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MORITZ GROSSMANN · SERIES

Atum

アトゥム

2/3プレートとプッシャー始動式の巻上げを受け継ぐ、グラスヒュッテ生まれの純粋なドレス系譜。

41 mm
01 — 概要 / SUMMARY

アトゥム (ATUM) は、グラスヒュッテのモリッツ・グロスマンが2013年に発表したドレスウォッチの系列である。3分割ケースと細いベゼル、白サファイアの軸受やプッシャーで始動する独自の巻上げ機構を核とし、19世紀の懐中時計建築を現代の腕時計へ翻案する。鋼製のAtum Pure、日付を備えるAtum Date、自動巻のAtum Hamaticへと派生し、複雑機構を担うBenuとは対をなす、簡潔さを軸にした系譜を成している。

02 — STORY · 物語

Atum(アトゥム)、これまでの軌跡

The story of this series
01

名を継ぐということ

グラスヒュッテのモリッツ・グロスマンは、19世紀の時計師カール・モリッツ・グロスマンに由来する。彼はフェルディナント・アドルフ・ランゲと親交を持ち、ドイツ時計学校の共同設立者となった人物である。没後にその名は途絶えたが、2008年に時計師クリスティーネ・フッターが商標を取得し、ブランドとして再興した。

最初の製品Benuが世に出たのは2010年とされる。Benuがザクセン様式の古典的な建築を志向したのに対し、Atumはより簡潔な装いを目指した系列として位置づけられる。複雑機構や象徴性を担うBenuと、純粋なドレスを担うAtum。両者の役割分担が、再興後のグロスマンの輪郭を形づくっていく。

02

2013年、Atumの誕生

Atumが発表されたのは2013年である。名はエジプト神話の創造神アトゥムに由来し、Benu(不死鳥に通じる聖鳥)やのちのTefnut(アトゥムの娘とされる女神)と神話の系譜で結ばれる。

直径41mmの3分割ケースに細いベゼルを合わせ、文字盤は漆塗りの落ち着いた色調でまとめられた。心臓部は手巻のキャリバー100.0/100.1。毎時18,000振動 (2.5 Hz) という緩やかな歩度で時を刻む。動力は42時間続く。

このキャリバーには、創業者の遺産を写した二つの機構が宿る。歩度を微調整するグロスマン式マイクロメーターねじと、片持ち式テンプ受け。そして時刻合わせのためのプッシャー始動方式である。リューズを引くと秒が止まり、針を合わせ終えるとリューズは自動的に戻る。最後に側面のプッシャーを押して運針を再開させる。リューズを押し込む際に針が動いてしまう不安を、構造から取り除いた設計である。

03

鋼とPure

2016年、Atumに新しい枝が伸びた。Atum PureとAtum Pure Mである。これはブランド初のステンレス鋼ケースであり、鋼の素材感に合わせて開発されたキャリバー201.0/201.1を収める。

このキャリバーには「ピュア・クラシック仕上げ」と呼ばれる処理が施される。洋銀のプレートをガラスビーズでショットピーニングし、艶を抑えた肌に仕上げる。装飾用シャトンを用いず、白サファイアの軸受をプレートへ直接圧入する。装飾を削ぎ落とし、機構そのものへ視線を導く思想である。

Pure Mの「M」はメッシュを指す。文字盤に細い鋼線を織った透過インサートを組み込み、表側からグロスマン式巻上げ機構を覗かせた。貴金属中心だったAtumに、技術を見せる入門的な性格が加わった瞬間である。

04

日付、そして工芸

2017年前後、Atumは表現の幅を広げる。Atum Dateは、キャリバー100.3により日付表示を加えた。文字盤外周のスケールと指標で日付を示し、調整用の独立したリューズを10時位置に備える。日付窓を切らず、文字盤の均衡を保つ判断である。

同じ頃、工芸的な変奏も現れた。エナメル文字盤のAtum Enamel、二色のサンバースト漆を用いたAtum Primaveraなどである。針はこの系列を通じて、グロスマンが自社で手作りする焼き戻し鋼で、青ではなく茶紫の色調に焼き上げられる。275〜285度という狭い温度帯でのみ得られる色とされる。

05

Hamaticという自動巻

2018年、Atumは初の自動巻を迎えた。Atum Hamaticである。心臓部のキャリバー106.0は、全回転式ローターではなく振り子式の巻上げ機構を採る。毎時21,600振動 (3 Hz)、動力は72時間。手巻系の緩やかな歩度とは異なる律動を持つ。

手仕事を見せる思想は自動巻でも変わらない。テンプ受けは手彫りで装飾され、ねじは茶紫に焼かれる。機構を露わにするか、覆って整えるか。Atumはその両極を、同じ設計言語のなかで往復してみせた。

06

現代のAtum

その後もAtumは枝を増やし続けている。径を抑えたAtum 37、記念や受注に応じた一点物や限定の工芸仕上げなどである。色や仕上げ、素材を変えながら、3分割ケースとプッシャー始動の作法は変わらない。

複雑機構を担うBenu、より細身のTefnutと並び、Atumはグロスマンのドレスの基軸であり続ける。派手さではなく、操作の所作と懐中時計建築の継承によって輪郭を保つ系譜。それが再興後十数年を経たAtumの現在地である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Atumの設計を貫くのは、19世紀の懐中時計建築を腕時計へ翻案するという姿勢である。

機構の土台には支柱(ピラー)構造と2/3プレートが置かれる。地板の上に支柱を立て、その上へ洋銀の2/3プレートを載せる。多くの現代時計が用いる平板的な構造ではなく、立体的な奥行きを持つ。同郷のA.ランゲ&ゾーネが3/4プレートを採るのに対し、グロスマンは2/3プレートを選んだ。受けの面積を抑え、テンプや歯車の調整余地を確保する判断である。

色彩の選択も独自である。軸受にはルビーではなく白サファイアを用い、一部は段付きの金シャトンに収める。ねじと針は青ではなく茶紫に焼き上げる。青焼きが定番のグラスヒュッテにあって、この色は明確な差異として機能する。針は自社で手作りされ、グラスヒュッテの製造元として稀な手仕事とされる。

意匠以上に系列の核を成すのが、操作の所作である。グロスマン式のプッシャー始動。リューズを引いて秒を止め、針を合わせ、リューズが戻った後にプッシャーで運針を再開する。創業者の懐中時計が備えた時刻合わせレバーの思想を、現代へ写したものである。針が不用意に動く余地を、構造から断つ。

文字盤の側でも、過剰を避ける姿勢は一貫する。小秒は6時位置に控えめに沈め、指標はバトンやローマ数字に絞る。日付を加える際も窓を切らず外周で示し、面の均衡を崩さない。装飾を足すのではなく、引いて整える方向に意匠は向かう。

41mmの3分割ケースは、細いベゼルと面取りされたラグでまとめられ、ドレスとしての節度を保つ。Atumが世代やモデルを越えて認識できるのは、文字盤の色でも素材でもなく、この建築と所作が変わらないからである。鋼のPureが機構を透かして見せ、貴金属のモデルが文字盤で覆い隠す。見せるか覆うかは変えても、土台の言語は一貫している。何を見せ、何を変えないか。その判断の積み重ねが、Atumの顔を成している。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2013-現在
Cal. 100.0 / 100.1
手巻・毎時18,000振動 (2.5 Hz)、手彫り装飾。
2016-現在
Cal. 201.0 / 201.1
鋼製Pure用、ピュア・クラシック仕上げの手巻。
2017-現在
Cal. 100.3
日付機構を備えた手巻、259部品・26石。
2018-現在
Cal. 106.0
振り子式自動巻・毎時21,600振動 (3 Hz)、72時間。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2013-現在

初代Atum・貴金属手巻

ATUM (Cal. 100.0 100.1)
3分割ケースとプッシャー始動巻上げを備えた貴金属の基本形。
2016-現在

鋼製Pureと透過ダイヤル

ATUM Pure Pure M (Cal. 201.0 201.1)
ブランド初の鋼ケース、透過ダイヤルで機構を見せる系。
2017-現在

日付を備えるAtum Date

ATUM Date (Cal. 100.3)
外周マーカー式日付と10時位置の独立リューズを採用。
2018-現在

自動巻のAtum Hamatic

ATUM Hamatic (Cal. 106.0)
振り子式ローターによるシリーズ初の自動巻、72時間。
2019-現在

小径化と工芸的な展開

ATUM 37・特別版
37mm径や工芸仕上げの限定・一点物へと表現を拡張。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 3 モデル

3 references in archive