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AUDEMARS PIGUET · SERIES

Royal Oak Concept

ロイヤルオーク コンセプト

ロイヤルオークの意匠を未来へ押し進めた、オーデマ ピゲの実験場。素材と複雑機構を試す系譜。

38.5 mm
01 — 概要 / SUMMARY

ロイヤルオーク コンセプトは、2002年にオーデマ ピゲがロイヤルオーク誕生30周年を機に発表したシリーズである。初代「CW1」は文字盤を設けず、トゥールビヨンとダイナモグラフを露出させ、航空宇宙用合金アラクリットを纏った。以来このシリーズは、新素材と複雑機構を試すブランドの実験場として機能してきた。現行はフライングトゥールビヨンGMT、ミニッツリピーターのスーパーソヌリー、マーベルとの協業モデルなどへ枝分かれする。八角形ベゼルというロイヤルオークの遺伝子を残しつつ、最も前衛的な解釈を担う系譜といえる。

02 — STORY · 物語

Royal Oak Concept(ロイヤルオーク コンセプト)、これまでの軌跡

The story of this series
01

2002年、ロイヤルオークを未来へ翻訳する

オーデマ ピゲがロイヤルオーク コンセプトを発表したのは、ロイヤルオーク誕生30周年にあたる2002年である。1972年の初代 (Ref. 5402) はジェラルド・ジェンタの設計で生まれ、1992年にはエマニュエル・ゲイによるロイヤルオーク オフショアが20周年を飾った。コンセプトはその次の節目に置かれた、第三の解釈だった。

オフショアがロイヤルオークを大型化し力強さを加えたのに対し、コンセプトの狙いは別にあった。先端素材と前衛的な意匠で「未来のロイヤルオーク」を描くこと。意匠をクロード・エメンガーが、機構をオーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ (APRP) が担った。

初代「CW1」(Ref. 25980AI) は文字盤を持たない。トゥールビヨン、バレル内のトルクを示すダイナモグラフ、巻上・中立・時刻合わせを切り替えるファンクションセレクターが露出する。44mmケースには、コバルトとクロムを主体とする航空宇宙用合金アラクリット602が用いられた。生産は150本に限られ、本来は一度きりの記念モデルだったとされる。

02

フォージドカーボンという転回

一度きりのはずだったコンセプトは、2008年に新たな代表作を得る。Ref. 26265FO、通称「コンセプト・カーボン」である。ケースとムーブメント地板の双方にフォージドカーボンを用いた最初の時計であり、地板がそのまま文字盤を兼ねる構造を取った。

搭載するCal. 2895は、トゥールビヨンとリニア表示のクロノグラフを統合する。ツインバレルと円錐状の機構により、約237時間 (10日間) のパワーリザーブを確保した。9時位置のトゥールビヨンと3時位置のクロノカウンターが左右対称に配され、緑のアルミ製ブリッジが黒いカーボンと対照をなす。

この一本は音楽やスポーツの著名人の腕にも渡り、コンセプトを技術展示から文化的アイコンへ押し上げた。2011年にはチタンケースのGMTトゥールビヨン (Cal. 2913) も加わり、シリーズは複数の方向へ枝を伸ばし始める。

03

複雑機構の実験場へ

2015年、コンセプトは二つの極端な複雑機構を相次いで披露する。ひとつはロイヤルオーク コンセプト ラップタイマー マイケル・シューマッハ (Ref. 26221FT) である。F1のレジェンドが2010年、連続するラップタイムを計測・記録できる機械式時計を求めた。開発には約5年を要したと伝わる。3つのコラムホイールを備えるCal. 2923は、連続ラップ計測とフライバックを両立する機械式クロノグラフとなった。221本限定である。

同年、ブランドはRD#1「アコースティック・リサーチ」を試作として公開する。これが翌2016年、ロイヤルオーク コンセプト スーパーソヌリー (Ref. 26577TI) として結実した。8年に及ぶ音響研究の成果であり、ローザンヌ連邦工科大学 (EPFL) と協働した。ゴングを地板ではなくサウンドボードに固定し、20m防水を保ちながら鳴らす機構は3件の特許に支えられる。50本限定で、同年のGPHGメカニカル・エクセプション賞を受けた。

04

フライングトゥールビヨンと小径化

2018年、コンセプトに新たな機構が加わる。上部ブリッジを持たないフライングトゥールビヨンである。支えを下からのみとすることで、回転する調速機構をより自由に見渡せるようになった。

この世代でシリーズは寸法の幅も広げた。従来44mm前後だったケースに、38.5mmの小径版が用意される。フロステッドゴールド フライングトゥールビヨンでは、宝飾家カロリーナ・ブッチとの協業による槌目状のフロステッド仕上げがケースに施された。コンセプトはここで、より多様な手首に向き合う姿勢を見せている。

05

ポップカルチャーとの接点

2021年、オーデマ ピゲはマーベルとの長期協業を発表する。第一作はロイヤルオーク コンセプト ブラックパンサー フライングトゥールビヨン (Ref. 26620IO) である。トゥールビヨンの上に、ホワイトゴールドを手彫り・手彩色した立体のブラックパンサー像が立つ。42mmのチタンとブラックセラミックのケースに収められ、250本限定とされた。

この方向性は賛否を呼んだが、関心の高さも事実だった。慈善目的で作られた一点物は約520万ドルで落札され、同社の腕時計として当時の最高額になったと伝えられる。2024年には第二作のスパイダーマン トゥールビヨン (Ref. 26631IO) が続き、スケルトン化された機構の中を駆けるヒーロー像が話題を集めた。

06

現在地

近年のコンセプトを支える定番が、フライングトゥールビヨンGMTである。Cal. 2954は並列ダブルバレルにより約237時間 (10日間) を駆動し、第二時間帯とファンクションセレクターを備える。グリーンセラミックやサンドブラスト仕上げのチタンなど、素材と色の変奏が続く。

2024年には、新素材CFT (クロマ・フォージド・テクノロジー) カーボンを纏ったスプリットセコンド クロノグラフGMT ラージデイト (Ref. 26650FO) が登場した。発色と発光を両立する新世代のカーボンであり、20年以上前にコンセプトが切り開いた素材実験の系譜を今に継ぐ。一度きりの記念モデルは、ブランドが最も自由に挑戦できる常設の舞台となった。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

コンセプトの設計思想は、ひとつの問いに集約される。ロイヤルオークと認識できる輪郭を保ったまま、どこまで自由に振る舞えるか、という問いである。

このシリーズが変えなかったものは明確だ。八角形のベゼルと、それを留める8本のビス。ケースからストラップへ一体で流れるプロポーション。これらはジェンタが1972年に定めたロイヤルオークの幾何学であり、コンセプトはこの骨格だけは手放さない。逆にいえば、それ以外はすべて実験の対象となる。

最も大胆な決断は、文字盤を捨てたことにある。多くの時計が機構を文字盤の裏に隠すのに対し、コンセプトは地板と橋を意匠そのものとして見せる。トゥールビヨンやクロノグラフの動きが、装飾ではなく構造として正面に立ち上がる。オフショアがロイヤルオークを「厚く」したのに対し、コンセプトは「透かした」といえる。それでも針とインデックスには夜光を与え、機構を晒しながら視認性を捨てない点に、実用時計としての矜持が残る。

素材は世代ごとに入れ替わる。航空宇宙用のアラクリット、フォージドカーボン、チタン、セラミック、そして近年のCFTカーボン。いずれも軽量・高硬度という機能から選ばれ、装飾のための貴金属とは出発点が異なる。44mm級という当時としては大ぶりな径も、手首に沿って湾曲するラグによって着用性を確保した。6時位置に置かれた巻上・中立・時刻合わせのセレクターは、複数世代に受け継がれる操作上の符牒である。

同じくAPRPの技術を源流に持つリシャール・ミルが、独立した一ブランドとして前衛を突き詰めたのに対し、コンセプトはあくまでロイヤルオークの内側にとどまる。パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンが伝統に軸足を置くなかで、伝統と実験のあいだに引かれたこの一線こそ、シリーズの設計言語を規定している。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2002-2007
Cal. 2896
トゥールビヨンとダイナモグラフを統合したAPRP開発機構。
2008-2014
Cal. 2895 / 2913 系
カーボン地板を採用し237時間駆動。GMT機構も派生。
2015-2016
Cal. 2923 / 2937
ラップタイマーと音響研究の超複雑機構を相次ぎ投入。
2018-2020
Cal. 2964 / 2965 系
フライングトゥールビヨンを導入、72時間駆動。
2021-現在
Cal. 2954 / 2974 系
GMT付フライングトゥールビヨン。ダブルバレルで約10日。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2002-2007

初代CW1

25980AI
アラクリット602製の44mmケースに、トゥールビヨンとダイナモグラフを露出。
2008-2014

コンセプト・カーボン

26265FO
ケースと地板にフォージドカーボン。トゥールビヨンとリニアクロノを統合。
2015

ラップタイマー

26221FT
シューマッハ監修。連続ラップ計測の機械式クロノグラフ、221本限定。
2016

スーパーソヌリー

26577TI
8年の音響研究を製品化。20m防水のミニッツリピーター、50本限定。
2018-2020

フライングトゥールビヨン

26560IO
フライングトゥールビヨンGMTを軸に展開。38.5mmの小径ケースも追加。
2021-現在

マーベル協業世代

26620IO 26631IO
ブラックパンサーとスパイダーマン。新素材CFTカーボンも登場。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive