設計思想
色が商品企画になった時代
2000年代後半のG-SHOCKにおいて、配色は付随的な要素ではなくなっていた。機構に手を入れず、色だけを入れ替えた企画が、独立した商品群として定期的に投入される。その代表がクレイジーカラーズである。
カシオは2024年の復刻に際し、この名を冠した第1弾を2008年、G-SHOCK25周年を記念するモデルの一つとして発売したと説明している。黒に黄緑の文字板、白に鮮やかな青、ショッキングピンクの同系色まとめ。極端な配色は話題を呼び、三つ目の6900というかたちを若い層に定着させた。
器として6900が選ばれた理由は明快だった。1995年に生まれたこの型は、ファッションブランドがコラボレーションの土台に選び続けてきた系統である。造形はすでに完成しており、色を替えるだけで別の顔になる。
加飾が文字板へ届く
クレイジーカラーズは、波を重ねるごとに手法を変えていった。2009年8月のDW-6900CCでは、光沢仕上げの樹脂と着色液晶が組み合わされる。ただしこの段階で加飾の対象となったのは、外装と液晶にとどまっていた。
2010年2月のDW-6900CBは、そこから一歩踏み込む。液晶を囲む文字板そのものに、光を反射する金属光沢の加工が施された。カシオの英文告知は、本シリーズをこの処理を受けた最初のG-SHOCKと位置づけている。三つ目の周囲、CASIOやSHOCK RESISTの刷りが載る面。従来は背景でしかなかった領域が、意匠の主役へ引き上げられた。
4型のなかの青
CBは4型で構成された。黒と金のCB-1、青のCB-2、赤のCB-4、グレーとピンクのCB-8である。CB-1とCB-4が原色に近い強さで押し、CB-8は淡い色調でまとめられた。
CB-2の役割は、その中間にある。ボディは明度の高い青で、銀の鏡面と並べても互いを打ち消さない。液晶と三つ目には青紫が置かれ、青と銀のあいだを橋渡しする。鏡面という無彩色の面を主役に据えるうえで、最も干渉の少ない色が青だった。
鏡面のその後
CBが持ち込んだ鏡面文字板は、単発では終わらなかった。同年10月のDW-6900SB、翌2011年2月のDW-6900NBが、いずれも鏡面の文字板と光沢外装を掲げる。2012年にはDW-6900MR、DW-6900MFと、表面処理そのものを主題にした企画が続いた。
6900のカラーバリエーションは、この時期を境に重心を移している。何色にするかという問いに、表面をどう作るかという問いが重なった。その転換点に置かれたのがCBであり、DW-6900CB-2はその4分の1を担った一本である。
意匠分析
DW-6900CB-2で変更が加えられたのは、寸法でも機構でもない。ケースは53.2×50.0×16.3mm、重量は約67g、ミネラルガラスと200m防水という構成は、同時期の標準的な6900と同一である。ボタン配置もベゼル外周の造形も手つかずのまま残された。設計上の選択は、すべて表面の作り方に集約される。
樹脂はメタリックの粒子を含む青で成形されている。ターコイズに寄った明るい色調で、光の当たり方によって粒子の輝きが浮かぶ。WatchBaseはこれをベビーブルーと記録し、欧州の販売店はスカイブルーと呼んだ。単一の色名で言い切りにくい、中間的な青である。ベゼルに刷られたADJUST、MODE、SPLIT-RESETなどの機能表記は紺で、青地の上に沈むように置かれる。
中核は文字板である。液晶の周囲を占める面には銀の鏡面加工が施され、周囲の光をそのまま映す。明るい場所では白銀に光り、暗い場所では黒く沈む。固有の色を持たない面という点で、樹脂の発色とは正反対の性格が与えられた。この面に載るCASIO、SHOCK RESIST、WATER 20BAR RESISTの刷りは、いずれも紺で統一されている。
三つ目のグラフは、外周のリングを鏡面のまま残し、中心の円盤に紫を置く構成をとる。液晶にも同系の青紫が用いられ、文字板の銀、樹脂の青と合わせて三層の色が正面に並ぶ。青と銀の対比だけでは単調になる面を、紫が中間色として受け止めている。
前面のライトボタンだけは、この配色から外れる。紺の台座に白のGマークという、時計全体で最もコントラストの強い組み合わせが与えられた。指で押す部品を、色相ではなく明度で見つけさせる処理である。
視認性には割り切りがある。鏡面の文字板と着色液晶の組み合わせは、光源の位置によって表示の読み取りやすさが変わる。無彩色の高コントラストで押す標準の6900とは、別の設計思想に立った一本である。
系譜と歴史
DW-6900CB-2を含むCrazy Colorsは、2010年2月に4型同時で市場へ出た。日本国内ではDW-6900CB-2JFとして流通し、価格比較サイトへの新規登録は同年2月2日付で確認できる。希望小売価格は税別12,500円、当時の消費税率5%を加えた店頭表示は13,125円だった。同時発売はDW-6900CB-1JF(黒と金)、DW-6900CB-4JF(赤)、DW-6900CB-8JF(グレーとピンク)の3型である。
海外にも同一の外装で流通し、アジア向けにはDW-6900CB-2DR、欧州向けにはDW-6900CB-2ERの型番が与えられた。英文の製品情報が時計メディアに掲載されたのは、2010年2月1日である。
生産期間中の主な変化は、外装ではなくモジュールに現れた。国内正規品の取扱説明書はモジュール1289のもので、これは1995年の初代から6900系が使い続けてきた世代である。一方でWatchBaseは本機を3230として登録しており、部品データベース上もCB-2には1289と3230の双方の個体が記録されている。3230はカレンダーの対応年が2039年から2099年へ延びた後継世代とされ、6900系全体でこの時期に順次置き換えが進んだ。同じ頃、タイから中国への生産移管と裏蓋意匠の変更も重なったと伝えられる。
6900系でCBの型番を持つのは、本シリーズの4型のみである。生産期間中に色違いが追加された記録はなく、配色そのものに変更が入った形跡も確認できない。限定生産としての扱いも受けておらず、WatchBaseは本機を限定モデルとして登録していない。現在は生産を終えており、カシオの日本語サイトに残るのはサポートページのみとなっている。