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MB&F · SERIES

Legacy Machines

レガシー・マシン

もし19世紀に生まれていたら——テンプを文字盤の上に吊るした、MB&Fの古典への回答

40 mm
01 — 概要 / SUMMARY

2011年にMB&Fが発表したレガシー・マシンは、19世紀の時計づくりを現代の技術で再構想するシリーズである。最大の特徴は、本来ケース裏に隠されるテンプを文字盤の上へ吊り下げたこと。丸ケースと琺瑯風の文字盤という古典の装いの下に、独立2タイムゾーンや永久カレンダーといった複雑機構を独自の方法で組み込む。入門機のLM101から、LM Perpetual、GPHG金針賞を受けたLM Sequential EVOまで、機構ごとに異なる時計師との協業で広がってきた系譜である。

02 — STORY · 物語

Legacy Machines(レガシー・マシン)、これまでの軌跡

The story of this series
01

「100年前に生まれていたら」

2005年に創業したMB&Fは、HM(オロロジカル・マシン)と呼ばれる立体的で奇抜なケースの時計で知られていた。創業者のマクシミリアン・ブッサーが2011年に示した新シリーズは、その流れに逆らうものだった。丸ケース、白い文字盤、ブルーの針——一見すると19世紀の懐中時計を思わせる古典的な姿である。

このシリーズの構想は、ひとつの問いから出発している。もし自分が100年前に生まれ、当時の巨匠たちと働いていたら、どんな腕時計を作っただろうか。ブッサーはそう問い、19世紀の革新者へのオマージュとしてレガシー・マシンを構想したと語っている。初代LM1の開発はクロノードのジャン=フランソワ・モジョンが担い、仕上げの監修をカリ・ヴォーティライネンが引き受けた。

LM1が見せたのは、古典の装いと裏腹の大胆さだった。本来ケース裏に隠れるはずの14mmの大型テンプを、二本のアーチ状ブリッジで文字盤の上に吊り下げる。左右二つの文字盤は完全に独立して時刻を設定でき、当時としては異例の垂直式パワーリザーブを備えた。

02

二重テンプ、そして自社開発へ

2013年のLM2は、さらに踏み込んだ。二つのフライングバランスを差動装置でつなぎ、二つの振動を平均して精度を整える機構を、文字盤側に露出させた。モジョンとヴォーティライネンの協業による、複雑さを「見せる」設計である。

転機は2014年のLM101だった。40mmへ小型化し、時刻とパワーリザーブのみに機能を絞ったこのモデルは、MB&Fが初めて一から設計した自社キャリバーを積んでいる。仕上げと意匠の監修はヴォーティライネンが続けたが、機構そのものはMB&Fの手によるものだった。ブリッジからモジョンの名は外れ、ブランドが設計能力を備えた節目となった。

03

マクドネルと複雑機構

2015年のLM Perpetualは、アイルランドの時計師スティーブン・マクドネルとの協業から生まれた。彼は伝統的なカムとレバーによる永久カレンダーを捨て、重ねた円盤による「機械式プロセッサ」を考案した。日付を前後どちらにも安全に調整できる構造で、永久カレンダーの扱いにくさを解いたとされる。

2017年のLM Split Escapementは、テンプを文字盤側に残したまま、脱進機(アンカーとガンギ車)を反対側へ離して配置した。調速機構を空間的に分解し、機械の動きそのものを意匠に変えている。

04

2019年——複雑機構と新たな読者

2019年は二つの方向への拡張の年だった。LM Thunderdomeは、エリック・クドレとヴォーティライネンの協業による三軸トゥールビヨンを搭載する。最も内側のケージが8秒で一回転する、当時として最速級とされる調速機構である。

同年のLM FlyingTは、MB&F初の女性に向けた機械式時計だった。文字盤を50度傾けて装着者だけが読みやすいよう設計し、ドーム下に6.5mm立ち上がるフライングトゥールビヨンを据える。単なる小型化や宝飾化ではなく、新たな構造から起こした一本である。

05

10年目のLMX、そしてクロノグラフ

2011年から10年を経た2021年、シリーズはLMXを発表した。Xはローマ数字の10を指す。三つの香箱で168時間(7日)の駆動を得て、LM1の垂直パワーリザーブを半球状の立体表示へと再解釈した。

2022年のLM Sequential EVOは、MB&F初のクロノグラフであり、ブランド20番目のキャリバーでもある。マクドネルが設計したこの機械は、二つの独立したクロノグラフを「Twinverter」と呼ぶ二進スイッチで連携させ、独立計時・スプリット・ラップなど複数の計時モードを一台で扱う。同年のGPHG(ジュネーブ・グランプリ)で最高賞「金の針賞(Aiguille d'Or)」を受けた。以後、フライバック機能を加えた派生も生まれている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

レガシー・マシンの設計は、ひとつの判断に貫かれている。時計の最も美しい部分を、裏ではなく表に置くこと。本来ケース裏に収まるテンプを文字盤の上へ吊り下げるという選択が、シリーズ全体の視覚的な核となっている。大型のテンプそのものも、振動を見せるための意匠であると同時に、大きな調速輪を備えた19世紀の懐中時計への目配せでもある。

外側は古典の語彙でまとめられている。丸ケース、琺瑯を思わせる艶のある文字盤、ローマ数字、ブルースチールの針。19世紀の懐中時計を参照したこれらの意匠は、宙に浮くテンプという非日常的な光景を、かえって落ち着いて見せる枠として働く。奇抜さを古典の器に収める——この対比がレガシー・マシンの輪郭である。針や文字盤の可読性を保ったうえで機構を露出させる点に、シリーズの節度がある。

二本のアーチ状ブリッジは、エッフェル塔の脚にも例えられる構造体で、テンプを支えると同時にシリーズの記号にもなっている。これは同じMB&Fのオロロジカル・マシンが見せる、宇宙船や生物を思わせる奔放な造形とは対照的だ。HMが想像力の発露なら、LMは抑制のなかの再構想といえる。立体的に積層された機構を、あくまで読み取れる時計として成立させるところに線が引かれている。

設計の方法そのものも特徴的である。「&Friends」の名のとおり、各モデルは異なる外部時計師との協業で生まれてきた。モジョンが機構を、ヴォーティライネンが仕上げを、マクドネルが複雑機構を、クドレがトゥールビヨンを担う。中心となる吊りテンプという一貫した記号を保ちながら、機構ごとに最適な才能を呼び込む。変えないものと変えるものの線引きが、このシリーズの設計思想を形づくっている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2011-2014
Mojon / Voutilainen 系 (LM1 / LM2)
外部協業の手巻き3Dキャリバー。LM1・LM2。
2014-2015
LM101 系
MB&Fが初めて自社設計したキャリバー。
2015-2019
McDonnell 複雑系 (Perpetual / SE)
永久カレンダーの機械式プロセッサと分割脱進機。
2019
Coudray 三軸系 (Thunderdome / FlyingT)
三軸トゥールビヨンとフライングトゥールビヨン。
2021
LMX 系
自社3香箱で168時間巻を実現。
2022-現在
McDonnell クロノ系 (Sequential)
第20キャリバー、二重クロノとTwinverter。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2011

初代LM1・シリーズ言語の確立

Legacy Machine N°1 (LM1)
テンプを宙に吊り下げ、独立2時間帯と垂直パワーリザーブを確立。
2013

二つのテンプを持つLM2

Legacy Machine N°2 (LM2)
2つのフライングバランスを差動装置で平均する機構。
2014

自社開発の起点・LM101

Legacy Machine 101 (LM101)
40mmへ小型化、MB&F初の自社設計キャリバーを搭載。
2015-2017

永久カレンダーと脱進機の分割

LM Perpetual LM Split Escapement
マクドネルの永久カレンダーと分割脱進機で高度化。
2019

三軸トゥールビヨンと女性向け初号機

LM Thunderdome LM FlyingT
三軸トゥールビヨンと、初の女性向け機械式時計。
2021

10周年記念・7日巻のLMX

Legacy Machine X (LMX)
3香箱で168時間駆動、垂直表示を立体化。
2022-現在

初のクロノグラフ機構

LM Sequential EVO ほか
二重クロノとTwinverter、GPHG金針賞受賞。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive