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AUDEMARS PIGUET · SERIES

Jules Audemars

ジュール・オーデマ

円形ケースに高複雑時計を収めた、AP本来のクラシック。創業者ジュール・ルイ・オーデマの名を冠する系譜。

39 mm – 43 mm
01 — 概要 / SUMMARY

ジュール・オーデマは、オーデマ ピゲが1990年代後半に確立した円形クラシックの系譜である。共同創業者ジュール・ルイ・オーデマの名を冠し、ロイヤル オークが体現するスポーツ路線の対極で、創業以来培われた薄型機構と高複雑時計の伝統を受け継いだ。時分のみのセルフワインディングやエクストラ・シンから、永久カレンダー、イクエーション・オブ・タイム、ミニッツリピーターとスプリットセコンドを束ねるグランド・コンプリケーション、直接衝撃式のAPエスケープメントを積むクロノメーターまで、複雑時計の系列を抱えた。2010年代半ばに新作展開は収束したが、その円形クラシックの設計言語は後年のラインへ引き継がれている。

02 — STORY · 物語

Jules Audemars(ジュール・オーデマ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

ロイヤル オークの対極として

オーデマ ピゲは1972年のロイヤル オークによって、ステンレススチールの高級スポーツウォッチという領域を切り開いた。だがそれは同社の一面に過ぎない。1875年の創業以来、ヴァレ・ド・ジュウのこの工房が積み上げてきたのは、薄型機構と複雑時計を中心とする古典的な時計づくりであった。ジュール・オーデマは、その古典的な系譜を1本のコレクションとして再定義したものである。

名は共同創業者ジュール・ルイ・オーデマに由来する。技術畑の彼は製造を統括し、品質管理と商務を担ったエドワール・オーギュスト・ピゲと組んで会社の礎を築いた。円形ケースにこの名を冠した判断には、ロイヤル オークが象徴する現代性とは別に、創業期からの本流を受け継ぐという意思が読み取れる。コレクションとしての確立は1990年代後半、ロイヤル オークが市場で確固たる地位を得た時期と重なる。

02

複雑時計の器として

ジュール・オーデマが最初に世に問うたのは、簡素な三針時計ではなく複雑時計であった。オーデマ ピゲが腕時計サイズのグランド・コンプリケーションを手がけたのは1996年、このラインにおいてとされる。648部品からなる自動巻Cal. 2885は、ミニッツリピーター、永久カレンダー、スプリットセコンド・クロノグラフという三大複雑を1つの機械に束ねた(Ref. 25866ほか)。

複雑機構の土台には、超薄型の系譜があった。1967年に共同開発されたCal. 2120は、フルローター式自動巻として当時最薄を実現した機械であり、永久カレンダーを加えたCal. 2120/2800は1978年に世界最薄の自動巻永久カレンダーとなった。トゥールビヨンやミニッツリピーターを含め、ジュール・オーデマは創業以来の複雑時計の蓄積を提示する器として機能した。

03

2000年、天文時計への展開

2000年、創業125周年の節目に発表されたイクエーション・オブ・タイムは、このラインの天文時計としての到達点である。均時差——真太陽時と平均時のずれ——に加え、月相、永久カレンダー、そして日の出と日の入りの時刻を表示した。サンライズ・サンセット表示を備えた腕時計としては最初のものと一般に位置づけられる。ただし均時差の表示そのものは、これに先立つ他社の作例が存在する。

機構はCal. 2120/2808。日の出・日没の時刻は緯度経度によって変わるため、文字盤は購入者が指定した地点に合わせて調整された。明石、バルセロナ、ロサンゼルスといった地名がレイルに刻まれた個体が残る(Ref. 25934 / 26003系)。土地に固有の天文現象を腕の上に再現するという発想に、このラインの性格がよく表れている。

04

薄さと簡潔さ

複雑時計と並んで、ジュール・オーデマはきわめて簡潔な時計も擁した。自社設計の自動巻Cal. 3120を積むセルフワインディングは、39mm径の円形ケースに時分秒と日付のみを収めた現代の基準作である(Ref. 15170系)。毎時21,600振動 (3Hz)、約60時間のパワーリザーブを備え、22Kゴールドのローターを持つこの機械は、ロイヤル オークとも共有された。

薄さの伝統を最も純粋に体現したのがエクストラ・シンである。前述の超薄型Cal. 2120をそのまま用い、ギヨシェ装飾の文字盤とローマ数字、剣型の針で構成された(Ref. 15093系)。装飾を抑え、薄さと可読性に焦点を絞るその姿勢は、グランド・コンプリケーションの対極にありながら、同じ古典的な語彙を共有していた。

05

APエスケープメント

ジュール・オーデマの技術的な頂点は、2006年に発表された脱進機にある。スイスレバー脱進機が爪石を介して間接的にテンプへ力を伝えるのに対し、直接衝撃式のこの機構は、ガンギ車からテンプへ直接エネルギーを与える。18世紀末のロベール・ロバンの構想に連なる発想であり、摩擦と注油の必要を抑える点に主眼があった。

この脱進機を実用機に落とし込んだのが、2009年ごろのクロノメーター・ウィズ・APエスケープメントである(Ref. 26153)。手巻Cal. 2908は毎時43,200振動 (6Hz)という高い振動数で駆動し、2本の香箱で約90時間を確保した。19世紀の懐中時計を思わせる開かれた機械面の構成は、複雑時計とは異なる方向から、このラインの技術的な野心を示している。

06

収束と、その後

2010年代半ば、オーデマ ピゲがロイヤル オークと現代的なラインへ製品を集約していくなかで、ジュール・オーデマの新作展開は収束した。市場ではロイヤル オークの存在感が圧倒的であり、円形クラシックという領域は次第に主役の座を譲っていった。

もっとも、その設計言語が途絶えたわけではない。2019年に登場したコード11.59、そして1940年代の作例に着想したリマスターなど、円形ケースに古典的な意匠と複雑機構を収めるという発想は、後年のコレクションへ形を変えて引き継がれている。ジュール・オーデマは現在、新作の系譜としてよりも、同社の古典的な本流を凝縮した一時代として参照される。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ジュール・オーデマの設計を貫くのは、円形ケースという一点に集約された古典への回帰である。八角形のベゼルとビス、一体型ブレスレットで主張するロイヤル オークに対し、このラインはまったく逆の方向を選んだ。なめらかな円形ケース、細く伸びるラグ、革ストラップ。ベゼルはゆるやかに立ち上がり、裏蓋はしばしばサファイアとされ、機械を見せる構成も採られた。視覚的な記号性をあえて抑え、時計そのものの均整に語らせる構えである。

文字盤の語彙も一貫している。ギヨシェ装飾を施したシルバーやブラックの面に、アプライドのローマ数字あるいは植物の葉を思わせるフイユ針。中央の時分針と、6時位置のスモールセコンド。この簡素な構成は、創業期からの円形オーデマ ピゲの意匠を現代に引き直したものであり、装飾を足すよりも引くことに意を用いている。

このラインには、二つの顔が同居していた。一方には時分のみを刻む簡潔な時計があり、他方にはミニッツリピーターや永久カレンダーを束ねた複雑時計がある。両者を隔てるのは複雑さの度合いだけで、ケースの素性と意匠の文法は共有されていた。複雑時計においては、サファイアの文字盤や開かれた機械面を通じて、機構そのものを意匠の主役に据える判断も見られる。

同時代の古典的ドレスウォッチ——パテック フィリップのカラトラバ、ヴァシュロン・コンスタンタンのパトリモニーなど——が時計としての簡潔さを突き詰めたのに対し、ジュール・オーデマはむしろ複雑機構の受け皿としての性格を強く帯びた。薄型と高複雑という、創業以来オーデマ ピゲが得意とした二つの領域を、円形クラシックという一つの器に共存させたこと。それがこのラインの設計思想の核にある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1990s-2010s
Cal. 2120 系 / 2120/2808
超薄型自動巻と、その天文複雑派生。
1996-
Cal. 2885
三大複雑を統合した自動巻の複雑機。
2003-
Cal. 3120
自社設計による自動巻の三針日付機。
2009-
Cal. 2908
直接衝撃式APエスケープメントを実用化。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1996-1999

グランド・コンプリケーション

25866 系
三大複雑を統合した、ラインの技術的原点。
2000-

イクエーション・オブ・タイム

25934 26003 系
日の出・日没表示を初搭載した天文複雑機。
2000s-2010s

セルフワインディング

15120 15170 系
自社Cal.3120を積む、薄型の基準三針。
2009-

APエスケープメント

26153
直接衝撃式脱進機を実用化したクロノメーター。
2010s

エクストラ・シン(薄型)

15093 系
Cal.2120を継ぐ、薄型クラシックの定型。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive