レース由来のシリーズとしては異色の選択である。

ムーブメントも、後の世代を担う自社製Heuer 02ではなく、Sellita系をベースとするCalibre 18が搭載された。商業的な狙いよりも、新しいケースと風防の組み合わせが、ヴィンテージに着想を得た意匠として成立するかを確かめる一本だったと位置づけられる。

03

限定が紡いだ第1世代

2015年から2023年にかけて、グラスボックスはほとんどが限定モデルとして展開された。2017年のHodinkee別注Skipper(CAR221B)は、1968年のヨットタイマー「スキッペラ」(ref. 7754)を下敷きにした125本の限定であった。2020年には創業160周年記念のシルバー(CBK221B)、2021年にはHodinkeeと組んだDato(CBK221D)が続く。

これらは、Carreraの長い歴史から意匠を掘り起こす作業でもあった。第1世代の多くは自社製Heuer 02を積んだが、初期のSkipperなど一部はCalibre 18を用いた。一方で流通は限定的で、正規店ではなくブティックやオンライン中心の供給に不満の声もあったと伝わる。2023年1月、60周年記念の「パンダ」(600本)が、1960年代後半のref. 2447をほぼ忠実に写し取り、この世代を締めくくった。

04

60周年、定番への転換

転機は2023年のWatches and Wondersである。TAG Heuerは39mmのカレラ クロノグラフ グラスボックスを発表した。ブラックのリバースパンダ(CBS2210)と、ブルー(CBS2212)の二種である。注目すべきは、これらが限定ではなく定番カタログのモデルとして供給された点にある。限定中心だった第1世代からの明確な方針転換であった。

ムーブメントは新型のCalibre TH20-00。自社製Heuer 02を刷新し、双方向巻き上げの新しいローターと、より丁寧な仕上げを得た。毎時28,800振動 (4Hz)、80時間のパワーリザーブ、100m防水を備える。同年にはトゥールビヨンを収めた42mm版(CBS5010、Calibre TH20-09)も加わり、グラスボックスは複雑機構までを射程に入れた。

05

色と日付が広げた表現

2024年のLVMHウォッチウィークでは、グリーンのDato(CBS2211)が披露された。英国レーシンググリーンを思わせる円形ヘアラインのダイヤルに、日付窓を9時位置へ移し、ランニングセコンドを省いた構成である。これは1968年のCarrera Dato(ref. 3147)に通じる配置であり、専用のCalibre TH20-07が支える。

同年にはシルバー文字盤の二つ目パンダや、Skipperの再解釈版も加わった。標準生産という枠組みを保ったまま、色とダイヤル構成、そしてヴィンテージ由来の日付配置へと、表現の幅を広げた時期である。

06

41mmへ、そして現在

2026年のLVMHウォッチウィークで、TAG Heuerは「マスター・オブ・クロノグラフ」を掲げ、41mmのカレラ クロノグラフ グラスボックスを追加した。ブルー(CBS2113)、ティールグリーン、ブラック(赤の差し色)の三種である。直径41mm、ラグ間47.48mm、厚さ14.17mm、100m防水。日付窓を持たない素直な三つ目で、30分計を3時、スモールセコンドを6時、12時間計を9時に置く。

キャリバーはデイトを省いたCalibre TH20-01。ビーズ・オブ・ライスを思わせる7列のスティールブレスレットも新たに用意された。41mmは既存の39mmを置き換えるのではなく、補完する位置づけにある。同時に発表されたカレラ シーフェアラー(42mm、潮汐表示)は、Skipperの系譜をグラスボックスの土台の上で継いでいる。グラスボックスは今や、現代Carreraの基本構造そのものとなった。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

カレラ グラスボックスの設計言語は、ただ一つの判断から始まる。風防を高く盛り上げ、目盛りをその下の傾斜したフランジへ移すという選択である。平らな風防であれば、タキメーターはベゼルか文字盤外周の平面に置かれる。グラスボックスはこれをドームの内側へ取り込み、目盛りを立体的に持ち上げた。結果として、文字盤を覗き込むような奥行きが生まれ、外周まで視線が滑らかに流れる。

この発想は、新奇な装飾ではない。1960年代から1970年代のCarreraが備えていたドーム型ヘサライト風防の形状を、サファイアという現代の素材で再現したものである。古い造形を保ちながら、傷や歪みに強い素材へ置き換えた。ヴィンテージの輪郭と現代の実用性を両立させるという、一貫した態度がここにある。

視認性の優先も、初代Carrera以来変わらない原則である。ジャック・ホイヤーは、走行中のドライバーが一瞬で読み取れる文字盤を求めた。グラスボックスは三つ目ないし二つ目の整理された配置、面取りされたインデックス、夜光を保ち、計器としての素性を崩さない。色やサイズで遊ぶときも、読み取りやすさは犠牲にしない。

抑制も、この系譜の意匠を支えている。基本は39mmという往年に近いケース径で、過度に大型化しない。素材はステンレス、仕上げはヘアラインとポリッシュの対比にとどめ、華美な装飾を避ける。2026年に加わった41mmや、42mmのトゥールビヨンも、骨格を変えずに枠を広げる慎重な拡張であった。

同時代のレース系クロノグラフと並べると、輪郭はより明確になる。ロレックス デイトナやオメガ スピードマスターは、タキメーターを固定ベゼルに刻み、比較的平らな風防の下へ収める。グラスボックスは目盛りをドーム内のフランジへ置く、別の解を選んだ。いずれが優れるという話ではなく、視認性と計測機能をどう一枚の時計にまとめるかという問いへの、異なる答えである。

日付窓の扱いも、この系譜では意匠の語彙となっている。標準モデルは6時のスモールセコンド内に日付を収め、Datoは9時へ移し、2026年の41mmは窓そのものを廃した。いずれもCarreraの歴史にある日付配置を引きながら、その都度ダイヤルの均衡を選び直している。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2015-2017
Calibre 18 (Sellita系)
初代CAR221A等に積んだ調達ベースの自動巻。
2018-2023
Calibre Heuer 02
自社製コラムホイール式、80時間巻上。
2023-現在
Calibre TH20-00 / TH20-07
Heuer 02を刷新、双方向巻上の現行主力。
2023-現在
Calibre TH20-09
トゥールビヨンを備える42mm版の機械。
2026-現在
Calibre TH20-01
デイトを省いた41mm三つ目用の新世代。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2015

最初のグラスボックス

CAR221A
ドーム型サファイア風防で1960年代の意匠を翻訳した最初の一本。
2017-2023

第1世代の限定モデル群

CAR221B CBK221B CBK221D
SkipperやDato、160周年など限定中心に意匠を熟成させた時期。
2023

第2世代として定番化

CBS2210 CBS2212
60周年に39mm定番クロノとして量産化、新型TH20-00を搭載。
2024

色とダイヤル構成の拡張

CBS2211 ほか
グリーンのDatoや銀パンダを追加し、色と日付配置を広げた。
2026-現在

41mm追加とデイトレス化

CBS2113 系
41mm三つ目を追加し、TH20-01でデイト窓を廃した現行世代。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive