道具の工房が伝統に向き合う
Sinnは1961年、ヘルムート・ジンがフランクフルトに創業した計器の時計の工房である。パイロット用クロノグラフやコックピット時計を出自とし、堅牢な道具としての時計を磨いてきた。その性格を大きく広げたのが、1994年に経営を継いだロタール・シュミットである。彼の時代に、Sinnは道具一辺倒の系譜とは別に、伝統的な装いの時計群を育て始めた。
その起点となったのが、1999年9月2日にフランクフルトの先史・古代史博物館で披露されたフランクフルト・フィナンツプラッツ6000(Ref. 6000)である。文字盤には初めて「Frankfurt am Main」の銘が記された。後に「Made in Germany」として前面に出る出自への自負が、ここで控えめに刻まれている。この古典路線は当初「Klassische Meisterwerke(クラシックの名作)」と呼ばれ、本コレクションClassic Timepiecesの母体となった。道具で知られる工房が装飾的な時計を出すことには相応の賭けがあったが、計器の時計と同じ堅牢さを保った点で、Sinnは自社の流儀を崩さなかった。