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H. MOSER & CIE · SERIES

Endeavour

エンデバー

複雑機構を、最も読みやすい一本へ。ロゴもインデックスも消してなお成立する、フュメ文字盤のミニマリズム

40.8 mm
01 — 概要 / SUMMARY

エンデバー (Endeavour) は、2005年に復興したH. モーザー (H. Moser & Cie.) の中核をなす、丸型クラシックの系譜である。2014年に旧来のMayu・Monard・Nomad・Perpetual 1を統合し、現在の呼称となった。特徴は、200を超える工程で仕上げるフュメ文字盤と、ロゴもインデックスも持たないConceptダイヤルにある。時・分・秒のCentre Seconds、Small Seconds、ブランドの代名詞であるPerpetual Calendarやトゥールビヨンまで、ドレスウォッチの枠内で複雑機構を展開する。派手さを避けながら、文字盤だけで出自が分かる存在感をもつ。

02 — STORY · 物語

Endeavour(エンデバー)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1828年の名と、2005年の再出発

H. モーザー (H. Moser & Cie.) の名は、1828年にハインリヒ・モーザーがロシアのサンクトペテルブルクで創業したことに始まる。ロシア革命を経て一度は歴史の表舞台から姿を消したこの名が、創業者の子孫ロジャー・ニコラス・バルジガーらの手で再び動き出したのは2005年である。創業者の生誕200年にあたるこの年、ブランドはシャフハウゼン州ノイハウゼン・アム・ラインファルに製造拠点を構え、最初のモデル群を発表した。ムーブメント設計を託されたのは、独立時計師アンドレアス・シュトレーラー。潤滑を要さない交換式エスケープメントや、二つのひげぜんまいを重ねて姿勢差を補正する機構など、後年の語彙となる技術がこの時点で芽吹いている。

02

Perpetual 1 — 「読める」パーペチュアル

復興期の象徴となったのが、シュトレーラーが手がけたパーペチュアルカレンダー「Perpetual 1」である。手巻のキャリバーHMC 341は、二つの香箱で7日間の駆動を確保し、毎時18,000振動 (2.5Hz) で時を刻んだ。従来の永久暦が小さな文字や複数のサブダイヤルで盤面を埋めたのに対し、Perpetual 1は中央の小さな矢印で月を指し示し、文字盤を澄ませた。月末から翌月へ瞬時に切り替わるフラッシュカレンダー、二枚の円板を重ねたビッグデイトはいずれもシュトレーラーの考案で、特許に結実している。2006年にはジュネーブ時計グランプリ (GPHG) の複雑機構部門に選ばれた。複雑を、いかに読みやすく収めるか。この主題が後のエンデバー全体を貫くことになる。

03

エンデバーという統合

2012年、ブランドはメイラン家のMELBホールディングの傘下に入り、2013年からエドゥアール・メイランが指揮を執る。2014年、それまでMayu (スモールセコンド)、Monard (センターセコンド)、Nomad (デュアルタイム)、Perpetual 1 という個別の名で売られていた丸型クラシック群が、「Endeavour」という一つの呼称へ統合された。母体は2005年の復興期にあるが、シリーズとしての輪郭がここで定まる。ドレスウォッチの本流を担うラインとして、複雑機構から三針のシンプルモデルまでを束ねる枠組みが整った。

04

ロゴを消すという決断

2015年、エンデバーは大胆な一手を打つ。Conceptと名付けた文字盤から、ロゴもインデックスも消し去ったのである。残されたのは、色の濃淡だけで成立するフュメ文字盤と、リーフ型の針のみ。中心が淡く外周へ向かうほど深く沈むグラデーションは、200を超える工程を経て作られる。メイランは、製品そのものに語らせるための選択だと説明している。文字盤に署名がなくとも一目でそれと分かる。かつて時計が文字盤ではなくムーブメントにのみ銘を刻んだ時代を、逆照射する身振りでもあった。フュメ文字盤は、この決断を機にブランドの代名詞として定着していく。

05

漆黒と、複雑機構の拡張

メイラン期のエンデバーは、ミニマリズムを保ったまま機構と素材の両極へ手を伸ばす。2014年にVenturerで初めて世に出たフライングトゥールビヨンは、2017年にエンデバーへ入り、自動巻のHMC 804として双ひげぜんまいで姿勢差を抑えた。2018年には、可視光の約99.965%を吸収するというVantablackを文字盤に採り、Endeavour Perpetual Moonに搭載した。中心が果てしなく沈み込むその盤面は、誤差1日が約1027年というパーペチュアルムーンと組み合わさり、漆黒の宇宙に月だけが浮かぶ像を結んだ。同年にはさまよう時表示のFlying Hoursも加わり、シリーズの表現の幅が一気に広がった。

06

現在のエンデバー

現在のエンデバーは、自動巻のCentre Seconds (HMC 200 / 201系) を中核に、手巻7日巻のセンターセコンドやSmall Seconds (HMC 327) を揃える。看板の複雑機構は、暦機構をムーブメントと一体で設計した現行パーペチュアルカレンダー、キャリバーHMC 800である。いつでも前後へ日付と月を修正でき、12時位置の指標で月を読ませる構成は、Perpetual 1以来の「読める永久暦」をそのまま受け継ぐ。年産およそ1000本という「Very Rare」を掲げ、フュメと無印という二つの記号で、エンデバーは自らの輪郭を保ち続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

エンデバーの設計思想は、足し算ではなく引き算で個性を立てる一点に集約される。ケースは丸型のクラシックを基調としながら、ケースサイドに走る一条の溝でエンデバー一族であることを示す。裏蓋は緩やかに湾曲し、装着感を高めると同時に内部のムーブメントを覗かせる。径は38mmから42mm前後で、複雑機構を載せても腕上で過剰に主張しない寸法に抑えられている。

意匠の核は、言うまでもなくフュメ文字盤にある。サンレイ仕上げの上に、中心から外周へ向かって色が深く沈むグラデーションをのせる。色そのものが指標やロゴの代わりとなり、盤面の情報量を最小に保つ。針はリーフ型で細く、夜光や数字に頼らずとも時刻が読める範囲まで装飾を削いでいる。Conceptダイヤルではロゴとインデックスすら排され、残った要素だけで時計を成立させる。

複雑機構の見せ方にも一貫した態度がある。パーペチュアルカレンダーは中央の矢印一本で月を示し、ビッグデイトと7日のパワーリザーブ表示だけを盤面に残す。トゥールビヨンは無印の文字盤に開口を一つ穿ち、回転する調速機構そのものを意匠とする。複数のサブダイヤルで盤面を埋める同時代の永久暦とは逆に、エンデバーは情報を裏面や中心へ逃がし、表を澄ませる。

この自制は、同じドレス領域の競合と並べると輪郭が際立つ。多くのブランドが装飾や銘で存在を主張するのに対し、エンデバーは色と仕上げ、そしてケースのプロポーションだけで、出自を静かに語らせる。20年ほどの歴史でありながら一貫して認識可能なのは、変えるべきもの (色、複雑機構の表現) と変えないもの (無装飾の盤面、読みやすさ、抑えた寸法) を明確に分けてきたからである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2005-現在
Cal. HMC 341 → HMC 800
パーペチュアルの主軸。手巻・7日巻、後に暦機構を一体化。
2014-現在
Cal. HMC 327
手巻スモールセコンド。ハッキング秒と3日巻。
2015-現在
Cal. HMC 200 / 201
自動巻センターセコンド。ダブルひげぜんまい採用。
2017-現在
Cal. HMC 804
自動巻フライングトゥールビヨン。位置誤差を二重補正。
2018-現在
Cal. HMC 801
手巻パーペチュアルムーン。1日誤差は約1027年。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2005-2013

復興期の原型

Perpetual 1 Monard Mayu
2005年の復興で誕生した手巻群。Endeavour名以前の母体。
2014-現在

シリーズ名の確立

Endeavour (統合呼称)
Mayu・Monard・Nomad・Perpetual 1を統合し改称。
2015-現在

無印Conceptダイヤル

Endeavour Centre Seconds Concept
ロゴと指標を排したフュメ文字盤、設計言語の核に。
2017-現在

複雑機構の拡張

Endeavour Tourbillon (HMC 804)
フライングトゥールビヨンがEndeavourへ加わる。
2018-現在

Vantablack採用

Endeavour Perpetual Moon Concept
ブランド初のVantablack文字盤で漆黒の宇宙を表現。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive