1999年、工具時計の作り手が選んだ主題
ジンは長らく、パイロットやダイバーのための堅牢な実用時計で知られてきた。耐久性と視認性を突き詰める姿勢は、同社の代名詞である。その作り手が、1999年に新しい主題へ踏み出す。優雅さを備えた腕時計の系譜、フランクフルト・ファイナンシャル・ディストリクトである。
同年9月2日、オーナーのロタール・シュミットは、フランクフルトの先史・古代史博物館で最初のモデル6000を披露した。ケース径38.5mmのクロノグラフである。構想は、フランクフルト経済振興公社のハルトムート・シュヴェジンガー博士の提案に始まる。文字盤には「Frankfurt am Main」の地名が記された。ジンの腕時計が出自の都市名を文字盤に掲げたのは、これが初めてである。
工具時計の作り手にとって、ドレスウォッチへの展開は方針転換であり、公式も当初は大きな賭けだったと振り返る。だが堅牢さを手放したわけではない。10気圧の耐圧と低圧への耐性は、この系譜にも与えられた。優雅さと頑強さの両立という主題は、以後この系譜を貫くことになる。