UG-110 HMD
2026年、ユニバーサル・ジュネーブ復活の象徴として甦った、伝統のマイクロローターを宿す自社製自動巻キャリバー
UG-110は、ユニバーサル・ジュネーブが2026年のブランド復活で発表した自社製マイクロローター自動巻キャリバーである。同社は2023年にブライトリング傘下で再出発を遂げた。マイクロローターとは、巻き上げ用のローターを機械の厚みの中へ組み込んだ偏心式の自動巻機構を指す。同社が1950年代に極薄自動巻で名を馳せた、象徴的な構造である。28,800vph (4Hz)、約72時間のパワーリザーブ、28石、厚さ3.8mmという現代的な諸元を備える。復活第一弾のポールルーター・デイトや、6時位置に日付を配すディオラミックなどに搭載される。
| Maker | Universal Geneve |
|---|---|
| Reference | UG-110 HMD |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 28 石 |
| Power reserve | 72 h |
| Movement ⌀ | 32 mm |
| Hands | Hours, Minutes |
| Date | Date |
系譜と歴史
1. マイクロローターという原点
物語は1954年にさかのぼる。ユニバーサル・ジュネーブは、北極上空を横断するスカンジナビア航空の運航を記念し、当時まだ20代だったジェラルド・ジェンタにデザインを託した。こうして生まれたのがポールルーターである。初期の個体は138SSと呼ばれるバンパー式自動巻を積んでいたが、1955年、同社は新機構マイクロローターを搭載したCal.215を投入する。
マイクロローターは、機械の上に載せる従来の中央ローターを廃し、巻き上げ用の偏心錘を地板と同じ平面に埋め込む発想であった。これにより自動巻の厚みは大きく減り、極薄の腕時計が可能となる。同社はこの機構を1955年5月に出願した。だが、ほぼ同時期にビューレンも同種の機構を手がけていた。考案の先後をめぐる係争を経て、特許の登録は1958年までずれ込んだとされる。1966年のバーゼル・フェアで発表された厚さ2.5mmのCal.66がゴールデン・シャドウに搭載され、極薄自動巻の一つの到達点を示した。
2. 休眠からの復活
クォーツ・ショックと、1989年以降の香港ステルックス傘下での長い静寂を経て、ブランドは表舞台から姿を消していた。転機は2023年12月、ブライトリングがパートナーズ・グループらとともにユニバーサル・ジュネーブを取得したことにある。ブライトリングにとって初の大型買収であり、独立したメゾンとして運営する方針が示された。
そして2026年4月、ブランドは正式に再始動する。ポールルーター、コンパックス、ディスコ・ボランテ、カブリオレ、ディオラミックといった史料に根ざす一群が、いずれも新開発の自社製キャリバーを得て世に問われた。「時計の仕立屋」と称された往年の矜持を、マニュファクチュールとして再び体現する宣言であった。
3. 現代に甦ったマイクロローター
この復活の中核に据えられたのがUG-110である。なぜ再びマイクロローターなのか。一つにはブランドの技術的アイデンティティとの連続性があり、もう一つには、3.8mmという薄さが往年のドレスウォッチの佇まいを支えるからである。28,800vph (4Hz)、ツインバレルによる約72時間の駆動という諸元は、歴史的な構造に現代の実用性を接ぐ試みといえる。
機構はクロノグラフ用のUG-200と並ぶ基幹系列を成し、時・分・秒・日付や、本稿が扱う時・分・日付(HMD)など、複数の表示構成で展開される。極薄自動巻はピアジェやブルガリなど他社も追求してきた領域だが、偏心ローターを意匠の見せ場とする姿勢に、同社固有の設計思想が表れている。
技術解説
偏心ローターと薄型設計
UG-110の心臓部は、機械径の約75%に達する4分の3サイズのマイクロローターである。22Kローズゴールド製のローターにはギヨシェ装飾が施され、ボールベアリング上で片方向にのみ巻き上げる。中央に載せる通常のローターと異なり、偏心錘を地板の平面内へ収めることで、厚さは3.8mm、直径は32.0mmに抑えられている。ローターを中心から外し、地板上の1時半付近に寄せた配置も、薄さを稼ぐための要となる。比重の大きい金を錘に用いるのは、限られた径でも十分な慣性を確保し、巻き上げトルクを稼ぐためである。両方向巻きに比べ部品構成を簡潔にできる片方向巻きの採用も、薄型の機械にはかなった選択といえる。巻き上げ効率と薄さの両立こそ、この機構の眼目である。
4Hzのテンプとツインバレル
調速を担うテンプ(振り子に相当する往復振動体)は、28,800vph (4Hz)で振動する。1秒間に8回の歩進を刻むこの振動数は、日常の衝撃に対する安定と実用的な精度の均衡点として、現代の実用機によく用いられる。テンプはブリッジ式の受けで両端を支持され、片持ちのコック式に比して剛性の面で有利とされる。香箱(ぜんまいを収める円筒)については、専門資料によれば二つの香箱を備えるツインバレル構成とされる。香箱を二つ持つ利点は、駆動時間を延ばせるだけでなく、ぜんまいが解ける過程でのトルク変動を平準化し、持続中の振り角を安定させやすい点にもある。これが約72時間という長めのパワーリザーブを支えている。石数は28石とされる。
仕上げと表示構成
仕上げには、地板へのペルラージュ、ブリッジのコート・ド・ジュネーブ、面取りエッジの磨き、サテンとポリッシュを交互に配する処理などが見られる。視認性を意識したこれらの装飾は随所に及び、サファイアのケースバックを通して鑑賞できる。金無垢のローターはその中で意匠の主役となり、機構を眺める愉しみと薄型化という実用とを兼ねる。
本機は表示の構成によって複数のバリエーションを持つ。時・分のみのHM、秒を加えたHMS、日付を加えたHMD、秒と日付の双方を備えるHMSDが確認されており、土台となる機械は共通する。本稿が扱うHMD構成は、秒針を持たず、時・分に加えて6時位置に日付窓を備える。この構成は37mmのディオラミックなどに用いられ、秒・日付を3時側に集約するポールルーター・デイト系の表示設計とは、文字盤の対称性に対する考え方を異にする。