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GIRARD-PERREGAUX · SERIES

1966

天文台クロノメーター制覇の記憶を、装飾を削いだ丸形ケースに静かに宿したドレスウォッチ。

38 mm – 40 mm
01 — 概要 / SUMMARY

1966は、ジラール・ペルゴが2006年に発表した丸形ドレスウォッチのコレクションである。名は、同社が1960年代に成し遂げた高振動クロノメーターの偉業に由来する。スリムなベゼル、純度の高い文字盤、細身の針。派手さを排した意匠を軸としながら、3針日付の基本形から年次カレンダー、クロノグラフ、さらにはトゥールビヨンやミニッツリピーターまでを同じ丸形ケースの語法で展開してきた。近年はオニキス文字盤のインフィニティ・エディションも加わる。精度の記憶を、控えめな佇まいに託したシリーズである。

02 — STORY · 物語

1966、これまでの軌跡

The story of this series
01

1966年、天文台が認めた精度

シリーズの名は、一本の腕時計ではなく、ある達成の年に由来する。1960年代半ば、ジラール・ペルゴは自動巻機構ジャイロマティックの系列に高振動キャリバーを加えた。毎時36,000振動 (5Hz) で時を刻むこの「ジャイロマティック・クロノメーターHF」が、シリーズの精神的な起点である。

注目すべきは、その精度を証明した方法にある。同社は試作の選抜機ではなく、量産したキャリバー32Aの全数をヌーシャテル天文台の検定に提出した。662個すべてがクロノメーター規格を通過し、1966年、天文台は創立100周年を記念する賞を同社に授けた。翌1967年には、天文台が発行したクロノメーター証明書の約7割がジラール・ペルゴの高振動機に対するものだったと伝わる。

ただし「世界初の高振動ムーブメント」という同社の主張には議論がある。同時期にロンジンなど複数の製造者が高振動化を進めており、キャリバー32A自体もA.シルト社のベースに自社の巻き上げ機構を組み合わせたものだった。むしろ固有の偉業は、量産の全数を天文台検定にかけた前例のない行為にあったと言える。

02

2006年、名を冠したコレクション

その達成から40年を経た2006年、ジラール・ペルゴはこの年号を冠する現行コレクションを発表した。選ばれた器は、実用ダイバーでも大型の複雑時計でもなく、装飾を削いだ丸形のドレスウォッチだった。

精度という美点は、目に見えない。だからこそシリーズは、それを誇示ではなく抑制によって表現する道を選んだ。ジラール・ペルゴは、イアン・フレミングが小説で「金のジラール・ペルゴ」を紳士の象徴として記した時代から、端正なドレス表現で知られてきた。これはコレクション誕生の半世紀も前の挿話だが、1966はその気風を、自社製の基幹キャリバーGP3000系(毎時28,800振動、4Hz)とともに引き継ぐ。初期の38mmモデル(Ref. 49525)が、スリムなベゼルと純度の高い文字盤という語法を定めた。

03

複雑機構への展開

2009年、シリーズは複雑機構へ踏み出す。年次カレンダーとエカシオン・ド・タン(均時差)を備えたモデル(Ref. 49538)である。搭載するキャリバーGP033M0は287部品からなる自社製で、可変慣性のマイクロバー・テンプを採用した。日付を1時半、月を対称の位置に配し、表示を増やしても文字盤の均衡を崩さない設計が際立つ。曜日と月、ムーンフェイズを加えたフルカレンダー(Ref. 49535)も同じ思想に連なる。

2010年には、コラムホイール式のキャリバーGP030C0を収めたクロノグラフ(Ref. 49539)が加わった。9時と3時に小秒と積算計を置く2カウンターの古典的な構成で、機能を増やしてもなお静謐な表情を保っている。

04

丸形ケースに収めた高級時計

2011年、創業220周年を機に、シリーズは高級時計の領域へ踏み込む。「金の橋トゥールビヨン」(Ref. 99535、限定50本)は、コンスタン・ジラールが1884年に特許を取り、1889年のパリ万博で金賞を得た三つの金の橋の意匠を、控えめな丸形ケースへ移したものだった。キャリバーは9610(GP09600系)、マイクロローターを備えた自動巻である。

続く2013年には、二つのハンマーとゴングで時を奏でるミニッツリピーター(Ref. 99650、白エナメル文字盤)が登場する。さらに年次カレンダーと均時差を組み合わせた42mmの大型機も加わった。ケース内径とキャリバーを整合させ、裏蓋を湾曲させて共鳴を高めるなど、響きのための音響設計が施されている。派手な見せ場を他社に委ね、複雑機構すら静かに収めるという姿勢が、ここでも貫かれた。

05

現代の到達点

2020年のジュネーブ・ウォッチ・デイズでは、漆黒のオニキス文字盤をまとう「インフィニティ・エディション」が発表された。40mmに加え、薄型のキャリバーGP03200(185部品、初代キャリバー3000の系譜)を収めた30mmが用意され、より幅広い手首に応える構成となった。

発表から20年近い現在も、1966は3針日付を中核に、スモールセコンド、クロノグラフ、各種複雑機構を同じ丸形の語法で展開している。精度を称える名を持ちながら、それを声高に語らない。陳腐化を避けるという当初の設計意図は、控えめな佇まいのまま静かに守られている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

1966を貫く設計思想は、ひとつの逆説に集約される。精度の達成を記念しながら、その精度を一切誇示しないこと。シリーズが最も大切にするのは時代に左右されない純粋さであり、変えなかったのは丸形ケースと抑制された意匠の語法である。

機能設計の中心は、極限まで細められたベゼルにある。ベゼルが細いほど文字盤は広く、視線は時刻の表示に集中する。短く湾曲したラグはケースと滑らかに連続し、薄く仕立てた本体は手首への収まりを優先する。防水性能は30m前後と控えめで、これは実用工具ではなく装うための時計だという明確な意思表示である。

意匠言語は初出から一貫している。細身の針、削り出した立体的なアプライドインデックス(金無垢モデルでは金の植字)、そしてサンレイ仕上げや単色の文字盤。装飾を足すのではなく、削ることで品位を保つ。複雑機構を加えた世代でも、日付や月の窓は均衡を意識して配され、文字盤が騒がしくならない。サファイアの裏蓋越しには、コート・ド・ジュネーブやペルラージュで仕上げた機械が覗く。複雑時計ではテンプ受けを半矢印形に磨き上げ、同社の象徴である金の橋を静かに想起させる細部も見られる。

この自制は、同時代の丸形ドレスウォッチとの対比で輪郭を得る。パテック フィリップのカラトラバやヴァシュロン・コンスタンタンのパトリモニーが純粋な美意識の系譜に立つのに対し、1966の核には精度というブランド固有の達成があり、自社製の複雑機構でそれを裏づける点に独自性がある。優劣ではなく、出自の違いである。

20年近く経っても文字盤を見れば1966と分かるのは、サイズや色で目を引く誘惑を退け、丸形と純度という一貫した言語を守り続けてきたからである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1966-1968
Cal. 32A(ジャイロマティックHF)
毎時36,000振動 (5Hz) の高振動。シリーズ名の由来。
2006-現在
Cal. GP3000 / GP03300 系
自社製自動巻、毎時28,800振動 (4Hz)。基幹機。
2009-現在
Cal. GP033M0
年次/フルカレンダー用。可変慣性テンプ搭載。
2010-現在
Cal. GP030C0
コラムホイール式クロノグラフ・モジュール。
2011-現在
Cal. GP09600 / GPE09 系
マイクロローター自動巻とミニッツリピーター。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2006-現在

初代 1966

49525 49555
3針日付の丸形ドレス。スリムベゼルの純粋な意匠を確立。
2009-現在

年次カレンダー&エカシオン

49538
自社製GP033M0で複雑機構へ進出。可変慣性テンプを採用。
2010-現在

クロノグラフ

49539
コラムホイール式GP030C0、2カウンターの古典様式。
2011-2013

高級時計への展開

99535 99650
金の橋トゥールビヨンとミニッツリピーターを丸形に収める。
2020-現在

インフィニティ世代

49555 49528
オニキス文字盤、40mmと30mmで現代的に再構成。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive