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AUDEMARS PIGUET · SERIES

(re)Master

復刻ではなく再構築。ロイヤル オーク以前の希少作を、現代の自社キャリバーで甦らせるアーカイブ再解釈のシリーズ

40 mm
01 — 概要 / SUMMARY

(re)Master は、2020年にオーデマ ピゲが発表した編集的なシリーズである。ロイヤル オーク以前に自社が手がけた希少な時計を、復刻ではなく再構築として現代に甦らせる試みであり、名称は音楽のリマスターに由来する。第一作 (re)Master01 は1943年の3カウンター・クロノグラフ Ref. 1533 を、第二作 (re)Master02 は1960年の非対称ケース Model 5159BA を題材とする。いずれも当時の意匠を保ちつつ、自社最新のキャリバーと拡大したケース径で再解釈した限定モデルである。

02 — STORY · 物語

(re)Master、これまでの軌跡

The story of this series
01

ロイヤル オーク以前を掘り起こす

オーデマ ピゲという名は、1972年のロイヤル オークと分かちがたく結びついている。しかしブランドの歴史は1875年に始まり、ロイヤル オーク以前の約一世紀は、顧客の注文に応じて一点ずつ仕立てる時代であった。1951年まで厳密なリファレンス管理を行わなかったため、それ以前の作の多くは事実上の一点物である。

2020年、ヴァレ・ド・ジューに完成した渦巻き状のミュゼ アトリエ オーデマ ピゲ(設計はビャルケ・インゲルス・グループ)は、この埋もれた歴史を展示する場となった。(re)Master は、その所蔵品から一本を選び、現代に甦らせる試みとして始まる。名称は音楽のリマスターに由来する。原盤の構成を書き換えるのではなく、現代の再生環境に合わせて磨き直す——その姿勢が、復刻ではなく再構築という言葉に込められている。

02

1943年のクロノグラフ — (re)Master01

第一作 (re)Master01(Ref. 26595SR.OO.A032VE.01)が題材としたのは、1940年代のクロノグラフ Ref. 1533 である。当時としては大ぶりな約36mm径、3つの積算計を備えたツートーンのクロノグラフで、ごく少数しか作られなかった。スティールとゴールドのケースを持つ個体は3本のみとされ、その一本はフィリップスのオークションを経てブランドの所蔵品に収まったと伝わる。

(re)Master01 はこの意匠を忠実になぞりつつ、ケース径を40mmに広げた。文字盤にはシャンパンゴールドの色調、青いタキメーター、そして古い「Audemars Piguet & Co Genève」の銘を再現する。30分積算計の上に置かれた赤い「45」は、サッカーの前後半を計測するための名残と伝わる。機構には自社製のキャリバー4409を収める。Code 11.59 で初出のCal. 4401を基にした自動巻のフライバック・クロノグラフで、毎時28,800振動 (4Hz)、約70時間のパワーリザーブを持つ。手巻のヴァルジュー系を積んだ原作とは、中身が半世紀以上隔たっている。限定は500本であった。

03

4年の沈黙

(re)Master01 の名に付された「01」は、続編の存在を予感させた。しかし第二作までには4年を要した。その間、このシリーズが一本で終わるのか、複数作を束ねる選集となるのかは明かされなかった。発表の間隔は、各作が個別の所蔵品研究から生まれることを物語る。一本ごとに原作の選定、意匠の解析、対応する機構の選択が要り、量産シリーズのような連続性とは無縁である。

04

1960年の非対称ケース — (re)Master02

2024年に登場した (re)Master02(Ref. 15240SG.OO.A347CR.01)が掘り起こしたのは、ロイヤル オークの直線とも、(re)Master01の古典的な円とも異なる過去である。1959年から1963年にかけて、オーデマ ピゲは30種を超える非対称ケースの時計を作った。多くは10本に満たない少量生産で、建築のブルータリズムを思わせる鋭角的な造形を持つ。題材となった Model 5159BA は1960年の作で、約27.5mmの非対称な角型ケースをイエローゴールドで仕立てた、わずか7本の一群である。

(re)Master02 はこの造形を41mmへ拡大し、ケースには新しい18金合金「サンドゴールド」を用いた。ピンクとホワイトの中間で揺れる色調を持つ素材である。文字盤は「Bleu Nuit, Nuage 50」と名付けられた青で、12枚の三角形を組み合わせた分割構成を取る。各片はサテン仕上げで、光の向きにより表情を変える。機構は時分のみのキャリバー7129。ロイヤル オーク〝ジャンボ〟用のCal. 7121を基に日付機構を省き、厚さ2.8mmに収めた自動巻である。限定は250本であった。

05

選集としての現在地

(re)Master は、ひとつのモデルを世代交代させる通常のシリーズとは性格を異にする。各作は別個の原作を持ち、見た目に共通点を持たない。円のクロノグラフと角型の非対称ケース——両者を貫くのは姿ではなく、過去をどう選び、何を残し、何を現代化するかという編集の方法である。

ロイヤル オークが定義したブランド像の外側に、オーデマ ピゲにはなお掘り起こすべき過去がある。(re)Master の番号は、その採掘がまだ続くことを示している。2026年時点で公開されているのは01と02の二作だが、シリーズはなお開かれたままである。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

(re)Master の設計思想は、共通する「顔」には宿らない。第一作は古典的な円形クロノグラフ、第二作は鋭角的な非対称ケースであり、両者は意匠の上でほとんど何も共有しない。シリーズを束ねるのは外見ではなく、過去への向き合い方そのものである。音楽のリマスターが原盤の演奏を書き換えずに現代の再生環境へ磨き直すように、ここでも原作の構成は保たれ、提示の仕方だけが更新される。

第一の原則は、復刻ではなく再構築という姿勢にある。原作の寸法や機構をそのまま写すのではなく、意匠の核を残しつつ現代の製造技術で作り直す。ケース径は拡大され、防水性能とサファイアの裏蓋が加わり、中身には自社最新のキャリバーが収まる。原作が手巻なら現代版も手巻に、という型の忠実さは採らない。

このため、古い意匠には常に新しい機械が組み合わされる。(re)Master01 にはCode 11.59 由来のフライバック・クロノグラフCal. 4409 を、(re)Master02 にはロイヤル オーク用のCal. 7121 を基にした時分機を据えた。原作の年代ではなく、発表時点で最も新しい自社機構を選ぶ点に、復刻との距離が表れている。

第二の原則は、題材をロイヤル オーク以前のアーカイブに限ることである。ブランドを定義した時計ではなく、その影に隠れた一点物や少量生産の作を選ぶ。「オーデマ ピゲ=ロイヤル オーク」という像への、静かな反証でもある。

第三に、出自を示す細部を残す点が挙げられる。古い銘やインデックスの様式、文字盤の構成といった、原作を原作たらしめる印には手を加えない。一方でいずれの作も透明な裏蓋を備え、内部の現代的な機構を見せる。古い顔の下に新しい機械が動くことを、あえて隠さない構えである。

一般的な復刻が原作の見た目の再現に価値を置くのに対し、(re)Master は原作を現代の機械と寸法で語り直すことに重きを置く。両者は目的を異にし、優劣ではなく方法の違いである。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2020
Cal. 4409
4401を基にした自社製フライバック・クロノグラフ。
2024
Cal. 7129
7121を基にした時分のみの自動巻、厚さ2.8mm。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2020

(re)Master01

26595SR.OO.A032VE.01
1943年のRef. 1533を、40mmツートーンとCal. 4409で再構築。
2024

(re)Master02

15240SG.OO.A347CR.01
1960年のModel 5159BAを、サンドゴールドとCal. 7129で再解釈。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive