設計思想
ドレスウォッチの基準器、Ref. 49525
1966コレクションは2006年に発足した。名称は、ジラール・ペルゴが開発した毎時36,000振動のハイビートムーブメントをヌーシャテル天文台のクロノメーター検定へ全数提出し、1966年に同天文台の百周年記念賞を受けた史実に由来する。その最初のリファレンスが49525である。38mmの貴金属ケースに時刻と日付だけを収めた3針モデルで、以後クロノグラフやカレンダーへ広がるコレクションの中で、最も簡素な基準器の役割を担い続けた。本機はこの49525に新しい文字盤色を与えた、2014年の派生である。
2014年、ブルーという選択
発表は2014年2月、バーゼルワールド開幕に先立つプレリリースの形で行われた。当時の市場では2013年頃からブルー文字盤が大きな潮流となり、各社がドレスウォッチへの展開を競っていた。一方でジラール・ペルゴ自身は、ブルーを18世紀以来の歴史的タイムピースに用いてきた伝統色と位置づけている。流行と社史が交差する地点に置かれたのが本機だった。シルバー系が中心だった49525の文字盤に深いブルーを差すことで、フォーマルな性格を保ったまま、わずかな逸脱を楽しめる一本を用意したのである。発表当時の専門誌は、同年に登場したロレックスのチェリーニ デイトなど同価格帯の自社ムーブメント搭載ドレスウォッチと並べたうえで、色彩の組み合わせにこそ本機の個性があると評した。
貴金属からスチールへ、転換期の中で
同時期の49525には、ホワイトゴールドケースやシルバー文字盤の兄弟仕様が並行して存在した。2015年初頭には41mmケースのブルー文字盤版49527-52-431-BB4A(ピンクゴールド)と49527-53-432-BB4A(ホワイトゴールド)が加わり、ブルーはコレクション横断の文字盤色となる。なお41mm系は38mm系と異なる薄型ムーブメントを積み、両者は単なるサイズ違いではない。さらに2015年秋には1966初のステンレススチールケース(40mm)が登場し、コレクションの重心は貴金属から徐々にスチールへ移っていく。その転換期にあって本機は、38mm・貴金属・自社ムーブメントというコレクション原点の構成を、最も鮮やかな色彩で示した存在と位置づけられる。
意匠分析
ケースは18Kピンクゴールドの38mm径で、公称厚は8.62mmとされる。数値として薄型記録を競うものではないが、側面を内側へ絞り込んだコンケーブなケースバンドと、外周へ向かって傾斜するベゼルが、実寸以上にスリムな印象をつくる。仕上げは全面ポリッシュで、ジラール・ペルゴのピンクゴールドは赤みを抑えた柔らかな色調を持つ。風防はドーム状のサファイア、裏蓋はサファイアのシースルーバック。30m防水にとどまる点も含め、水回りを想定しない純然たるドレス仕様である。
文字盤は深いブルーのサンレイ仕上げで、中央がわずかに盛り上がるドーム形状を持つ。光の角度に応じて放射状の反射が走り、平滑なブルーが陥りがちな単調さを避けている。インデックスは12時がダブルバトン、3・6・9時がシングルバトンのピンクゴールド植字で、その他の時位置は白の細いプリント。針は時分がピンクゴールドのリーフ型、秒針は直線形で丸いカウンターウェイトを備える。3時位置の日付は白地のディスクで、青い面の上では明確に浮き上がる。視認性を取るか色の統一を取るか、設計の割り切りが見える部分である。
ムーブメントは自社製自動巻GP03300-0030。毎時28,800振動 (4Hz)、パワーリザーブ約46時間で、針合わせ時に秒針が止まるハック機構と、時刻に触れず送れる日付早送りを備える。18Kゴールドのローターにはサーキュラーのコート・ド・ジュネーブ、ブリッジには直線のストライプと手作業の面取りが施される。直径25.6mmと38mmケースに対して小ぶりなため、シースルーバック越しには外周の余白も目に入る。ストラップは文字盤と色を揃えたブルーのアリゲーターで、ピンクゴールドのピンバックルが付属する。
系譜と歴史
1966コレクションは2006年に発足し、最初のリファレンスとして38mm貴金属ケースの49525が設定された。本機49525-52-432-BB4Aはその文字盤バリエーションにあたり、2014年2月、バーゼルワールド2014に先行するプレリリースとして発表された。同年3月の会場で披露され、ピンクゴールドケース、ブルーサンレイ文字盤、ブルーアリゲーターストラップという構成で販売が始まった。
翌2015年初頭には、41mmケースのブルー文字盤モデル49527-52-431-BB4A(ピンクゴールド)と49527-53-432-BB4A(ホワイトゴールド)が追加され、ブルーは1966コレクション横断の文字盤色へ広がった。同年10月には1966初のステンレススチールケース(40mm)が発表され、コレクションの構成は貴金属中心から拡張されていく。スチール40mmにも後年、ブルー文字盤の49555-11-431-BB60が加わった。2017年には、ヴィンテージ1945のブルー文字盤モデルと併せて、ブルーをブランドの伝統色として訴求する展開が行われたと伝わる。
本機自体については、生産期間中の大きな仕様変更は確認されていない。現在のジラール・ペルゴ公式カタログでは1966はスチール40mmを軸とした構成に再編されており、38mm貴金属の本機は掲載されていない。生産終了の時期は公表されておらず、本機の構成を直接引き継ぐ後継リファレンスも示されていない。