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HUBLOT · SERIES

MP Collection

MPコレクション

形より先に機構を決める。ウブロが世界記録と異形の複雑機構を世に問う、自社最上位の実験場である。

39.5 mm
01 — 概要 / SUMMARY

MP Collection(マスターピース/マニュファクチュール・ピース)は、ウブロが2011年に立ち上げた最上位コレクションである。グランドコンプリケーション専従の技術者集団が、量産ラインでは扱えない極端な発想を専用キャリバーで形にする実験場として機能する。50日のパワーリザーブを記録したMP-05 LaFerrari、自社初の多軸トゥールビヨンMP-09、文字盤を持たないMP-10など、一作ごとに性格が大きく異なる。村上隆やダニエル・アーシャムとの協業も近年の柱である。

02 — STORY · 物語

MP Collection(MPコレクション)、これまでの軌跡

The story of this series
01

2011年、実験のための場をつくる

2005年のビッグバンで、ウブロは時計界の話題をさらった。ゴムと貴金属を組み合わせる「フュージョン」の思想は、賛否を呼びながらブランドを急成長させる。だが派手な意匠の陰で、ウブロは複雑時計を自社で開発するという課題を抱えていた。

その答えとして2010年、グランドコンプリケーション専従の技術者・開発者30名からなる集団が編成される。社内で「コンフレリ・オルロジェール」と呼ばれたこの部隊が、量産コレクションでは引き受けられない極端な発想を担うことになった。

2011年1月、ジュネーブの見本市で初代MP-01が披露される。トノー型のチタンケースに、3つの香箱を直列に連ねて10日間の駆動を得る湾曲したモノプッシャー・クロノグラフ。キャリバーHUB5100は384部品・43石で構成され、ウブロが慣れ親しんだ丸いポートホール型からの明確な離脱を示した。ジャン-クロード・ビバーはこのコレクションを「より多くの時計製造、より多くの熟達、より多くの革新」と表現している。

MPという略称には二つの読み方が併存する。発表当時の「マスターピース(傑作)」と、自社製であることを強調する「マニュファクチュール・ピース」である。番号は構想順ではなく完成順に振られるため、欠番を含む不連続な並びになっている。

02

ラ・フェラーリと50日 — 香箱を積む発想

2011年に続いたMP-02「ラ・クレ・デュ・タン(時間の鍵)」は、時の進みを体感的に操作するという異色の発想だった。専用リューズで表示速度を4分の1倍・等倍・4倍に切り替え、6時位置には縦置きのフライングトゥールビヨンを据える。技術と概念の両面で挑発的な一作である。

この路線が頂点に達したのが、2013年のバーゼルワールドで発表されたMP-05 LaFerrariだった。フェラーリのハイパーカー「ラ・フェラーリ」と並行して設計されたこの時計は、11個の香箱を背骨のように直列配置し、手巻きトゥールビヨン腕時計として50日(1,200時間)という記録的なパワーリザーブを実現した。それまでの記録はレベリオンT-1000の41日であり、ウブロはこれを上回ったと公表している。

キャリバーHUB9005は637部品・108石で、当時のウブロで最多の部品数を持つ。時刻は回転ドラムで示され、巻き上げのトルクが大きすぎるため、リューズではなく電動ドリル状の工具で香箱を巻く。2016年にはサファイアクリスタル製のケースも作られた。同じ香箱積層の発想を横置きの「エンジンブロック」型へ展開したMP-07も、これに続いている。

03

トゥールビヨンを見せるための時計 — MP-09とMP-13

2017年のバーゼルワールドで登場したMP-09 Tourbillon Bi-Axisは、ウブロ初の多軸トゥールビヨンである。第一軸を1分で、第二軸を30秒で回転させる二軸機構が、重力の影響をより多くの姿勢で平均化する。設計は機構を起点に進められ、6時位置で二重回転を見せるために3面構成のサファイアクリスタルが与えられた。キャリバーHUB9009は5日のパワーリザーブを持ち、毎時21,600振動(3Hz)で動く。49mmの大ぶりなケースは、機構を見せるという目的が外装を規定した好例である。

2023年のウォッチズ&ワンダーズで発表されたMP-13 Tourbillon Bi-Axis Retrogradeは、二軸トゥールビヨンと両レトログラード表示という、組み合わせとして前例の乏しい構成に挑んだ。分針は連続的に動き、時針は瞬時に飛ぶ。針がトゥールビヨンの上を横切らないよう配慮された設計で、96時間のパワーリザーブを確保している。キャリバーHUB6200は、MP部門が自社開発した13番目のムーブメントにあたる。

04

14日巻きをビッグバンへ — MP-11

2018年のバーゼルワールドで発表されたMP-11は、MP-05で培った長時間駆動の技術を、ウブロの主力であるビッグバンの文脈に落とし込んだ。7個の香箱を直列に連ねて14日(336時間)のパワーリザーブを得ながら、ケース厚を10.9mmに抑えている。

香箱はムーブメントの前面に垂直に配置され、水平軸の力を垂直の輪列へ伝えるために、時計では珍しい90度の伝達機構(ウォームギア)を用いる。キャリバーHUB9011はシリコン製脱進機を備え、毎時28,800振動(4Hz)で動く。3Dカーボンやサファイアなど多彩な素材で展開され、2024年には新色「ウォーターブルー・サファイア」が加わった。

05

芸術家との協業と、文字盤なき到達点

近年のMPは、技術と芸術の接点をより前面に出している。日本の現代美術家・村上隆との協業から生まれたMP-15は、ウブロ初の量産中央フライングトゥールビヨンを搭載する。村上が要望した中央配置のために、筒車と時車をトゥールビヨンの周囲へ再配置した。42mmのケースは村上の代名詞である12弁の花の形をとり、サファイアクリスタルで成形される。

アメリカの美術家ダニエル・アーシャムとの協業は、2024年のMP-16「アーシャム・ドロップレット」、2025年のMP-17「アーシャム・スプラッシュ」へと続いた。前者は水滴の形をした懐中時計兼ペンダント、後者はアーシャム初の腕時計で、いずれもメカ10ムーブメントによる10日間の駆動を持つ。

そして2024年のLVMHウォッチウィークで発表されたMP-10 Tourbillon Weight Energy Systemは、文字盤も針も回転錘も持たない。時刻はローラーで示し、傾斜35度のトゥールビヨンが秒を兼ねる。両脇を上下に滑る2つの錘が機構を双方向に巻き上げる。5年の開発を要したキャリバーHUB9013は592部品を数え、機構そのものが時計の表情となっている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

MP Collectionを貫くのは「形は機構であり、機構は形である」という一文に尽きる。一般的な時計は外装の意匠を決めてから機械を収める。MPはその順序を反転させ、まず一つの極端な機構を構想し、それを最もよく見せる外装を後から起こす。MP-09の異形ケースも、MP-05のエンジン型ケースも、機構が外形を規定した結果である。

この思想は「見せること」への徹底につながる。サファイアクリスタルを多用し、3面構成や全周構成で機構を露出させる。装飾的な仕上げよりも、香箱の積層やトゥールビヨンの回転といった構造そのものを視覚の主役に据える。仕上げの美ではなく、機械の建築美を見せる立場である。サファイアを湾曲させてレンズを兼ねさせ、香箱やパワーリザーブ表示を拡大する工夫も重ねられている。

サブマリーナーのように長年同じ顔を守るシリーズとは対照的に、MPには固定された「顔」が存在しない。トノー型、弾丸型、エンジンブロック型、花型と、一作ごとに輪郭が変わる。それでもMPと認識できるのは、外見ではなく姿勢が一貫しているからだ。すなわち、量産では引き受けられない発想を専用キャリバーで形にし、それを透明な外装で見せきるという態度である。

素材もまた実験の対象となる。サファイアの新色、3Dカーボン、セラミック、マジックゴールド。MPで試された素材や技術は、のちにビッグバンなど下位コレクションへ波及する。ウブロはMPを、明日の時計を今日試すための研究室として位置づけている。

リシャール・ミルが一貫したトノー型で個性を語るのに対し、ウブロのMPは形を固定しないことで個性を保つ。両者はいずれも機構の可視化を競うが、MPは「毎回違う形であること」自体をシリーズの規範に据えた点で際立つ。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2011
Cal. HUB5100
3香箱直列で10日巻のモノプッシャークロノ。
2013
Cal. HUB9005
11香箱積層で50日、ウブロ最多の637部品。
2017
Cal. HUB9009
ウブロ初の二軸トゥールビヨン、5日駆動。
2018
Cal. HUB9011
7香箱直列と90度ウォームギアで14日巻。
2023
Cal. HUB6200
二軸と両レトログラードを統合、96時間。
2024-現在
Cal. HUB9013
2つの荷重で巻く傾斜トゥールビヨン、592部品。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2011

コレクションの起点

MP-01
トノー型・10日巻のモノプッシャークロノでMP言語を定義した初代。
2013

50日の世界記録

MP-05 LaFerrari
11香箱を直列配置し、手巻きトゥールビヨンで50日を実現した象徴作。
2017

初の多軸トゥールビヨン

MP-09
二軸トゥールビヨンを見せるために外装を起こしたウブロ初の一作。
2018

14日巻きの汎用化

MP-11
7香箱直列で14日。ビッグバンの文脈に長時間駆動を統合した。
2023

二軸×両レトログラード

MP-13
二軸トゥールビヨンと両レトログラード表示を組み合わせ96時間を確保。
2024-現在

文字盤なき構造

MP-10
ローラー表示と荷重巻き上げ、傾斜トゥールビヨンによる現在の到達点。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive