「時を告げる機械」という宣言
MB&Fは2005年、マキシミリアン・ブッサーが独立して興した工房である。最初の製品が世に出たのは2007年、ホロロジカル・マシンの第一作HM1だった。砂時計を思わせる横長のケースは幅64mmに達し、中央に立てたトゥールビヨンを左右の逆行表示が挟む。文字盤を平面ととらえる常識から外れ、ケースそのものを立体彫刻として設計した最初の一台である。
ブッサーはこの系譜を「時を告げるための機械(machine to tell the time)ではなく、時を告げる機械(machine that tells the time)」と表現する。実用上の視認性は副次的で、機構と造形それ自体が主役になるという宣言だった。HM1のエンジンは4つの香箱を直列・並列に組み合わせ、7日間の動力を蓄える。設計はエリック・ジルー、ムーブメントはローラン・ベスとピーター・スピーク=マランが担い、最終組み立ては土壇場で降板した業者に代わりスティーブン・マクドネルが引き受けた、と伝わる。社名の「&F(と友人たち)」が、最初から製品の中身そのものだった。